2026年07月03日

6/21(日) 自然観察会「上田先生と行く!野鳥観察会」開催報告

 6月21日(日)、立教大学名誉教授・日本野鳥の会会長の上田恵介博士をお招きし、只見町ブナセンター自然観察会「上田先生と行く!野鳥観察会」を開催しました。11名が参加されました。朝から雨模様だったため、雨が弱くなるまで上田博士からミュージアムで講話をいただき、その後、新田沢での観察会を行いました。

DSCN5904.JPG

▲講話を行う上田博士


 講話のテーマは「増えた鳥・減った鳥」でした。上田博士は、一部の鳥類が減った背景には、林業の衰退による里山の放棄があることをお話しされました。コサギやアマサギなどの小動物を食す鳥類が減っており、これは用水路を介した田んぼと川のつながりが断たれたことや、田んぼで化学物質の含まれた農薬が使用されたことで、餌となる魚の稚魚や昆虫類が減ったことが背景にあるようです。ただし、アオサギやダイサギなど、大型の動物を捕食できる鳥は増加しているとのことでした。

DSCN5907.JPG

▲小雨になったので新田沢へ向けて出発準備


 その後、雨が落ち着いてきたため、新田沢林道の入り口へ移動し、観察会となりました。林道入り口付近では、ホトトギス、ホオジロ、ウグイスの鳴き声を聞くことが出来ました。まだ雨が残る中林道を進んでいくと、オオルリ、ヒヨドリ、アカショウビンの鳴き声を聞くことが出来ました。一部の参加者の方はオオルリの姿を双眼鏡で見ることができたようです。

DSCN5911.JPG

▲鳥の鳴き声を聞き、鳴き声が聞こえた方向へ指をさす上田博士


DSCN5919.JPG

▲オオルリとヒヨドリの声を聞く上田博士ら


 新田沢の林道を歩く中で、鳥類以外の生物や植物を観察することも出来ました。新田沢の林道沿いには、コシジシモツケソウやエゾアジサイの花が咲いていました。また、水が流れる沢の近く生えていたヒメヤシャブシの枝先に、ミヤマカワトンボのメスが止まっている様子が見られました。帰り道の途中では、ブナの木の樹幹流を見ることも出来ました。樹幹流とは、樹木の上部に降った雨が枝や幹を伝って地面に流れ下る雨水のことです。

コジシモツケソウ新田沢.jpg

▲コシジシモツケソウの花

 
DSCN5944.JPG

▲エゾアジサイの花


DSCN5923.JPG

▲ヒメヤシャブシの枝先にとまっていたミヤマカワトンボのメス


DSCN5938.JPG

▲ブナの木の表面を流れる樹幹流


 最後は、ただみ・ブナと川のミュージアムに戻った後、鳴き声や姿を確認した鳥を参加者の間で報告しあいました。全員の報告をまとめた結果、今回の観察会ではセグロセキレイ・ホトトギス・ホオジロ・ウグイス・ヒヨドリ・オオルリ・アオバト・ヤブサメ・アカゲラの仲間とアカショウビンを含めて合計10種類の野鳥が確認されました。以下は、今回確認できた鳥のリストになります。

DSCN5948.JPG

▲ただみ・ブナと川のミュージアムに戻って確認した野鳥を共有


★2026観察会野鳥リスト_cropped (1).jpg

▲今回の野鳥観察会で確認できた種のリスト
(クリックすると拡大できます)


 雨模様でしたが、上田博士の講話を聴かせていただき、10種類の野鳥を確認することができました。ご同行いただいた上田博士、ありがとうございました。参加いただいた皆様にも感謝申し上げます。

DSCN5950.JPG


 今回確認できた鳥類のうち、6種類(ホトトギス・ホオジロ・オオルリ・セグロセキレイ・ヤブサメ・アカショウビン)の鳴き声は以下の音声ファイルからもご聴講いただけます。ぜひご活用ください。

@ホトトギス
ブログ用ホトトギス.png



Aホオジロ
ホオジロ.png



Bオオルリ
オオルリ.png



Cセグロセキレイ
セグロセキレイ.png



Dヤブサメ
image.png



Eアカショウビン
アカショウビン.png


posted by ブナ at 16:02| 自然観察会

2026年05月01日

4/19(日)「ブナの一斉開花観察会」開催報告

4月19日(日)に余名沢の森で、只見町ブナセンター主催のブナの一斉開花観察会を開催しました。只見町で4年ぶりにブナの一斉開花が見られるということで、町内外から67名の多くの方々にご参加いただきました。

