2016年11月23日

【報告】【ブナセンター講座】2016年10月22日「会津地方のサンショウウオ・カエル類とその生態」

 去る10月22日、吉川夏彦氏(国立科学博物館)にブナセンター講座で講演していただきました。吉川氏は、両生類・爬虫類の専門家で、2014年にタダミハコネサンショウウオを新種として記載されました。
講座では、サンショウウオ類(有尾類)・カエル類(無尾類)の概要と、会津地方に生息するそれぞれの種について詳しくお話しいただきました。

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▲説明する吉川氏と受講者の方々

 会津地方に棲む両生類は、有尾類がアカハライモリ・クロサンショウウオ・トウホクサンショウウオ・ハコネサンショウウオ・タダミハコネサンショウウオ・バンダイハコネサンショウウオの6種、無尾類がモリアオガエル・シュレーゲルアオガエル・カジカガエル・ニホンアカガエル・ヤマアカガエル・タゴガエル・ツチガエル・トノサマガエル・トウキョウダルマガエル・アズマヒキガエル・ニホンアマガエル・ウシガエル(外来種)の12種が生息しており、町内では有尾類はバンダイハコネサンショウウオを除く5種、無尾類ではニホンアカガエル・トウキョウダルマガエル・ウシガエルを除く9種が確認されています。只見町は自然度が高く、また多様な環境があるため多くの種が生息しています。

 各種の説明の際に液浸標本で、それぞれの特徴をじかに確認しました。また、カエルの鳴き声をかくカエルごとに再生しました。カジカガエルの声を聴いて、「鳥の鳴き声かと思った」という参加者の声が聞かれるなど、見たことはあるが鳴き声は聴いたことがないもの、反対に鳴き声は聴いたことはあるが姿は見たことがないものを結びつけることができました。

 サンショウウオの仲間は止水域・流水域など、それぞれ好む環境に違いがあり、それぞれに適した場所に住み分けしているそうです。(ハコネサンショウウオは流水域、クロサンショウウオは止水域に住みます。)また、ハコネサンショウウオの仲間は産卵場所が独特で、沢の湧水のわいている場所の奥の外からは見えないところに産卵するそうです。クロサンショウウオなどは山地の止水域などに産み付けられているものを見ることができます。

 カエル類についても同様で、それぞれに住み分けをしており、只見町内にはトノサマガエルはいるが、トウキョウダルマガエルは生息しておらず、県内ではトウキョウダルマガエルは太平洋寄りに生息しており、境界線は会津盆地内でくっきりと分かれているそうです。また、ニホンアカガエルも標高などの関係から、町内には生息していないようです。

 町内に生息するモリアオガエルとシュレーゲルアオガエルは、よく似ていますが、それぞれに特徴があります。モリアオガエルは水辺に張り出した木の上や田んぼや池の水際に白い泡状の卵を産みます。対してシュレーゲルアオガエルも同じような卵を産みますが、畔や池の横の土に穴を掘り、そこに産卵するため、卵を見かけることは少ないそうです。この2種の見分け方としては、虹彩(瞳孔の周り)の色が赤みがかっているのがモリアオガエルで、黄色いのがシュレーゲルアオガエルだそうです。また、モリアオガエルの方がシュレーゲルアオガエルより大きく育つのも特徴です。

 これまで、ハコネサンショウウオは全国に広く分布すると考えられていましたが、吉川氏が詳しく調査するうちに、実は多くの種に分けられることが解ったそうです。そして、只見町ではタダミハコネサンショウウオの発見につながったそうです。また、会津地方北部にはバンダイハコネサンショウウオが生息していますが、これは只見にはいません。また、ハコネサンショウウオとバンダイハコネサンショウウオは競合するため、同じ地域には生息していませんが、タダミハコネサンショウウオはハコネサンショウウオと競合することなく生息しています。とても興味深いですね。

 今回の講座には、26名の方が参加くださいました。講座では只見に生息する両生類の多さから、只見の自然の豊かさを再認識することができ、また、それぞれの種がどういった環境を好み、どのような生態を持つのかを知ることができました。これらの小さな生き物たちは、私たちの身近な場所から、簡単には行けないような山奥に行かなければ出会えないものまで様々です。これらの生き物たちがこれからも絶えることなく生きていける事、そういった里の環境、山の環境を守っていけたら素晴らしいと感じました。


posted by ブナ at 15:01| Comment(0) | ブナセンター講座

2016年08月11日

ブナセンター講座「只見地域で見られるカミキリムシとその生態」

7月30日(土)にブナセンター講座を行いました。遅くなりましたが、ご報告をします。

講師の槇原寛氏は、森林総合研究所の研究員をされていました。昆虫の、特にカミキリムシの分類をご専門とされています。只見町では、ユネスコエコパーク事業のひとつである自然環境基礎調査として、2014年から2015年にわたって槇原氏に只見町の昆虫相の調査をしていただきました。開催中の企画展では、その成果をもとに展示をしています。講座では、調査によって明らかとなった只見町の昆虫相の特徴をカミキリムシなど甲虫を中心にお話いただきました。

