2025年09月19日

只見町ブナセンター講座「イワナを育むブナの森:森と川のつながりを知る」開催報告

2025年9月6日(土)、新潟大学佐渡自然科学共生センター教授の河口洋一博士を迎え、現在開催中の企画展「豪雪に育まれた豊かな川辺の生態系」に関連して只見町ブナセンター講座を開催しました。参加者は26人で満員御礼でした。講座の内容は、河口博士のご専門である「森と川のつながり」に関する研究等を中心に進みました。

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冒頭、河口博士の好きな川魚料理や川魚料理に関わる地域の人たち、川魚料理を知らない昨今の学生たちのエピソード紹介があり、川魚料理を食べることや川に入ることなど本物に触れることも「森と川のつながり」を知る延長上にあると説明されていました。

森と川のつながりとして、渓流の周辺の森林により日射が遮断され、渓流の水温が低く保たれ、イワナなどの渓流魚が生息しやすい環境が形成されていること、また、森林から渓流に供給された落ち葉は、バクテリアが付着した後に水生昆虫により分解される一方で、その過程で落ち葉から染み出した窒素やリンなどの栄養塩類が藻類を育てる栄養源となり、水生昆虫はこの藻類を餌として成長し、羽化した後に陸上の捕食者に食べられるといったことがあることを説明されました。つまり、こうした水域と陸域のエネルギーの行き来があることが河川生態系の特徴ということでした。

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次いで、河口博士が実際に行った森と川のつながりに関する調査研究についての紹介もありました。落葉広葉樹林にある河川のほうが草地にある河川よりも落下してくる昆虫の量は多かったこと、しかし、両方の河川に生息する魚類の一匹あたりの昆虫の捕食量は変りませんでした。それはなぜなのか。そこで、河口博士は驚きの実験を行います。50メートルほどの区間の川をビニールハウスで覆い、ビニールハウスで覆わなかった川とで落下昆虫と生息する魚類の量の違いを比較したのです。その結果、ビニールハウスで覆った川では落下昆虫と魚類の両方の量が減少しました。落下昆虫の多い河川環境ほど、生息する魚類も多いということが言えたのです。森林、河川、昆虫、魚類の関係をきれいに明らかにした研究事例でした。

また、北海道でイワナよりも冷涼な環境に生息しているオショロコマという魚を事例に、地球温暖化とダム構造物が魚類の生育と繫殖にどのような影響を与えているかを調べる20年以上の長期調査研究のお話をしてくださいました。知床半島の河川には低ダム群工法によるダムが数多くあり、これにより河川幅が広くなり、水深が浅くなり、流速も遅くなり、水温が上昇しやすい環境となってします。半島の東西で環境の違いはあるものの、ダム密度が高い河川ほど水温が高い傾向にあり、そうした河川ではオショロコマの数が少ないばかりでなく、稚魚がいなくなり、再生産がうまくいっていない可能性がでてきたとのことでした。こうした長期調査研究を通して、森と川のつながりに対する長期的な影響も明らかになるのではないかと河口博士はおっしゃいました。

質疑応答の後、最後に川口博士は身近な環境へ関心を持ち、生き物の世界を知り、視野を広げることが大切であると伝えられました。

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森と川、生き物のつながりは漠然と知っているつもりでしたが、きちんとした科学的データに基づいて説明してくださり、目から鱗が落ちる思いでした。河口先生、貴重なお話をありがとうございました。
聴講下さった皆様にも御礼申し上げます。
posted by ブナ at 10:19| ブナセンター講座

2025年09月17日

<只見小学校5、6年生が国道289号八十里越工事における自然環境・野生生物への保護・保全対策をリサーチ>

只見小学校の5、6年生は総合的な学習の時間で只見町の産業について調べています。その中で、開通を間近にした国道289号八十里越について調べ、道路工事・道路開通における自然環境・野生生物の保護・保全対策を知りたいとの相談をブナセンターが受けました。希少種の保護・保全の観点からあまり公にはしておりませんでしたが、ブナセンターでは独自に国道289号八十里越の野生生物調査を実施してきました。