はじめに、季の郷湯ら里にある薪ボイラー施設を見学しました。森林を育てて熱エネルギーとして利用することの意味について学びました。

092A9650.JPG

▲薪ボイラー


見学後、余名沢のブナ林を目指します。山を眺めると、痩せ尾根にあるキタゴヨウ、安定した立地にあるブナ、雪崩が起きる急斜面にはミヤマナラなどの低木林(まだ展葉はしていない)それぞれの立地環境に適応した植物群が見られます。これを「モザイク植生」と言います。

092A9670.JPG

▲濃い緑がキタゴヨウ、新緑がブナ、色のついていない斜面はミヤマナラなどの低木林


整備されている遊歩道がナラ枯れにより、枯れ枝の落下や倒木の危険があるため迂回路を歩きます。ヤブっぽく、ぬかるむワイルドな道中では、キクザキイチゲ、カタクリ、コシノコバイモなど春の可憐な花々の観察が楽しめました。

P4195161.JPG

▲キクザキイチゲ


P4195163.JPG

▲カタクリ


P4195162.JPG

▲コシノコバイモ


観察地のブナの二次林に到着後、ヤマサ商店の「只見町ブナ林の恵み茶」(ブナ林に生育する4樹種の葉や枝をブレンドした樹木茶)を飲んで一息つきます。新緑のブナの淡い緑に心が癒されます。

092A9888.JPG

▲お茶を飲みながら小休憩


DSCN5529.JPG

▲新緑のブナ林


休憩後にブナの混芽(花を展開する芽と葉を展開する芽の両方の性質をもつ冬芽)を一人一つずつお渡しして、紙谷館長がブナの花について解説しました。ブナは、同じ木に雌花と雄花が別々につく雌雄異花同株(しゆういかどうしゅ)です。花をじっくり観察しました。

092A9988.JPG

▲ブナの花


続いて林野庁で行われているブナ開花(結実)調査を参加者の皆様と一緒に行いました。
この調査は、ブナの開花状況を0〜5段階で評価するものです。
・樹冠(木の上部の葉が茂る部分)にたくさんの花がついている→5
・樹冠上部に多くの花がついている→3
・ごくわずかに花がついている→1
・まったく花がついていない→0
上記を評価基準として、枝先のブナの花を双眼鏡で覗きながら開花状況を確認して、合計36本の木の開花状況を評価しました。

092A9888.JPG

▲双眼鏡で開花状況を観察する


調査の結果、評価5→8本(22%)、評価4→4本(11%)、評価3→7本(19%)、評価2→0本(0%)、評価1→8本(22%)、評価0→9本(25%)という結果で、約75%の木(27本)に花がついていることが分かりました。

092A9998.JPG

▲樹冠上部の様子


調査の後は、只見町(楢戸)での13年間のブナの結実状況について話をしました。過去13年でのブナの豊作年は2015年、2018年、2022年で、今年(2026年)は4年ぶりの豊作年となります。続いて東北5県での37年間のブナの開花・結実状況のデータを見ると、東北5県では豊作年と凶作年が揃っていることが分かりました。ブナは広い範囲で豊作と凶作が同調します。ブナの凶作年には、ブナ種子に依存している捕食者の数が大幅に減り、翌年のブナの豊作年には捕食者から免れた多くの種子が残ります。このような豊凶の同調は、ブナの種子が食べつくされてしまわないための進化であると考えられています。

DSCN5542.JPG

▲ブナの結実について解説する紙谷館長


観察会終了後は、ヤマサ商店さんが来て直売会を行い、多くの参加者の皆さまにご購入いただきました。ブナ林の恵み茶の他、ブナ林の恵み飴も好評でした。

DSCN5570.JPG

▲ヤマサ商店の直売会


ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
次回の観察会も是非ご参加ください。

092A0031.JPG

posted by ブナ at 11:01| 自然観察会

2026年03月02日

2/21(土)「豪雪のブナ林観察会」開催報告

2月21日(土)に余名沢の森で、只見町ブナセンター主催の豪雪のブナ林観察会を開催しました。町内外から31名の方が参加されました。
今年の只見町の積雪は2月のはじめには約230cmありましたが、初旬以降はまとまった降雪がなかったため、観察会当日の積雪は約140cmとなっていました。連日の好天により雪が固く締まり、かんじきやスノーシューを履かずに雪の上を歩くことができました。

