2024年12月06日

11/30 ブナセンター講座「マタギの里でしな布を織る」開催報告

 11月30日(土)ただみ・ブナと川のミュージアムにて、現代美術家・しな布(ふ)作家である大滝ジュンコさんを講師に企画展関連講座を開催しました。
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 大滝ジュンコさんは新潟県村上市の山熊田集落に暮らし、自ら山ではいだシナノキの皮を使って、日本最古の織物であるしな布を作られています。新潟県村上市と山形県鶴岡市の県境付近で作られるしな布は特に「羽越(うえつ)しな布」として有名で、経済産業省の伝統的工芸品に認定されています。現在は帯などの高級嗜好品として流通していますが、昔は道具として使われていたそうです。
 講座では、9年前に山熊田に移住し、滅びる寸前のしな布の技術を引き継ぐことになった経緯や、採集や狩猟など山との生活が未だ色濃く残る山熊田集落の伝統的な文化、集落全員で助け合う結の暮らしについて教えていただきました。
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 また、しな布について、原料となるシナノキの種類や、皮の採集、灰汁と熱を利用した内樹皮の取り出し方や、糸積(う)みと呼ばれるしな糸を製作して織り上げるまでの一連の工程を解説いただき、超絶技巧の連続に聴講された皆さんからは感嘆の声があがりました。
 その他、伝統的なものづくり業界においては全国共通の課題ともなっている後継者不足や、採算性の問題、技術継承と移住との兼ね合いなどについて独自の経験から解説されました。
講座の途中には実際にしな布の帯を触れる時間もあり、参加者の皆さんはその繊細な技術に感動したり、20年前に村上市で購入したしな布のバッグを持参される方がいらっしゃったりと終始和気あいあいとした雰囲気で進みました。
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 大滝さんは最後に、ライフスタイルも変化し時代の過渡期にある現代においても、ネットでは伝わらない生の技術があり、失われたら取り戻せない貴重な技術を未来につなげるためには今が正念場であるというお話をされ、会場からは拍手がわきました。
参加された皆様ありがとうございました。
大滝さんは現在、工芸を21世紀に再生させるための日本伝統工芸再生コンテストのファイナリストにノミネートされていらっしゃいます。大滝さんの受賞をご祈念いたします。
posted by ブナ at 15:48| ブナセンター講座

2024年11月26日

11/17 只見こども藝術計画「ブナの森の大きな地図と小さな地図」ワークショップの開催報告

 11/17(日)、今年度第二回目の只見こども藝術計画「ブナの森の大きな地図と小さな地図」を開催しました。講師にはアーティストの岩田とも子さんをお迎えし、町内の17名の方(只見高校生1名、小学生7名、保育所児童4名、0歳児1名、親御さん4名)にご参加いただきました。

岩田さんホームページ
http://shizenkansatsu.net

 今年のワークショップのテーマは、「ブナの森の大きな地図と小さな地図」。

 ブナの森を歩きながら見つけた葉っぱや枝、木の実などを観察して、それらを使った地図を作ったり、葉っぱなどの模様をよく観察して隠されている地図を探します。

 前の週の11月10日には“大きな地図を作る”ワークショップを行いましたが、今回は“小さな地図を作る”ワークショップです。会場は前回同様に楢戸集落のブナ二次林の観察の森です。

 早速、子供達からは、「どのくらい小さな地図をつくるの?」、と質問がありました。岩田さんから子供達に厚紙で作ったフレームが渡され、今回はこのフレームを使って森の中の葉っぱや枝、石などの模様などをよく観察し、その中に隠された小さな地図を探すことになりました。例えば、葉脈が地図のように見えたりします。気に入った地図となる葉っぱ、枝などは袋に入れて持ち帰ります。石など持ち帰れないものは写真に撮って持ち帰ります。

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このクリの木の樹皮にも地図?

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イワガラミの葉っぱに地図?

