2025年03月13日

3/9(日)「雪どけのブナ林観察会」開催報告

 3月9日(日)、雪どけのブナ林観察会を余名沢の森(深沢集落)で開催しました。参加者は町内者10名、町外者4名の計14名の参加がありました。
 観察会のタイトルは「雪どけ」でしたが今年の只見の冬は雪が多く、たくさん積もった雪の上を進んでいきました。

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 カケスの鳴き声を聞きながら斜面の急なスギ林を進み、ブナ二次林へ向かいます。
 途中で、冬芽をつけたブナを見かけたり、枝が雪の下に埋まってしまったスギを見かけ、持ち上がるか試したりしました。

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▲雪の重さに垂れ下がった枝。雪の沈降力によって、人の力では持ち上がらないほど重くなる。


 スギ林を抜けると、かつて薪炭林として利用されていたブナ二次林が広がっていました。
二次林のなかでもよく成長した太いブナは、参加していた子どもたち3人が手をつないで作った輪と同じくらいの太さでした。

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▲観察会の途中、すっかり雪の下になった標柱と記念撮影をする参加者たち。


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▲今回の観察会では福島県森林環境交付金を活用して製作した観察の森内案内標柱の解説と整備体験を行いました。標柱が180p(地中部含む)なので、その雪の量に驚きました。

 ブナ二次林をさらに進んでいくと、奥にブナの巨木がありました。今回はその巨木の周りで小休憩を挟みました。温かいコーヒーを飲みながら参加者同士で自己紹介をして交流を深めました。

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 休憩後の帰り道は、来た道とは別のルートでスギ林方面に向かっていきます。

 帰りのルートでは、トチノキやホオノキ、ヤマブドウ、ゴヨウマツ、アカマツ、ウダイカンバなどの樹木のほかに、カミキリムシの穿孔痕やキツツキの仲間が付けた穴など、動物たちの生活の痕跡が確認できました。

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▲トチノキ(上)とホオノキ(下)。トチノキの樹皮はザラザラとしている。葉の付き方で見分けることが多い。


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▲ヤマブドウ。つる性の落葉低木樹で、つるを伸ばしてほかの樹に絡みつく。


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▲ゴヨウマツとアカマツ

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▲ウダイカンバ


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▲カミキリムシの仲間による穿孔痕

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▲キツツキの仲間のつけた穴


 今回は途中で雪が降り、あまり好天ではありませんでしたが、気温は高く、雪の上も締まって歩きやすい観察会でした。
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。次回の観察会にもぜひご参加ください。

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posted by ブナ at 11:03| 自然観察会

2025年02月16日

2/15(土) 豪雪のブナ林観察会 開催報告

2月15日(土)、豪雪のブナ林観察会を余名沢の森(深沢集落)で開催しました。参加者は町内者15名、町外者8名の計23名の参加がありました。今回の観察会には、秋の観察会にも同行して頂いた箕口秀夫博士に講師として同行していただきました。
まずはかんじきやスノーシューなど、装備を確認してから雪原に向かいます。
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▲かんじきを装備する参加者
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▲いざ雪原へ
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▲落雪対策としてヘルメットも装備
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▲雪原を歩いて森の近くまで移動
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▲積雪断面観測のため、箕口博士に同行して頂いた

2月に入ってから寒波が続いておりましたが、この日は久しぶりの快晴で山々の観察も楽しめました。
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▲ブナ林と雪食地形

景色を堪能したあとは森の中へ。途中で見つけた樹木についていくつか解説をいただきながら斜面を登りました。
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▲イタヤカエデについて解説する箕口博士
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▲ブナと共生する地衣類。菌類の仲間と藻類(コケ)の共生体で、種類によって様々な色を持つ

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▲急な斜面を滑らないように注意しながら登っていく参加者

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斜面を登り切ったら休憩を挟んで、集合写真を撮りました。

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最後に、箕口博士による積雪の層の解説をいただきました。積雪断面観測という手法で雪の層を見るために、前日の14日に雪を掘って準備してくださいました。
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▲積雪断面を解説する箕口博士。雪の層を調べることで、その層が積もった時の気象条件や、その後の気象環境が分かるという。
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▲着色することで断面を見やすくする

