2019年11月23日

ブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」


 2019年11月16日(土)に元福島県立博物館専門学芸員の竹谷陽二郎氏を講師にお招きし、ブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」を開催しました。この講座は現在行われている企画展「只見の地形と地質」に関連したものです。

 はじめに、竹谷氏は只見の地形を特徴ごとにいくつかのカテゴリーに分け、それぞれの地形がいかなる地質によって構成されているのかを説明されました。


 山地地形として起伏が600m以上の大起伏山地は、只見町では伊南川および田子倉ダムより南の奥地に主に分布しており、会津朝日岳(1,624m)や丸山岳(1,820m)などの山が連なっています。これらの地形はジュラ紀に形成された泥岩やチャートなどの古く硬い岩石によって構成されており、山地の尾根の延びの方向が地層の延びとおおむね一致しています。


 起伏量が400〜600mの中起伏山地は、只見町南部の大起伏山地の周囲を取り巻くように分布している一方で、只見町北部や金山町境界部、さらに北西部の叶津川流域にも分布が見られます。しかし、その地質構成は北部と南部で異なっており、北部は新第三期中新世に噴出した比較的硬質な流紋岩や玄武岩の溶岩で構成され、南部は白亜紀に貫入した花崗岩や、新第三紀前期中新世の滝沢川層の凝灰岩により構成されています。


 小起伏山地(起伏量200〜400m)は、伊南川流域や只見川沿い、蒲生川と真名川流域などの各河川流域のほか、只見町東部の小林・梁取・布沢地域で確認されます。その地質構成は多様であり、中期〜後期中新世前期に堆積した凝灰岩・泥岩・砂岩など比較的軟質な岩石のほか、後期中新世後期の溶結凝灰岩や、布沢堆積盆などによって構成されています。


 こうして地形と地質の関連を捉えると、只見町では起伏量が多い地形は古く硬い地質によって構成されており、逆に起伏量が少ない地形は比較的やわらかい地質によって構成されていることがわかります。只見町の地形と地質はある程度分布ごとに一致する傾向があることが特徴です。しかし竹谷氏によれば、必ずしも地形と地質構造が一致するわけではなく、一致しない事例も確認されているとされます。


 山地に対して、只見町の平地は只見川と伊南川に沿って分布しておりますが、伊南川は只見町に入り流向を北から西北西に変化します。この流向の変化にも地質が影響を及ぼしており、竹谷氏はその地域が西北西―東南東方向の軸をもつ沈降帯であったことと、その方向をもつ伊南川断層による破砕帯に沿って流れたためだという推測を紹介されています。只見川と伊南川流域の低地には、大きく4段の段丘面が確認されており、大地が隆起した結果として段丘が形成されるため、高い段丘面ほど古い地層によって形成されています。

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▲只見町の地形・地質について説明する竹谷氏

 さらに、竹谷氏は地層の岩相や化石の証拠などから推定できる地層の年代と堆積環境、すなわち只見の大地の成り立ち(地史)を解説されました。只見地域の地史は時系列順に6つの時期区分が設けられています。その区分は古い順に次のように分けられます。

@付加体の形成(ジュラ紀):只見の大地の基盤をなす檜枝岐層群が海底で形成された時代

A花崗岩マグマの貫入(白亜紀後期):大規模な火成活動により花崗岩マグマが基盤岩分布地域に貫入した時代

Bグリーンタフ堆積盆の形成と分化(前期中新世〜中期中新世前期):海底火山活動により只見地域の滝沢川層・大塩層・小川沢層が堆積した時代

C布沢堆積盆の形成(中期中新世後期〜後期中新世前期):只見地域の布沢層・松坂峠層が堆積し、海が後退した時代

Dカルデラ火山の誕生(後期中新世後期):只見地域の南会津層(駒止峠層)・八塩田層が堆積し、只見地域が完全に陸化した時代

E第四紀火山と段丘の形成(第四紀):浅草岳などの火山と、只見川・伊南川沿いの河岸段丘が形成された時代


 竹谷氏は、まだ十分な解明が進んでいない只見地域の地質の特徴として、布沢層から産出される樹木の葉っぱなどの化石の存在を挙げています。布沢層上部は水深150〜200mの内湾の海底のような環境で堆積した地層ですが、なぜ深い海で堆積した地層で葉っぱの化石が見つかるのでしょうか?竹谷氏は推測の一つとして、洪水などで葉っぱが水に浮かばずに沈み、そこからゆっくりと海の底へ落ちていったのではないか、という説明を挙げましたが、非常に不思議で興味深い事象だとお話しされました。

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▲聴講する参加者の様子


 上記の説明をふまえ、最後に以下のまとめが行われました。

1.只見地域の地形は、地層の岩相や地質構造が強く反映されている。
2.只見地域の大地は、およそ3億年にわたる時を経て形成された。
3.只見地域の大地の成り立ちは、東北地方日本海側を代表するものである。
4.地層・岩石・化石や地形など大地の貴重な遺産がよく保存されている。
5.地形・地質遺産の中には、他の地域には見られないユニークなものが多々ある。

 その後、参加者から様々な質疑が寄せられ、活発的な議論が行われました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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▲竹谷氏に質問をする参加者