DSCN5289.JPG

▲2月とは思えない快晴の空


はじめに、季の郷湯ら里に新しくできた薪ボイラー施設の説明をしました。薪ボイラー施設は、只見町内の手入れがされなくなった森を整備して得られた間伐材を薪エネルギーとして活用し、森林の育成、地域資源の循環利用、地域経済の循環、低炭素社会の実現を目標に設立されました。これは「地域資源の持続可能な利用を通じた地域経済社会の発展」を掲げる只見ユネスコエコパークの理念に基づいた事業でもあります。

DSCN5294.JPG

▲薪ボイラー施設


薪ボイラー施設を見学した後に、林内へ向かいます。入口の平坦な杉林を抜けた先の斜面の上にはブナの二次林が広がっています。雪が固いので慎重に急登を登っていきます。

DSCN5315.JPG

▲ツボ足(スノーシューやかんじきを使わず靴のまま雪面を歩くこと)で歩く参加者


DSCN5344.JPG

▲ブナの二次林の急斜面


急斜面の中腹にはひときわ大きなブナの巨木があります。周囲のブナの樹形はすらっと細長いのに対して、この木は幹の直径も相当に太く、また幹の途中の枝分かれが多いのが特徴的です。伐採から免れたため、大きく育っていったと推測されます。集落の近くにこれほどのサイズの巨木があるとは驚きです。

DSCN5345.JPG

▲ブナの巨木を観察する参加者


少し移動して、違う場所のブナも観察しました。カミキリムシの穿孔痕や、ブナの樹皮につく地衣類について紙谷館長から解説いただきました。

DSCN5363.JPG

▲地衣類が付着することでブナの樹皮に模様ができます


林内の観察が終わった後は、積雪断面の観察と、弱層テスト(積雪の安定性を調べ、雪崩リスクを確認するテスト)を行いました。

積雪断面の観察では、降ったばかりの雪と積もって時間がたった雪の状態の変化について解説をしました。雪の層が観察しやすくなるように着色をして、今年の只見町の積雪量の推移のグラフを見ながら、実際の雪の層を確認しました。

1772240197415.jpg

▲積雪断面の雪の状態を解説


もう一方では、表層雪崩の発生メカニズムを解説しながら弱層テストを行いました。弱層テストは30cm四方に切り出した雪の柱にスコップで、小・中・大の衝撃を加え、雪の層が崩れないかを確認します。今回は大きい衝撃を加えたときに積雪層のズレが確認されました。

1772240198972.jpg

▲弱層テストの様子


最後は只見町ブナ林の恵み茶(ブナ林に生育する4樹種の葉や枝をブレンドした樹木茶)の試飲をしました。ブナ林の恵み茶は只見町インフォメーションセンターでお買い求めいただけます。

P2212799.JPG

▲ブナ林の恵み茶の試飲


DSCN5372.JPG

▲只見町ブナ林の恵み茶(4種の樹木葉ブレンド)


ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
次回の観察会も是非ご参加ください。

P2212740.JPG
posted by ブナ at 12:00| 自然観察会

2025年11月13日

観察会「秋のブナ林観察会〜秋の実りと哺乳類〜」開催報告

 2025年10月26日(日)、新潟大学名誉教授の箕口秀夫博士を迎え、只見町ブナセンター観察会を余名沢の森にて開催しました。雨の中での開催となりましたが、町内外より18名の方にご参加いただきました。

観察会 (1).jpeg


 今回の観察会では道中、前日に仕掛けておいたシャーマントラップ(小型哺乳類の捕獲用トラップ)の確認を行いました。(注意:ネズミ類の捕獲は県の許可を得て実施しております。)実は、昨年も同様にネズミを観察する観察会を開催しましたが、その時は一匹も捕獲できず観察できずに終ってしました。今回はそのリベンジの観察会でもありました。昨年観察できなかった要因の一つとして、天候がありました。昨年はトラップを仕掛けてから観察会当日まで晴れの天気でした。しかし、ネズミにとっては晴れの日は天敵に狙われやすく行動が活発ではありません。一方、雨などの天気が良くない日は行動が活発になります。今回はトラップを仕掛けてからの天候は雨です。結果はいかに・・・。

