

大滝ジュンコさんは新潟県村上市の山熊田集落に暮らし、自ら山ではいだシナノキの皮を使って、日本最古の織物であるしな布を作られています。新潟県村上市と山形県鶴岡市の県境付近で作られるしな布は特に「羽越(うえつ)しな布」として有名で、経済産業省の伝統的工芸品に認定されています。現在は帯などの高級嗜好品として流通していますが、昔は道具として使われていたそうです。
講座では、9年前に山熊田に移住し、滅びる寸前のしな布の技術を引き継ぐことになった経緯や、採集や狩猟など山との生活が未だ色濃く残る山熊田集落の伝統的な文化、集落全員で助け合う結の暮らしについて教えていただきました。

また、しな布について、原料となるシナノキの種類や、皮の採集、灰汁と熱を利用した内樹皮の取り出し方や、糸積(う)みと呼ばれるしな糸を製作して織り上げるまでの一連の工程を解説いただき、超絶技巧の連続に聴講された皆さんからは感嘆の声があがりました。
その他、伝統的なものづくり業界においては全国共通の課題ともなっている後継者不足や、採算性の問題、技術継承と移住との兼ね合いなどについて独自の経験から解説されました。
講座の途中には実際にしな布の帯を触れる時間もあり、参加者の皆さんはその繊細な技術に感動したり、20年前に村上市で購入したしな布のバッグを持参される方がいらっしゃったりと終始和気あいあいとした雰囲気で進みました。


大滝さんは最後に、ライフスタイルも変化し時代の過渡期にある現代においても、ネットでは伝わらない生の技術があり、失われたら取り戻せない貴重な技術を未来につなげるためには今が正念場であるというお話をされ、会場からは拍手がわきました。
参加された皆様ありがとうございました。
大滝さんは現在、工芸を21世紀に再生させるための日本伝統工芸再生コンテストのファイナリストにノミネートされていらっしゃいます。大滝さんの受賞をご祈念いたします。