2017年09月29日

ブナセンター講座「只見町の湿原ー植生から見た多様性」

 9月23日に、只見町の湿原をテーマにブナセンター講座を開催しましたので、ご報告します。

 本講座では、只見自然環境基礎調査事業として実施した町内全域の湿原調査をおこなわれた国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所の菊地賢氏を講師にお招きし、調査結果について解説をいただきました。

P9230049.JPG
 ▲講師の菊地賢氏と受講者

 はじめに、一般的な湿原の成立過程や湿原にみられる代表的な植物についてお話を伺った後、調査をおこなった町内7か所の湿原のそれぞれの特徴などについて解説いただきました。
 
本講座には、16名の方が参加し、只見町の湿原とその植生の多様性について理解を深めるとともに、湿原が地域の生物多様性を保全する上で重要な生態系であるため今後も湿原を適正に評価・保全していく必要性を改めて認識することができました。

 湿原調査の結果は、現在2階ギャラリーにて開催しております、特別企画展「只見の湿原ーその生態と歴史」の展示パネルでもご覧いただけます。ぜひ、ご来館ください。


posted by ブナ at 16:39| Comment(0) | ブナセンター講座

2017年07月30日

日本海要素植物のブナセンター講座と自然観察会

7月17日まで開催していた企画展「多雪地帯に生きる 日本海要素植物」に関連し、ブナセンター講座と観察会を行いました。遅くなりましたが、ご報告します。

ブナセンター講座「雪を味方につけた植物たち」 7月15日(土)

本講座では、首都大学東京・牧野標本館の加藤英寿氏に講師をしていただきました。加藤氏は、植物分類、進化、生物多様性などを専門に研究されています。平成25年度の「自然首都・只見」学術調査研究助成を受託し、蒲生岳に生育するツクバネウツギ属の分類を研究され、その成果はブナセンター紀要No.4に掲載されています。

170715-132540_R.JPG
▲講師の加藤英寿氏と聴講者

雪が植物の生育に与える影響や日本海側を中心に分布する植物(日本海要素植物)と太平洋側に分布する対照種との形態的な違い、多雪環境に適応した植物の生理・生態などについて解説していただきました。ハイイヌガヤやエゾユズリハ、ユキツバキ、ヒメアオキなど只見町では身近な植物を主な話題として取り上げていただきました。講座は22名が聴講し、雪という只見町の最も特徴的な自然環境と植物の関係について理解を深めることができました。

自然観察会「夏のブナ林で日本海要素植物を観察しよう!」 7月16日(日)

講座に引き続き、日本海要素植物を観察する自然観察会を「蒲生集落 あがりこの森」(ただみ観察の森)で開催しました。

170716-095943_R.JPG
▲蒲生川沿いの雪食地形も観察しました

「蒲生集落 あがりこの森」は、ブナ林で、林床にはユキツバキやエゾユズリハ、ツルアリドウシといった日本海要素植物が生育しています。ブナセンター講座で講師をしていただいた加藤英寿氏に、ユキツバキの地面を這うような樹形、エゾユズリハの古い葉と新しい葉の色の違いなど、実際の植物を見ながら、その生態や生育環境について解説していただきました。
 
170716-104148_R.JPG
▲日本海要素植物の解説を受ける参加者

また、この森は、かつての真名川集落で薪炭材の採取のために利用しており、その痕跡があがりこ型樹形のブナ、かじご焼きの穴として残されています。

170716-104433_R.JPG
▲あがりこ型樹形のブナ
 
170716-110333_R.JPG
▲かじご焼きの痕跡

町内外の23名が参加し、私たちに身近な日本海要素植物についてあらためて学びました。
posted by ブナ at 12:05| ブナセンター講座

2017年02月04日

座談会「只見町の編む伝統を聞く」

只見町では、身近な植物を材料として、日用品を編む伝統文化が残っています。例えば、マタタビやアケビのツルを使ったザル、ヒロロ(ミヤマカンスゲ)を使ったカゴなどです。ただみ・ブナと川のミュージアムでは、現在、この編む伝統文化をテーマにした企画展「伝統を編む人々〜只見町とボルネオ島と」を開催しています。