 見事、今回はトラップにはアカネズミとヒメネズミが捕獲されておりました!(ネズミさんたちにはだましてごめんなさい。いい迷惑ですね・・・)。箕口博士の解説で、両者の毛の色・耳の形・尾の長さの違いを見比べながら観察することができました。

観察会 (2).jpeg


観察会 (3).jpeg


 さらに、捕獲したネズミを逃がす際は逃げていく場所に注目し、地上で暮らすアカネズミは走って草むらに逃げ込み、樹上で活動することも多いヒメネズミは木を登って逃げていく様子を観察することができました。
 また、遊歩道にはツキノワグマが齧ったと思われる標柱や、ツキノワグマの毛が付着した標柱の破片も見つかり、箕口博士よりツキノワグマの縄張りの主張に関連した行動についての解説も伺うことが出来ました。

 箕口博士、並びにご参加下さった皆様、誠にありがとうございました。
posted by ブナ at 09:53| 自然観察会

2025年09月20日

只見町ブナセンター自然観察会「渓流が流れるブナ林を楽しむ」開催報告

9月7日(日)に布沢・恵みの森にて、只見町ブナセンター主催の初秋のブナ林観察会「渓流が流れるブナ林を楽しむ」を開催しました。町内外から33名の方が参加されました。観察会では、前日のブナセンター講座「イワナを育むブナの森:森と川のつながりを知る」で講師を務めていただいた河口洋一博士(新潟大学佐渡自然共生科学センター教授)に同行していただき、大滝沢沿いのブナ林を歩きながら、川辺の生態系について解説していただきました。

P9070291.JPG
▲恵みの森のブナ林を観察する


沢の中の倒木により溜まった枝葉は、水生昆虫たちのエサになります。また倒木はイワナの隠れ場所としても機能します。何気ない沢の景色の中にも森、川、生き物の関係があります。

IMG_0275.jpeg
▲渓流の倒木や樹木の役割を話す河口洋一博士


渓流の中には、ブナ、トチノキ、サワグルミ、カエデ類などの大きさ・形などが異なる様々な種類の葉が堆積しています。ブナとカエデの葉を拾い上げ観察してみると、分解の進行具合に違いが見られました。ブナの葉に比べてカエデ類の葉はやわらかいので、葉の分解が速く進んでいます。

P9070308.JPG
▲ブナの葉(左)とカエデの葉(右)


沢の中の落ち葉を網ですくいあげて観察すると、ヘビトンボの幼虫やカワゲラの幼虫、ヤゴなどが確認できました。また、石をめくるとカゲロウの幼虫が張り付いていました。こうした昆虫は、イワナなどの餌として重要です。

P9070328.JPG
▲水生昆虫に興味津々の子供たち

P9070334.JPG
▲ヘビトンボの幼虫


イワナが生育するためには、水温が20℃以下である必要があります。河口博士は水に手を入れて沢の水温が15℃ぐらいと予測をしていました。渓畔林が日光を遮ることにより、渓流の水温が低く保たれています。また渓畔林から沢に落ちる昆虫類も、イワナにとって大切なエサになります。

P9070295.JPG
▲水温を予測する河口博士

P9070340.JPG
▲木漏れ日で輝く沢を歩く参加者


イワナは、沢の淵(流れのゆるい場所)から瀬(流れの速い場所)にかけた場所で穴を掘り産卵をします。淵から瀬のような場所は、流水により酸素が運ばれるため、卵の孵化に適した環境となっています。

P9070370.JPG
▲イワナの産卵環境に重要な瀬と淵の解説


この一見すると、砂粒の塊にしか見えないものの中にはトビケラがいます。夏は陸上からの落ち葉などの供給が少ないため、今回観察した水生昆虫は、サイズの小さい個体が多かったです。これから冬にかけて、落葉が増えることや、落葉により沢に光が差し込み藻類が増えることで、それを食べる水生昆虫が成長していく環境が作られていきます。

P9070407.JPG
▲砂粒で作られたトビケラの巣


まだ暑い日が続きますが、恵みの森の中は水の流れがあり涼やかで、気持ちよく歩くことができました。解説いただいた河口博士、大変ありがとうございました。また、ご参加いただいた皆さまもありがとうございました。またのご参加をお待ちしております。

IMG_0281.jpeg

posted by ブナ at 13:30| 自然観察会