冒頭、河口博士の好きな川魚料理や川魚料理に関わる地域の人たち、川魚料理を知らない昨今の学生たちのエピソード紹介があり、川魚料理を食べることや川に入ることなど本物に触れることも「森と川のつながり」を知る延長上にあると説明されていました。
森と川のつながりとして、渓流の周辺の森林により日射が遮断され、渓流の水温が低く保たれ、イワナなどの渓流魚が生息しやすい環境が形成されていること、また、森林から渓流に供給された落ち葉は、バクテリアが付着した後に水生昆虫により分解される一方で、その過程で落ち葉から染み出した窒素やリンなどの栄養塩類が藻類を育てる栄養源となり、水生昆虫はこの藻類を餌として成長し、羽化した後に陸上の捕食者に食べられるといったことがあることを説明されました。つまり、こうした水域と陸域のエネルギーの行き来があることが河川生態系の特徴ということでした。
次いで、河口博士が実際に行った森と川のつながりに関する調査研究についての紹介もありました。落葉広葉樹林にある河川のほうが草地にある河川よりも落下してくる昆虫の量は多かったこと、しかし、両方の河川に生息する魚類の一匹あたりの昆虫の捕食量は変りませんでした。それはなぜなのか。そこで、河口博士は驚きの実験を行います。50メートルほどの区間の川をビニールハウスで覆い、ビニールハウスで覆わなかった川とで落下昆虫と生息する魚類の量の違いを比較したのです。その結果、ビニールハウスで覆った川では落下昆虫と魚類の両方の量が減少しました。落下昆虫の多い河川環境ほど、生息する魚類も多いということが言えたのです。森林、河川、昆虫、魚類の関係をきれいに明らかにした研究事例でした。
また、北海道でイワナよりも冷涼な環境に生息しているオショロコマという魚を事例に、地球温暖化とダム構造物が魚類の生育と繫殖にどのような影響を与えているかを調べる20年以上の長期調査研究のお話をしてくださいました。知床半島の河川には低ダム群工法によるダムが数多くあり、これにより河川幅が広くなり、水深が浅くなり、流速も遅くなり、水温が上昇しやすい環境となってします。半島の東西で環境の違いはあるものの、ダム密度が高い河川ほど水温が高い傾向にあり、そうした河川ではオショロコマの数が少ないばかりでなく、稚魚がいなくなり、再生産がうまくいっていない可能性がでてきたとのことでした。こうした長期調査研究を通して、森と川のつながりに対する長期的な影響も明らかになるのではないかと河口博士はおっしゃいました。
質疑応答の後、最後に川口博士は身近な環境へ関心を持ち、生き物の世界を知り、視野を広げることが大切であると伝えられました。
森と川、生き物のつながりは漠然と知っているつもりでしたが、きちんとした科学的データに基づいて説明してくださり、目から鱗が落ちる思いでした。河口先生、貴重なお話をありがとうございました。
聴講下さった皆様にも御礼申し上げます。