槇原氏は、喉のガンで手術をしており、声を出すことができません。調査をサポートしてきた役場総合政策課の中野陽介さんが、槇原氏の作成したスライドを読み上げる形で進めました。

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はじめにカミキリムシの一般的な生態の特徴について、説明がありました。日本にはホソカミキリムシ科とカミキリムシ科がいて、760種が知られています。カミキリムシの特徴は、触角が長いこと。この触角は、におい物質を拾うための器官で、繁殖相手や食物、産卵場所を見つけるのに役立ちます。また、つかむとギーギーという音を出します。これは口で発声しているのではなく、体をこすり合わせて出しているそうです。そして大あごの形態は、食物の違いや、産卵環境(産卵の際に樹皮を加工するかどうか)の違いを表しているとのことでした。豊富な写真を用いて、カミキリムシに様々な食性があること、カミキリムシの擬態(においを出す、ハチに似せる、味のまずい虫に似せるなど)について紹介してくださいました。カミキリムシは大きいか小さいかだけでみな同じにように思っていましたが、見て楽しむポイントがはじめてわかりました!

続いて、只見町の昆虫相の特徴や発見された珍しい昆虫について、ご説明くださいました。
ひとつは、カブトムシです。只見町で採集されたカブトムシは、小型のものが多かったそうです。中にはオスなのにほとんど角がないようなものも。これは積雪期間が長いために、成長に費やせる時間が短いからだということでした。幼虫の期間を伸ばすことできちんと大きくなる種類の昆虫もいますが、カブトムシはそれができないのだそうです。

もうひとつは、クワガタムシの種類が多く、豪雪地帯に生息するユキグニコルリクワガタがいる半面、暖地性のネブトクワガタも見られるといった多様性があることです。

ほかに大曾根湿原で見つかった珍しい甲虫や、良好な森林の指標となる昆虫が多いこと、マイマイガの大量発生時にチョウの幼虫を食べる昆虫が増えたことなどが報告されました。只見町の昆虫相の特徴を端的に解説していただき、只見町の自然を理解するすばらしい機会となりました。

26名の方にご参加いただき、ジョークを交えての槇原氏の人柄が表れる講座を楽しみました。

なお、槇原氏の行った研究成果は、ブナセンター紀要No.5にまとめられています。詳しくは▲こちら▲をご覧ください。
posted by ブナ at 12:30| ブナセンター講座

2016年03月18日

ブナセンター講座「葉と花の戦略と絶滅危惧種の保全」

さる3月13日(日)に、鷲谷いづみ氏(中央大学・教授)を講師にお招きし、植物が生き残り、子孫を残すためにとっている方法(戦略)と植物の保全についてお話しいただきました。鷲谷氏は、生態学をご専門とし、実践的な保全生態学研究を行っておられます。かいつまんで内容をご紹介します。

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講演をする鷲谷氏

はじめに植物と動物の違いについてのご説明がありました。植物の特徴として動けないことがありますが、他にも、目や手足の数が決まっている動物とは違って、成長に伴って葉や枝を増やす点が違います。前者をユニタリー生物、後者をモジュール生物と言うそうです。モジュール生物は、例えるとブロックのようなもの。色んな方向に増やしていくことができるので、植物は空間に合わせて柔軟に形を変えることができるのです。

また、ひとつの芽生えから複数の個体(株)ができます。これらは同じ遺伝子を持つので、いわゆるクローン個体です。場合によっては、かなり広い面積をクローン個体が占めることもあり、一見すると大規模群落なのに遺伝的には1個体でしかないこともあるそうです。

次に植物の葉や花の機能について説明がありました。主な機能は、栄養成長、貯蔵、防御、繁殖です。様々な植物が存在しますが、それらの違いはこの機能のバランスを反映しているとのだとか。
また、葉と花の戦略として、葉や枝の配置を柔軟に変える、強すぎる日差しから葉を守るために日中に光合成速度を低下させる昼寝をする、寒い冬は葉を落として安全な場所に栄養分を貯蔵する、花や実の形態で虫や鳥を引きるといったものが紹介されました。

