今年の干支は午年(うまどし)です。馬に関する只見町の自然と文化について紹介したいと思います。
只見町の伝統的民家の代表に厩中門造(うまやちゅうもんづくり)の民家があります。母屋に中門とよばれる突出部があり、そこは母屋につながり、厩や便所としての機能があります。平面的に見るとL字型をしたものとなり、“曲がり屋”とも呼ばれます。厩には農作業に使う馬が飼われ、一つの家の中で人も家畜も一緒に暮らしていたわけです。流石に現在は厩に馬は飼われておらず、代わりにトラクターなどの農耕機械が置かれているのを目にします。
この伝統的民家ですが、多くは新潟から来た大工さんにより作られたようです。構造材はもちろん木材です。この木材に注目して、どのような樹木の木材で作られ、それら樹木は只見の植生とどの様な関係にあったのかを、信州大学教育学部の井田秀行教授らが調べてくれています。その結果、伝統的民家の構造材にはキタゴヨウなど只見地域の山林に自生する樹木が使われ、柱や梁などの部位別に樹木の木材としての特性を踏まえた上で適材適所で使われていることが明らかになっています(Ida et al. 2023)。
構造材に多く使われていたキタゴヨウは、マツ科マツ属の常緑高木で、只見地域では雪食地形の最上部の痩せ尾根に生育しています。このキタゴヨウの林は痩せ尾根に列状に並んで成立しており、その姿はまるで馬の鬣(たてがみ)のようで、只見地域の景観の大きな特徴ともなっています。一般に針葉樹は、多雪地帯では生育が制限され、発達した森林を作ることが困難とされています。キタゴヨウについても、その生育地は痩せ尾根の岩石部に限られていますが、こうした場所は、風により雪が飛ばされ積雪が少ないため、キタゴヨウにとって好適な立地環境であると考えられています。
かつては集落背後のキタゴヨウが伐り出され、その木材が人々の家屋の建築に使われていたわけですね。当たり前といえば当たり前の話かもしれませんが、現代においては、多くの家が外国から運ばれてきた木材で建てられる中、かつては家屋も自給自足でつくられていたということです。それほど、人と森との関係が密接だったのだと思います。
只見地域の伝統的家屋とキタゴヨウを眺めながら、人と森との関係を考え直してみるのも良いかもしれません。特に、積雪のある今の時期は尾根沿いのキタゴヨウがよく目立ちますので、ぜひ観察してみてください。
ただみ・ブナと川のミュージアム、ふるさと館田子倉は、1月5日(月)より通常通り開館しております。
今年も皆様のご来館をお待ちしております。
(参考文献)
Ida H., Sato T., Rikukawa Y., Abe R., Hoyano S., Tsuchimoto T. (2023) Optimizing species selection for the structural timbers of traditional farmhouses in a snowy rural area of northeastern Japan(東北地方の豪雪農村地域における古民家の構造材の最適な樹種選択). Ecological Research 38: 795-808. https://doi.org/10.1111/1440-1703.12408