雪の層は、湿ったザラメユキの層、氷の層、押し固められたシマリユキの層、最近降ったばかりの新雪の層に分かれているのが確認できました。
降ったばかりの新雪は、自重やさらに降り積もった雪の重みで押し潰されるとシマリユキとなります。雪が止んで暖かくなると、新雪やシマリユキが融解して湿ったザラメユキになり、雪が降らない期間が続くとザラメユキの表面が凍って、氷の層が形成されるそうです。
そのため固い氷の層の下のほうがやわらかく、参加者は実際に触ってみて確かめていました。
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▲今回は240cmの雪の層を観測しました

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▲積雪断面。色が濃くなっているところが氷の層。


この日は好天に恵まれたブナ林観察会でした。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。次回の観察会にもぜひご参加ください。
posted by ブナ at 15:46| 自然観察会

2024年10月30日

10月14日(月・祝)秋のブナ林観察会「どんぐりが実り、移動する秋を楽しむ」開催報告

 10月14日(月・祝)に、秋のブナ林観察会「どんぐりが実り、移動する秋を楽しむ」を布沢・癒しの森で開催しました。参加者は町内者16名、町外者7名の計23名の参加がありました。今回の観察会には、前日の10/13に只見公民館にて講演を行われた箕口秀夫博士に講師として同行していただきました。
 前日に許可を受けたネズミトラップ17個を仕掛けており、この観察会では、実際にネズミがトラップに掛かっているかを確認しながら進んでいくことになりました。

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▲ブナ林を進む参加者


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▲ネズミトラップについて解説する箕口博士。トラップの中には布団綿とヒマワリの種が入っている。ネズミが入ると入口が閉まる。


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▲箕口博士によると、斜面などにある小さな穴や隙間は、入口がつるつるであれば生き物が利用している可能性が高いそうだ。反対に葉や木屑があれば使われていない場所だという。


 10月の3連休は晴れが続きましたが、箕口博士によると、ネズミは天敵に狙われにくい悪天候の方がよく活動しているためトラップには掛かっていないかもしれないと話されていました。

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▲ブナ林の様子


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▲キノコを撮影する参加者


 木々はまだ青々としており、紅葉はほとんど見られませんでした。それでも、あちこちにブナハリタケ、カラカサタケなどのキノコが生えていたり、コナラやミズナラのドングリ類が落ちていたりと、小さな秋を感じることができました。

 ネズミを観察できることを期待しながら全てのトラップを確認しましたが、今回は残念ながらネズミを捕まえられませんでした。ネズミは初めて見る物は警戒しますが、数日経つと慣れてきて好奇心が勝るようになるそうです。寿命が1年程と短いため、警戒してばかりだと食べ物を得ることができないのでこのような習性をもつのだとか。
 もう少し長い期間でトラップを仕掛けていればネズミを捕まえられたのかもしれません。

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▲トラップに掛かるはずだったネズミについてお話しする箕口博士。


 最後には、参加者全員で「山手線ゲーム」をしました。お題は「ブナ林に生息する動物(範囲は哺乳類、爬虫類、両生類限定)」でした。参加者からはツキノワグマやカモシカ、ハコネサンショウウオ、モリアオガエルなど、多くの動物が挙げられ、それぞれの種について箕口博士に解説いただきました。

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▲ブナ林に棲む動物を挙げていく参加者と解説する箕口博士。


 朝方は冷え込みましたが、晴天に恵まれて少しずつ気温も上がり、歩きやすい日でした。ネズミを直接見ることができませんでしたが、箕口博士のお話のおかげで、森林と動物たちの関わりについて学ぶことができました。
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。次回の観察会にもぜひご参加ください。
posted by ブナ at 11:30| 自然観察会

2024年05月01日

4月28日(日)「ブナ林の新緑観察会」開催報告

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先月28日(日)はGW恒例の自然観察会を開催しました。その二日目「ブナ林の新緑観察会」には、町内者2名、町外者12名、計14名の参加がありました。開催地は恒例の「癒しの森」で、終点「戸板山眺め」までのコースを歩きました。

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晴天に恵まれましたが、この日も季節外れの高温で少し汗ばむほどでした。例年であれば残雪を歩くこの森も、今年は急傾斜地に僅かに雪が残るばかりでした。

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▲林床に落ちたブナの雄花
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▲梢にはブナの雄花・雌花とも確認できる