今回の座談会では、この企画展に関連して、編む伝統文化を受け継ぐ町内の方を話し手としてお招きし、お話をお聞きしました。

DSC_3884_RR_RR.jpg

編むことを始めて5年、研究熱心な齋藤文良さん
明和民芸品保存会の会長で多様な民具づくりに取り組む馬場敏郎さん
繊細なヒロロのバックを編む佐藤恒雄さん
アケビヅルの皮をむいて手間をかけた丁寧なザルを編む酒井洋子さん
伝統文化を受け継ぐ試みを始めた若手の三瓶こずえさん

 はじめに、話し手の方が作ったカゴやザルを披露しながら、編み始めたきっかけについて伺いました。敏郎さんと恒雄さんは、子どもの頃から縄よりやワラジづくりなどをよくやったそうです。仕事についていた頃はやっていませんでしたが、退職して作ってみっかなと再び始めたそうです。洋子さんは、お舅さんが作っていて、教えてもらったそうです。文良さんは、定年後に、作られたカゴやザルを見てこれならと編むことをはじめ、明和民芸品保存会で先輩に教わっています。こずえさんは、只見町の伝統文化を受け継ぎたいと様々な試みを始めています。

この会に参加したのは、町内を中心に22名でした。ツル細工などをされる方も多く、質問はありますかと聞くと、次から次へとたくさんの質問が出ました。材料となる植物を採る時期、質の良い材料の見分け方、材の加工や保存方法、ザルやカゴの使い方などなど。実際に作っている方からしか聞けない貴重なコツを教えていただきました。

DSC_3868_RR.jpg

最後に、話し手のみなさんにこれからやりたいことなどを伺いました。文良さんは、民芸品保存会の仲間を増やしたい、ゆくゆくは只見町全体がひとつになって民芸品作りを盛り上げ、ユネスコエコパークの一環として町外に発信していきたいという意気込みを話してくださいました。敏郎さんからは、昔は編む技術は「見て習え」で教えてもらえなかったが、民芸品保存会として後継者の育成のために惜しげなく技術を伝えていきたいというお言葉をいただきました。恒雄さんは、覚えたいという人たちをしっかりと育てていきたい。洋子さんからは、教えるのは無理だが、編み続けていきたい、アケビヅルで遊びたいとおっしゃっていました。こずえさんからは、町内で活動するまたたび屋の紹介がありました。町内には現在、明和民芸品保存会、朝日マタタビクラブ、只見民芸品保存会、またたび屋の4つのグループがあり、冬期を中心に活動しています。それぞれのグループで新しい人の加入を積極的に受け入れています。

会場全体がひとつとなって、座談会を盛り上げてくださいました。参加者からは、面白かった、よかったとのお声をいただき、充実した座談会となりました。
posted by ブナ at 11:23| ブナセンター講座

2016年12月11日

ブナセンター講座[ 豊かな熱帯林が支えるボルネオ先住民の暮らしと文化 〜ラタンのカゴ編みを通して〜」

 この日、只見町ではいよいよ雪が積もりはじめました。しんしんと降り続く雪の中、ボルネオ島の熱帯林と伝統文化をテーマとしたブナセンター講座を行いました。

 講師の竹内氏は、生命力あふれる熱帯林に惹かれて、ボルネオ島での調査を始めたそうです。毎年、2か月にわたる現地調査に行くとのこと、とても体力が必要なのだそうです。生態学を専門とし、動植物の共存や木本植物が一斉開花するメカニズムを研究されています。現在では、国立環境研究所に所属し、熱帯林の減少や人々と森との関係性についても研究テーマを広げています。

DSC_3226_RR.jpg

 はじめにボルネオ島と先住民の暮らし、続いてラタン、原生林『プラウ』の動植物、熱帯林の開発の順にお話しいただきました。

ボルネオ島には40の民族がいますが、竹内氏が調査を行っているイバンの人々の熱帯林を利用した暮らしが紹介されました。イバンの人々は、わかっている範囲で250種もの植物を区別し、木材、食べ物、燃料、薬、儀礼など様々な用途に用いています。その中でラタンは、日用品を編む材料としても使われます。