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ブナの葉にムラサキトビムシがたくさんいました

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ホオノキの落葉の葉脈はまるで地図のよう

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落葉を探ると菌糸が。張り巡らされた菌糸もまた地図のように見えます

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暖かい日差しの中、地図探しも捗ります

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お気に入りの地図は探せたでしょうか

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ブナの巨木のまで記念撮影。大人たちも夢中で地図を探しました

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フレームから見える景色の面白さにハマりました


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この他に、林内では福島県森林環境交付金を活用して製作した観察の森内案内標柱の解説と整備体験を行いました


 次に、会場をただみ・ブナと川のミュージアムに移し、創作活動です。創作は持ち帰ったお気に入りの地図がある葉っぱなどを見ながら、画用紙に色鉛筆で地図を描きます。虫眼鏡で細かく観察したり、ペンライトで明るくしたり、陰影が地図のように見えないか実験もしたりします。地図が描けたら、トレーシングペーパーを重ね、鉛筆で地図の説明を書き込みます。

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 作品が出来上がったら、みんなの前で発表です。発表が恥ずかしくても、岩田さんが上手に聞き出してくれます。子供達が地図を説明してくれる中で、また別の子供が「私もここに行ってみたい!」と言ってくれました。これに岩田さんは、「それって地図の本質的なことかもしれないね」と反応。子供達の素直な感想に、はっとさせられました。

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 今回のワークショップでは子供達に(大人も)小さなフレームを使ってもらい、森の細部を観察してもらいました。また、その細部から見えてきた小さな地図を想像し、描き、自分ではない誰かに伝えることができました。今後、只見町のどこかで2回のワークショップで完成した作品を展示する予定です。詳細はブナセンターのホームページなどでお知らせします。

 以下に、今回の作品の一部を紹介します。

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posted by ブナ at 17:32| イベント

2024年11月21日

11/10 只見こども藝術計画「ブナの森の大きな地図と小さな地図」ワークショップの開催報告(後編)

11/10(日)開催の只見こども藝術計画「ブナの森の大きな地図と小さな地図」の「ブナの森の大きな地図を作る」ワークショップの後編です。会場を、ただみ・ブナと川のミュージアムに移動しての続きです。

 ブナの森で採集してきた葉っぱ、枝、木の実などを大きな画用紙に広げ、岩田さんから地図の作り方の説明がありました。

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 岩田さんから伝えられた作り方の条件は、まず、接着剤、ハサミ、えんぴつなどの人工物は一切使わないということです。道具は自分の手のみで、例えば、葉を千切ったり、枝を折ったりするなどはOK。それらは大きな画用紙に置いて並べるだけ、というものでした。ちょっと驚きでしたが、さて、地図は作れるのでしょうか。

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それでは、ブナの森の大きな地図づくりの開始です。

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どう作ろうか

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親子で創作

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もくもくと創作を進めます

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相談しながら

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千切ったり、折ったり、並べたり

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楽しそうです

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枝をこする、という新しい方法

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平面から立体の地図へ

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粉々にした葉っぱを撒く


 道具は自分の手だけという条件でしたが、参加者はみなそれぞれ工夫して、岩田さんの教えた方法以外の方法も使って地図を作っていました。

 最後にできた地図をそれぞれ説明してもらいました。岩田さんが優しく、上手に子どもたちから話を聞き出してくれました。

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 ブナの森へ行き、五感を使って自然を体験し、創作では想像力豊かに作品を作ることができたワークショップでした。

 以下、作品を一部紹介します。

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SLと森の地図

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ブナの道

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たからの地図

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posted by ブナ at 23:14| イベント

11/10 只見こども藝術計画「ブナの森の大きな地図と小さな地図」ワークショップの開催報告(前編)

 11/10(日)、只見こども藝術計画「ブナの森の大きな地図と小さな地図」を開催しました。講師には昨年に引き続きアーティストの岩田とも子さんをお迎えし、町内の17名の方(只見高校生1名、小学生8名、保育所児童2名、親御さん6名)にご参加いただきました。