ブナの雄花も残雪の上でなく、落葉上に積もっていました。昨年は凶作だったものの、今年は木によってはそれなりの実りが期待できそうです。
ブナが多数の実をつける豊年は4-5年周期と言われていますが、その豊年にかかわる花芽形成の条件の一つには、8-9月の気温があると考えられています。さらに、気温は地域ごとにまとまっているため、豊年はある地域で一斉に生じる、と考えられているそうです。

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▲ゴジュウカラ

鳥類は、見通しの利かない林内のため鳴き声のみの確認がほとんどでしたが、ツツドリやアオゲラ、コガラ、ヤブサメ、クロツグミ、オオルリなど12種を数えました。中でもゴジュウカラは私たちの近くでさえずっており、肉眼でも視認することができました。キツツキではありませんが、幹を垂直移動できる変わった小鳥です。

ゾウムシの一グループであるオトシブミの仲間は、落葉広葉樹の葉を巻き、その中に卵を産みます(これを揺籃と言います)。幼虫は葉を食べて成長します。ブナの柔らかな新葉を利用するオトシブミもいくつか知られており、今回はビロードアシナガオトシブミなど3種が見つかりました。

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▲オトシブミの成虫
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▲オトシブミの揺籃

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▲ビロードアシナガオトシブミの樽型の揺籃。右上の葉に成虫も写っている
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▲ビロードアシナガオトシブミの成虫。ブナの新葉の時期にしか現れないため、観察は難しい。


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▲戸板山(標高 958 m )

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▲オオイワウチワ

終点「戸板山眺め」からは金山町方面の山並みを望むことができ、約3 km先に聳える戸板山もよく見えました。足元にはオオイワウチワが群生しており、まだ散り落ちていない花も残っていました。

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ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。次回の観察会にもご期待ください。
posted by ブナ at 12:04| 自然観察会

2024年04月29日

4月27日(土)「野生植物の花観察会」開催報告

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 一昨日27日(土)はGW恒例の自然観察会を開催しました。その一日目「野生植物の花観察会」には、町内者9名、町外者9名、計18名の参加がありました。開催地は毎春の恒例となっている、余名沢の観察の森でした。

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▲カタクリ

 この春の只見町は異常な高温で、最高気温25℃以上の夏日がこの日までに3回もありました。ただでさえ少なかった残雪はたちまち消え去り、春の花の開花やブナの展葉も瞬く間に進んでしまいました。これにより、カタクリをはじめとした春植物も花の盛りを過ぎてしまいました。が、今回はあまり注目されることのない、開花後の結実の様子などを観察することができました。

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▲キクザキイチゲの花

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▲キクザキイチゲの果実。金平糖のような形が面白い


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▲コシノコバイモの花

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▲コシノコバイモの果実


 春植物ではありませんが、春の花であるスミレの仲間も見られました。ナガハシスミレが多かったほか、オオタチツボスミレやスミレサイシン、マキノスミレも観察できました。
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▲ナガハシスミレ


 スミレや春植物(カタクリやコシノコバイモ、キクザキイチゲなど)は、種子散布をアリに手伝ってもらうことで知られています。アリに種子を運んでもらえるよう、植物は報酬として、種子にエライオソームという餌を付けます。アリは種子を巣まで運び、エライオソームだけを食物とし、種子本体は巣の傍に捨てます。これによりこれら植物はより広範囲に分布を広げることができるのです。

 樹木の展葉も進んでいます。おいしい山菜として人気のコシアブラや、巨大な葉をもつホオノキが特徴的な芽吹きの姿を見せていました。
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▲コシアブラ
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▲ホオノキ


 また、ある地点ではヒトツバカエデの幼木が密生していました。これらは恐らくすべて同じ個体(クローン)で、地中で繋がっていると考えられます。
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▲ヒトツバカエデ


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 ブナ二次林まで来ました。ここでは現在、只見こども藝術計画「ブナの森の葉っぱ日記」作品展を開催中です。

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▲ブナ二次林のブナ稚樹
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▲スギ人工林のブナ幼木

 ブナ二次林の林床には、昨年春に発芽したブナの稚樹が見られましたが、暗く厳しい日照条件のためか、生き残っている個体は僅かでした。しかし、スギ林の林床では膝丈まで生長した幼木があり、スギ林の日照条件がブナの生育に好適であることがわかりました。只見町では薪エネルギーの普及事業を進めており、その過程でのスギ人工林の伐採と、その後のブナをはじめとした広葉樹林への転換を目指しています。

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 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
posted by ブナ at 16:59| 自然観察会