最後に、鷲谷氏が長年研究されてきたサクラソウを中心に、植物を保全する際に必要となる考え方についてお話しいただきました。河川の氾濫や人為的な間伐や採取といった適度な攪乱が生物多様性を高めることや、攪乱後の回復を予測するための要素、花粉や種子を運ぶ動物も含めた保全の必要性など。

参加者からは、植物の生態や保全方法についての疑問についての質問があがりました。鷲谷氏は、それらの質問に丁寧に回答してくださいました。町内外の42名が参加されましたが、参加者からは、わかりやすかった、面白かった、野菜を育てる参考になったという満足の声が聞かれました。

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会場いっぱいの参加者
posted by ブナ at 17:06| ブナセンター講座

2015年12月20日

ブナセンター講座「自然の恵みの活かし方〜今までもユネスコエコパーク登録後も」

12月19日(土)にブナセンター講座を開催しました。

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日本MAB計画委員会委員長の松田裕之氏を講師にお招きしました。日本MAB計画委員会は、ユネスコエコパークへの登録を目指す地方自治体へのアドバイスや登録後の活動の支援を行う専門家集団です。

ユネスコエコパークはユネスコのMAB計画の中で実行されており、始めにユネスコやMAB計画の理念や考え方についてお話しいただきました。ユネスコの事業の核となる理念は「人を育てる」ことにあるそうです。自ら自然を守り、地域の暮らしに生かしていく人を育てることが大切だと松田氏は強調されました。

そして、他国のユネスコエコパークの事例をご紹介いただき、その中から見えてくる只見ユネスコエコパークの特徴をご説明くださいました。まず、組織と管理体制が整っている点、調査研究が実行されている点、ほかに移行地域が緩衝地域に囲まれているという特徴が指摘されました。

ユネスコは、BR(日本国内ではユネスコエコパークとしています)登録地間の交流を重視しています。2013年に只見町において第1回日本ユネスコエコパークネットワーク会合が開かれましたが、このような国内ネットワーク会議を行っている国は日本だけという事です。登録地では、ユネスコエコパークに登録されたことで築かれる登録地間や科学者、企業、都市域とのネットワークや交流を使いこなすことで、地域を活性化することが提言されました。只見町ユネスコエコパークについて改めて考える機会となりました。

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posted by ブナ at 11:47| ブナセンター講座

2015年12月07日

ブナセンター講座「自然の恵みの活かし方−今までもユネスコエコパーク登録後も−」および企画展「只見町の生物多様性を考える」を開催します。

只見町ブナセンターでは、自然環境に関する専門家をお招きして年に数回のブナセンター講座を開催しています。昨年、只見町がユネスコエコパークに登録されたことをうけて、今回の講座では横浜国立大学大学院の松田裕之教授をお招きして、ユネスコエコパークと只見町の自然資源の利用についての講演をしていただきます。興味のある方は、ぜひご参加ください。

演題:自然の恵みの活かし方−今までもユネスコエコパーク登録後も−
日時:12月19日(土)13:30〜15:00
場所:只見町ブナセンター セミナー室
講師:松田裕之 氏(横浜国立大学大学院教授)
【講演要旨】
ユネスコMAB(人間と生物圏)計画は、自然の恵みを末長く生かす地域の取り組みを奨励し、その世界のモデル地域をユネスコエコパーク(生物圏保存地域、BR)に登録しています。来年3月に8年ぶりの第4回世界BR会議がリマで開催され、今後10年間のMAB活動の指針となるリマ行動計画が採択されます。その中でも、地域の自然を知り、守り、育て、末長く使い続ける仕組みを考え、その知恵と経験を世界と交流することが謳われています。本講演では、特に只見の特徴を踏まえた自然の恵みの今後の活かし方を皆さんとともに考えてみたいと思います。
※ブナセンター講座の聴講には入館料(大人300円、小中学生200円)が必要です。

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併せて、12月19日(土)より、新しい企画展「只見町の生物多様性を考える」も開催します。企画展では、生物多様性の視点から只見町の自然とそこで暮らす生き物たちを紹介します。こちらもどうぞご覧下さい。

企画展名:「只見町の生物多様性を考える」
期間:2015年12月19日(土)〜2016年2月29日(月)
場所:只見町ブナセンター 2階ギャラリー
※企画展の観覧には入館料(大人300円、小中学生200円)が必要です。

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posted by ブナ at 10:39| Comment(0) | ブナセンター講座