 ラタンは、日本では籐(トウ)と呼ばれてイスの材料やカゴなどのクラフトの材料として用いられています。熱帯に生育するツル植物の総称で、ボルネオ島では150種ほどが知られており、ツルにある鋭いトゲをまわりの高木にひっかけて高いところまで上っていくのだそうです。ラタンの種類を使い分けることで、漁労道具、農作業道具、ザル、運搬用具など日常に必要な様々な道具をつくりだします。

 生活に用いる様々な植物は『プラウ』で採取します。プラウは、極力伐採しないよう村で取り決めた森のことで、原生に近い状態で維持されています。そのため、絶滅危惧種に残された貴重な生育地ともなっています。プラウに生息する私たちにとっては珍しい動物たちを、現地で撮影した動画を用いて紹介していただきました。

 熱帯林は、開発による伐採とオイルパーム造成地の建設により、危機に直面しています。いくつかの村を調査したところ、3分の1がプラウを失ったことがわかりました。採集地であるプラウがなくなったことで、ラタンを使う文化も変化し、材料を購入や輸入に頼り、採取する文化はすたれつつあるそうです。編む文化については、ラタンのカゴがお土産品として人気があることから、残っていくのではないかということでした。最後に、ボルネオ島で産出された資源は私たちの身近で使われており、違法に採取されたものが混ざっている可能性が指摘されました。イバンの人々が住むサラワク州で産出された木材の6割が日本に輸入され、合板として用いられているそうです。

 会場からは、原生林に回復するまでの年数や資源の枯渇について、イバンの人たちが住むロングハウスと呼ばれる長屋の歴史、編む技術がどのように継承されたかなど質問が出ました。伝統的には母から子へと編む技術が伝えられていたそうですが、これは義務ではなく、編むことが好きな人や手が器用な人たちが伝え、広めたということです。町内をはじめ35名の方が聴講され、遠く離れた熱帯林で継承された、只見町と同じ自然を利用する伝統文化について知識を深めました。

 セミナー室での講座後、企画展示室に移動し、展示してあるラタンのカゴやパネルなどの前で、竹内氏に展示解説をしていただきました。竹内氏は参加者の質問に丁寧に答えてくださり、和やかな会となりました。

IMGP1476_RR.jpg
posted by ブナ at 17:00| ブナセンター講座

2016年12月06日

【ご案内】ブナセンター講座 12月10日(土)

今週末のブナセンター講座をお知らせします。

タイトル:「豊かな熱帯林が支えるボルネオ先住民の暮らしと文化
        ーラタンのカゴ編みを通して」
日時:2016年12月10日(土曜日) 13:30〜15:00
講師:竹内やよい氏(国立環境研究所)
会場:ただみ・ブナと川のミュージアム セミナー室
*講座の聴講にはブナセンター入館料が必要です。大人300円、小中学生200円

雪深い只見町と熱帯のボルネオ島とは、自然環境が大きく異なります。しかし、身近な自然から採取した植物を用いて身の回りの物を手作りするという、共通の伝統文化があります。植物を編む文化を通した、自然とともに暮らす人々の知恵と自然の恵みについて、ボルネオ島の熱帯林と先住民の暮らしを研究する竹内氏にお話いただきます。

詳細はこちらをご覧ください。
http://www.tadami-buna.jp/event.html#boruneosenjuuminnokurasitobunaka

このブナセンター講座は現在開催中の企画展の一環として行います。企画展も併せてご覧ください。
企画展「伝統を編む人々 −只見町とボルネオ島と」
2017年 2月 13日 (月)

 只見町では、様々な自然物を用いた生活用品の自家生産がごく近年まで行われていました。しかし今、生活用品を自分で作ることのできる人はごくわずかです。生活用品を作りだす技術と自然の恵みを活用する知恵は、長い年月をかけて先人が築いてきたもので、一度失われてしまえば、再び手にすることは困難です。この企画展では、只見町の伝統であるカゴやザルを編む文化をとりあげます。その種類や特徴、そしてこの文化がどのように受け継がれてきたのかを見ていきます。また、同様に日用品を編む文化が残るボルネオ島の先住民イバンの人々のくらし、材料となるラタン(籐)、ラタンの民芸品、ラタンを育む生物多様性について紹介します。植物を編む伝統文化の継承について考えます。 

後援:国立研究開発法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター
http://www.nies.go.jp/biology/pr/ev/index.html
posted by ブナ at 10:42| Comment(0) | ブナセンター講座