道路工事を行なっている福島県南会津建設事務所さんの協力を得て、9月16日に子供達を連れての現地見学が実現しました。案内は福島県南会津建設事務所さん、環境調査を請け負っている建設技術研究所さんが行いました。

国道289号は新潟県新潟市から福島県いわき市を結ぶ総延長304kmの道路であり、このうち新潟県三条市(旧下田村)から福島県只見町に至る県境部分の自動車普通区間が八十里越と呼ばれます。この八十里越部分は只見町の北西部に位置し、町内でも自然度の高いブナ林などの自然環境が残された地域です。しかも、絶滅危惧種に選定されている野生動植物も多く生育・生息しています。したがって、人と自然との共生を実現するユネスコエコパークに指定されている只見町における国道289号八十里越の開設・開通については、これらの自然環境、野生動植物を保護・保全することは重要なことです。

現地では、道路側溝に落ちてしまった小動物が側溝から這い上がれるようなスロープ、道路に並走するように設置された両生類の道路横断を防止する高さ50cmほどの壁、道路横断ができなくなってしまった両生類が産卵するための代替産卵池の試験地、動物が道路を横断できるようなアンダーパス、外来植物を用いず周辺の在来植物を利用した斜面緑化、希少猛禽類の保護・保全が紹介されました。

貴重な自然環境の中を縦貫する道路でもあり、南会津建設事務所さんをはじめ道路工事関係者の方たちは苦心しながらこうした自然環境や野生動植物との共生を図る工事を進めています。小学生からは、道路工事で何が一番大変かとの質問があり、南会津建設事務所の担当者は、自然環境との調和を図りながら施工することが大事だと回答していました。小学生たちは道路工事と自然環境の共生を学ぶ良い機会になったようです。

一方で、道路工事や開通後の影響においては少なからず課題が残っています。これについては、この9月下旬のユネスコ国際調整理事会で審査される只見ユネスコエコパークの定期報告(10年間の活動報告書)において詳細に記されています(下記のURLのPDFファイルのうち47−51ページ)。

https://tadami-br.jp/TadamiBR_PR_JPN.pdf

多くの人にとっては、国道289号八十里越の開通は心待ちのものだと思います。一方で、この道路は只見町の貴重な価値ある自然環境の中を通り、これらを保護・保全しながら道路を利用させてもらう必要があることを忘れてはいけません。そうしたことに大人よりも子どもたちの方が敏感に感じ取っているようです。子どもたちの将来のためにも、開通までの残された時間の中で、関係者の協力のもと、具体的な対策を講じていく必要が迫られていると思います。

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posted by ブナ at 13:23| 人材育成

2025年07月28日

<夏のブナ林観察会part2(7/27開催報告)>

 7月27日(日)、夏のブナ林観察会part2をただみ観察の森・梁取のブナ林(学びの森)で開催し、ブナ林の中をゆっくり散策しながら、ブナ林に生育する多様な樹木の種類について紹介しました。Part2というのは1か月前の6/28(土)に開催した観察会で樹木を観察しきれず、これの続編という形で開催したためです。参加者は11名でした。暑い日が続いており、この日も高温になることが予報されていましたが、ブナ林の中は日陰で、程よく風もあり、過ごしやすいコンディションでした。

 観察会では、紙谷館長が、それぞれの樹木の特徴や名前の由来、人間による利用に関して、丁寧に解説しました。ブナ林の中ではアカネズミにより種子が運ばれたと思われるクリの稚樹や、クワカミキリによる食痕から樹液を流しているブナを見ることが出来た他、ブナの根を介して共生関係にあるキノコのタマゴタケも観察できました。

 途中の休憩では、ブナセンターが民間の皆さんと協力して行っているブナ林ブレンドプロジェクト(ブナ林に生育するブナ・オオバクロモジ・アブラチャン・キブシの枝葉をブレンドした商品開発プロジェクト)の中で開発されたお茶の試飲が行われました。冷えたブナ林ブレンドのお茶は爽やかで、森を感じられると皆様から好評価をいただきました。販売開始されることが楽しみです。

