8月1日にブナセンター講座がありました。東北大学大学院教授の中静透氏をお招きし、
「気候変動によって雪国の森林はどのように変わってゆくのか?」という題でお話しいただきました。

講座に来られた方は40人を超えました。東京方面から、日帰りの参加者もいらっしゃいました。
雪国のブナ林の成り立ち、気候変動が植物に与える影響や気候変動への適応策についてお話いただきました。

ブナ林は多雪な日本海側と冬に乾燥する太平洋側で様子が大きく変わってくるそうです。
日本海側では高い木のほとんどがブナですが、太平洋側ではクリやナラなどと混じって生育しています。ブナ林の構成樹種はその地域の最大積雪量が関係し、積雪量が多いほど構成樹種が少なくなります。多雪環境下のブナ林は海外ではあまりみられず、日本特有のものです。
気候変動によって温暖化が進むと、生物の生息適地が気温の低い標高の高い場所や北方に移動します。温暖化による生息適地の移動速度が生物の移動速度を超えた場合その生物は生息数の減少など大きなダメージを受けると予測されています。たとえば、高山植物はそれ以上高いところに移動できません。生息適地が都市などで分断されている場合も移動できないため危機的状況におかれます。
ブナなどの樹木においては温度上昇によって生存適地から外れたからといって、すぐにブナが死にたえる可能性は低いそうです。ブナの寿命は300年ほどあるために生存適地から外れてもすぐに別の樹種に置き換わることは考えにくいからです。
しかし、気候変動そのものは対策をとっても止めることは困難です。そこで気候変動が起こるものと考えて適応策をたてる必要があります。適応策の1つとして保護林と保護林を結ぶ「緑の回廊」が挙げられます。自然度の高い森林同士を「緑の回廊」繋ぐことで植物や野生動物の移動が可能になります。その結果、温暖化による生存適地の移動に伴って動植物が移動できるので、その生態系を維持するために「緑の回廊」は重要な役割を果します。
福島県には全国最大規模の「会津山地緑の回廊」があり、只見町にもその「緑の回廊」があるため重要な役割があります。
今回の講座では、只見町のような雪国のブナ林が現在置かれている現状を確認する良い機会になりました。気候変動は避けられないものと捉え、この後どうなっていくか、どうしていくかを科学的根拠に基づいて決定しなければならないと考えさせられる講座でした。