2021年10月27日

今年のブナの堅果生産

 今年の春は2018年から3年ぶりにブナの開花が見られましたが、結実するかどうか気になるところでした。浅草岳につづく平石山のブナ林を歩くと地面にブナの堅果(けんか)が落ちていました!風が吹くとブナの樹冠からパラパラと雨のように堅果が落ちてきます。ただし、生産量はそれほど多くないようです。低標高地のブナ林ではあまり堅果の生産がみとめられず、町内でもブナ堅果生産の状況はばらつきがあるようです。今年の只見町のブナの堅果生産は、並作の下(樹冠の一部に結実)〜凶作(結実が認められない)といったところで、期待したほどは成らなかったようです。

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▲ブナの堅果

 ブナの堅果はタンパク質や脂肪分を多く含み、栄養価が高いため、ツキノワグマなどの野生動物の重要な餌資源となっています(人間が食べても美味しく感じます)。平石山の登山道には新しい熊の糞が落ちており、糞の中身を調べてみるとやはりブナの果皮が含まれていました。早速クマも冬に備えてブナの堅果を食べたのでしょう。ブナのほかにもタムシバの種子がたくさん含まれていました。ちなみにブナ堅果の豊凶とクマの人里への出没には関係があるとされ、只見町でもブナ堅果が凶作だった一昨年、去年はクマが人里まで多く出没しました。今年もブナ堅果の成りはあまりよくないようですが、この秋はクマ出没の情報は聞きません。ちょっと今までと傾向が違うようです。

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▲ツキノワグマの糞
posted by ブナ at 10:54| Comment(0) | 定点観測

2019年07月05日

あがりこ型樹形のコナラをナラ枯れから守る!


先日、只見町黒沢などにおいてコナラなどのあがりこ型樹形の巨木を対象に、ナラ枯れ被害の防除作業を行いました。

ナラ枯れとは、カシノナガキクイムシが媒介するナラ菌によってナラ類、シイ・カシ類が集団枯損する被害のことです。

枯死したコナラ
▲枯死したコナラ

只見町では、2011年よりナラ枯れの被害分布と被害量調査を継続して実施しています。新潟県から六十里越、八十里越を通して只見地域に侵入したナラ枯れは、只見川流域を下り、また、伊南川流域を遡り、被害が拡大しました。2015年までに被害は過去最低になり被害が終息するかと思われましたが、2016年には一転して被害が爆発的に増大しました(詳しくは、ブナセンター紀要No.7の石川ら(2019)をご参照ください)。
さらに、只見地域では被害の中心がコナラであることが特徴となっており、ブナセンターでは、特に、全国的にも珍しいあがりこ型樹形のコナラの巨木をナラ枯れから守る活動を定期的に行っています。

「あがりこ」とは、一般には、東北地方の多雪地帯を中心に見られる人為的に作られたブナの独特の樹形を指します。その樹形は、幹の地上2〜3mのところで主幹を欠き、その部分は幹が瘤状に肥大し太くなり、さらにそこから多くの幹が発生しています。こうしたあがりこの成り立ちは、雪上伐採により地上部の幹を利用しつつも、個体(株)を維持し、さらに伐採部分から発生する萌芽幹を繰り返し利用したことによります。生産、伐採された幹(材)は薪として利用されます。つまり、現在、私たちが見ることができるあがりこ型樹形の樹木は、人間による過去の森林利用の歴史をあらわしたものであるといえます(人間が関わらないあがりこ型樹形もあります。その紹介はまたの機会に譲ることとします)。ちなみに、只見地域では「あがりこ」とは呼ばず、「もぎっき」などと呼ばれます。

只見地域には、薪材生産を目的とした雪上伐採の結果形成されたあがりこ型樹形のブナが存在することはもちろんですが、あがりこ型樹形コナラの巨木も存在しています。これが全国的にも珍しいものなのですが、ナラ類ということで例に漏れずナラ枯れの被害を受けています。このコナラを保全する(ナラ枯れから防除する)ために、ブナセンターでは継続的に幹への殺菌剤の注入を行っています。その作業順は、開葉時期である5〜6月に、@樹木の周囲をナタ等で刈り払う、A胸高直径を測定し、ナンバーテープで個体を識別し、B幹部にドリルで穴を開け、Cその穴に高濃度少量注入殺菌剤を注入する、となります。

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ナラにドリルで穴を開け、爪楊枝を挿している様子
▲ナラの樹にドリルで穴を開け、目印になる爪楊枝を挿している様子

今年は、80本ほどのあがりこ型樹形コナラの巨木に処理を行いました。残念ながら殺菌剤注入を行っても、枯れてしまう個体が出てきてしまいますが、引き続き、ブナセンターでは人間の森林利用の歴史や技術を伝えるこのあがりこの保全に取り組んで行きます。

posted by ブナ at 16:19| Comment(4) | 定点観測

2019年04月21日

農作業の準備が始まります

気温が20度近くまで上がるような、春の陽気が近づいてきましたが、油断をすると肌寒く感じる日もあります。

只見町でも、徐々に町民のみなさんが農作業の準備を始められたようです。

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現在の只見町では、あちこちで畑の土をおこして、ならしている光景を見ることができます。

一番上の写真は、春を感じさせるフキノトウをあえて残して、畑を整備したのでしょうか?想像がふくらみます。


ある町民の方にうかがったお話によると、只見町で本格的に農作業を開始するのは、5月に入ってからだそうです。4月はまだ地温が低く、畑に作物を植えても成長しません。当地の4月はまだ、冬の名残りのほうが色濃く残っています。過去には6月にみぞれが降った年もあるのだとか。

なお、「ただみ・ブナと川のミュージアム」では、4月27日(土)より特別企画展「植物学者 河野昭一の世界 その生涯と只見」を開催いたします。詳しくはこちらhttp://www.tadami-buna.jp/event.html#KawanoWord


ぜひ皆様お誘い合わせのうえ、冬と春のはざまにあるこの時期に、只見町にお越しください。

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posted by ブナ at 11:18| Comment(0) | 定点観測

2015年06月15日

自動撮影カメラはじめました!

野生動物を普段の姿を撮影するために、柴倉山に自動撮影カメラを設置しました。
狙うはツキノワグマです!

柴倉山の登山道より少し林内に入った場所に設置しました。
設置した場所の環境は、沢に近いサワグルミの林です。
獣道などの痕跡を頼りに、動物が通りそうな場所に設置します。

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場所が決まったら動物が写るように高さと向きを調節して木にくくりつけます。

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設置後はこのような感じです。

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果たしてどんな野生動物が撮影できるでしょうか?
結果は追って報告します。
posted by ブナ at 16:25| Comment(4) | 定点観測

2012年11月30日

定点観測の記事について

ブログの整理に伴い、ブログで更新していた定点観測の写真をブナセンターホームページへ移動しました。

ブナセンターホームページ 定点観測

上のリンクから定点観測のまとめページへ飛べますので、こちらからご覧ください。
ブログでのコメントなどは、都合上省略させていただきました。ご了承ください。

posted by ブナ at 16:02| Comment(0) | 定点観測