岩田さんホームページ
http://shizenkansatsu.net

 今年のワークショップのテーマは、「ブナの森の大きな地図と小さな地図」。
 ブナの森を歩きながら見つけた葉っぱや枝、木の実などを観察して、それらを使った地図を作ったり、葉っぱなどの模様をよく観察して隠されている地図を探します。
 この日は、大きな地図を作るワークショップでした。

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 今年の只見の秋は暖かく、木々の紅葉も例年にくらべ2週間程度遅れてやってきました。地球温暖化の影響の可能性を考えるとあまり喜ばしくありませんが、おかげでワークショップ当日は紅葉の盛りとなりました。朝は冷え込み、靄がかかった天気でしたが、だんだんと日差しでてくる中でのワークショップとなりました。

 散策を行ったブナ林は、楢戸集落にあるブナの小さな面積の二次林です。岩田さんから参加者からブナの森にある葉っぱや枝、木の実など使って地図を作ること、そのための材料を採集することが伝えられ、林に入ります。

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説明する岩田さん(右端)と参加者


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早速、入り口にあったミヤマガマズミの果実を採集


 林の中には、小径が設けられ、道沿いに林を観察します。

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 道沿いにあったアクシバに赤い果実が数個残っていました。アクシバはブルーベリーと同じツツジ科スノキ属の落葉低木で、果実は食べることができます。参加者の中から代表してアクシバの果実を食べてもらいました。ドキドキしながら食べた感想は、「味がしなーい」でした。

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 ブナの大木の前では毎年は成らないブナの種子を食べました。ナッツみたいで美味しいのです。ブナの種子はツキノワグマの好物でもあり、ブナの大木の幹肌に残されたツキノワグマの爪痕も観察しました。

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 道沿いにはブナの倒木が倒れ込んでいましたが、こうした倒木はネズミなどの小動物が道として使う場合もあります。子どもたちにも動物になった気分で気をつけて倒木を渡ってもらいました。

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 倒木の先にいくと、「ナメコー!」を子どもたちから歓声があがりました。さすが只見っ子です。倒れたコナラから天然のナメコとムキタケが生えていました。ヌメヌメして光り輝くナメコに興味津々、実際に触ってもみました。

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 折り返し地点には、ブナの木が折れて、そこだけが明るくなっていました(専門用語ではこれをギャップと言います)。明るくなった地面には、ブナの若木が育っており、年齢を数えると大きいもので十数年です。今日の参加した子供達とだいたい同級生のようでした。

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 林を歩く中で、見る、触る、食べる、匂いを嗅ぐ、聞く、の行為を行い、これらを通して自然を感じてもらいました。

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 地図の材料を採集して、ただみ・ブナと川のミュージアムへ向かいます。(後編へ続く)

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posted by ブナ at 15:00| イベント

2024年11月17日

10/13 只見ユネスコエコパーク特別セミナー「ブナ林のマストは何?-遺食住から観る生きもののつながり-」開催報告

 10月13日(日)、新潟大学名誉教授の箕口秀夫博士を講師にお招きし、只見ユネスコエコパーク特別セミナー「ブナ林のマストは何?-遺食住から観る生きもののつながり-」を、只見公民館1階集会室で開催しました。会場には21名の方が聴講に来られました。

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▲講師の箕口秀夫博士


 講演では、タイトルにもある「マスト」(ブナなどの木の実)についてや、樹木の種子や結実状況が広範囲にわたって同調し、数年おきに豊作になる現象や年を指す「マスティング」などのの説明から始まり、それらが森林と野生動物の相互関係にどのように関わっているかを解説して頂きました。
 続いて箕口博士の研究テーマである、野ネズミが森林生態系においてどのような役割を持っているのかについてや、森林と野生動物の関係から、ツキノワグマによるクマ騒動についての話題も、分かりやすくお話し頂きました。
 最後の質疑応答で、箕口博士は聴講者からの質問に、丁寧に解答されました。

 講演して下さった箕口博士、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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posted by ブナ at 16:32| イベント