 本日ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

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キブシの説明を行う紙谷館長とそれをメモする参加者の皆様


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梁取のブナ二次林


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斜面に自生していたブナと地表に露出していた支持根


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ブナと共生関係にあるタマゴタケ


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ブナの根元から生えたひこばえを観察


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ブナの森とナラの森の境目


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ブナ林ブレンドプロジェクトで作られたお茶で一服


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ナラ枯れに関する説明を行う中野主任指導員


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ナラ枯れを起こしたあがりこ型樹形のコナラ。


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アクシバの花


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オオカメノキの果実


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タムシバ(別名ニオイコブシ)の果実。果実の形が拳に似ることが名前の由来。


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キタゴヨウの稚樹
posted by ブナ at 11:57| 自然観察会

2025年07月18日

企画展「豪雪に育まれた豊かな川辺の生態系」開催のお知らせ

 只見町ブナセンター付属施設ただみ・ブナと川のミュージアムでは、7月19日(土)より企画展「豪雪に育まれた豊かな川辺の生態系」の開催します。
 本企画展では、只見町の人びとのくらしや生きものたちの生育・生息を支えてきた只見の川辺に焦点をおいて、川辺がいかに機能し、そこにどのような動植物が生育・生息しているか、また、それら野生動植物が只見の人々にどのように利用されてきたかを解説する他、只見の河川の環境に関する課題も解説いたします。

【会期】2025年7月19日(土)〜2025年12月1日(月)
【会場】ただみ・ブナと川のミュージアム 2階ギャラリー

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posted by ブナ at 10:24| 企画展

2025年07月03日

只見小学校の総合的な学習の時間を支援ー川の生き物探しと食について

 7月2日、只見小学校の3・4年生の総合的な学習の時間を支援しました。今年度、只見小学校3・4年生は只見町の自然と食について学んでいます。新学期が始まってからブナセンターでは只見町の自然環境と野生動植物、それらと関係する私たちの食、只見町ならではの食文化について座学や実習で支援してきました。

 今回は、川での生き物探しをしつつ、どのような環境に生き物がいるのか、食べられる生き物はいるのかを学ぶ機会としました。石の下や、河岸から川に向かって生えた草木の茂みの下などを手網を使って、ガサゴソして生き物を探します。

 1時間弱ほど探して、淡水魚は、イワナ、ヤマメ、ウグイ、カジカ大卵型、アブラハヤ、アカザ、シマドジョウ、カマツカ類など少なくとも8種を確認できました。このうち絶滅危惧種も少なからず含まれており、シマドジョウは福島県レッドリストの準絶滅危惧、カジカは福島県レッドリストで絶滅危惧IB類、アカザに関しては環境省レッドリストで絶滅危惧U類、福島県レッドリストでは絶滅危惧IA類に選定されています。また、只見町で一般的に食されるのはイワナ、ヤマメ、ウグイ、カジカです。そのほかにもエビ、ヤゴ、カジカガエル(成体、オタマジャクシ)などの生き物も確認できました。(なお、観察後は全ての生き物を川へ戻しました。)

 見つけた生き物たちは、水中に沈んだ浮石の下や草木の茂みの下にいました。こうした生き物たちが隠れられる環境があってこそ、多様な生き物が生息できるのです。そして、私たちは食などを通してそれらの自然の恵みを享受できています。只見町にはまだそのような貴重な環境が残されおり、今後も守っていきたいものです。子どもたちにはこのことも共有させてもらいました。

 小学生の頃からこうした自然体験をできる只見町は本当に恵まれているなぁと改めて実感させていただきました。

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ヤマメ

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アカザ

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左からウグイ、アブラハヤ、シマドジョウ

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カジカ大卵型

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カジカガエル
posted by ブナ at 17:43| 人材育成