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2019年06月07日

6月30日(日)「河野昭一先生企画展」開催記念講演会のご案内

現在、只見町ブナセンターの附属施設 ただみ・ブナと川のミュージアムでは、特別企画展「植物学者 河野昭一の世界 その生涯と只見」を開催しています。この企画展に関連して、2019年6月30日(日)に「河野昭一先生企画展」開催記念講演会 只見のブナ原生林は世界の宝 を、季の郷湯ら里 コンベンションホール「ゆきつばき」にて催します。

本講演会では、河野先生と深い縁があった関係者をお招きして、講演や座談会、自然観察会を開催します。
講演や座談会では、河野氏のこれまでの業績を評価し、その活動や人柄について紹介していただきます。

詳しい内容につきましては、下記のURLより只見町ブナセンターのホームページをご覧ください。
http://www.tadami-buna.jp/event.html#kouen

なお、自然観察会につきましては、事前申し込みが必要です。
ぜひ皆様お誘い合わせのうえ、お越しください。

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2018年07月05日

ブナセンター講座「工芸―自然と人をつなぐものづくり」

気温が30度を超える真夏日になることもあり、すっかり夏の到来を感じます。

7月1日(日)にただみ・ブナと川のミュージアム セミナー室でブナセンター講座を開催しました。
今回は福島県立博物館専門学芸員の小林めぐみ氏をお招きして、「工芸―自然と人をつなぐものづくり」というタイトルで行いました。

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小林氏は喜多方の漆掻き職人さんの作業の様子を見た際に、”工芸は自然から分けてもらっているものだ”という気づきがあったそうです。そこから、自然と人との関わりについて福島県内の工芸品と産地の事例を交えながらお話がありました。
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講演の途中、現在ブナと川のミュージアム2階ギャラリーで行われている企画展アーカイブ「只見の手工芸」の会場に移動し、ギャラリートークが行われました。
参加者の方から積極的に質問が出たり、講師の方から町民の方に質問がされたりしました。

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その後セミナー室に戻り、講演の後半では、伝統的なものづくりや文化を残し、伝える方法のひとつとしてアートプロジェクトの紹介がされました。小林氏が携わった福島県内で行われたアートプロジェクトの中で、アーティストが地域に入り、それぞれの視点で地域の伝統文化やものづくりを発信した様子を知ることができました。

また、講演の中では自然の恵みを活かしながら、雪降る冬の間に手仕事をする只見地域の伝統的な暮らしの豊かさについても触れられました。そういった文化、暮らしを継承し、知らない人にむけて発信して欲しい、ぜひ手本となっていってほしいというお話がありました。

講座には約30名の方が参加され、漆掻きの映像やプロジェクトの紹介を皆さん興味深くご覧になっていました。
自然と人とが共生する社会を目指すユネスコエコパークの理念と繋がるお話が多くあり、只見ユネスコエコパークの推進拠点であるブナセンターにとっても非常に参考になるご講演でした。

引き続きブナと川のミュージアム2階ギャラリーでは企画展アーカイブ「只見の手工芸」を開催しています。みなさまぜひお越し下さい。

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2018年04月02日

ブナセンター講座「野生動植物を守るために−生物多様性保全の科学と社会学」

いよいよ新年度がスタートしました!「ただみ・ブナと川のミュージアム」は平成21年10月にオープンし、今年9回目の春を迎えることになります。「ふるさと館田子倉」は平成28年11月にオープンしました。まだまだ成長段階のふたつの施設ですが、今年度もますます充実した活動ができるよう頑張りますので、応援をよろしくお願いします!

さて、年度末も押しせまった3月31日にブナセンター講座を開催しましたのでご報告します。

講師は、福島大学共生システム理工学類・教授の黒沢高秀氏です。黒沢氏は植物分類学および生態学を専門とし、特にアジア産トウダイグサ科の分類について研究されています。また、福島県内各地で植物相の調査を行っています。その成果を県内の自然環境の保全活動に活用し、2017年に公表された福島県のレッドリストの改訂にも関わられました。そのほか、地域の人たちに自然について知ってもらう活動にも取り組んでおられます。

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講座は、はじめに生物多様性保全の基礎的な知識についてお話しいただき、続いて自然環境を保全するための基本的な考え方について県内外の具体的な事例を取り上げて解説していただきました。最後に、只見町において、自然環境を保全していくために注意する点などについてまとめてくださいました。

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問題を出して参加者に考えさせるなど、参加者自身が能動的に考えることができるよう工夫してお話をしてくださいました。講座には、26名の方が参加し、自然環境を保全していくための考え方について改めて認識する機会となりました。

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2017年09月29日

ブナセンター講座「只見町の湿原ー植生から見た多様性」

 9月23日に、只見町の湿原をテーマにブナセンター講座を開催しましたので、ご報告します。

 本講座では、只見自然環境基礎調査事業として実施した町内全域の湿原調査をおこなわれた国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所の菊地賢氏を講師にお招きし、調査結果について解説をいただきました。

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 ▲講師の菊地賢氏と受講者

 はじめに、一般的な湿原の成立過程や湿原にみられる代表的な植物についてお話を伺った後、調査をおこなった町内7か所の湿原のそれぞれの特徴などについて解説いただきました。
 
本講座には、16名の方が参加し、只見町の湿原とその植生の多様性について理解を深めるとともに、湿原が地域の生物多様性を保全する上で重要な生態系であるため今後も湿原を適正に評価・保全していく必要性を改めて認識することができました。

 湿原調査の結果は、現在2階ギャラリーにて開催しております、特別企画展「只見の湿原ーその生態と歴史」の展示パネルでもご覧いただけます。ぜひ、ご来館ください。


posted by ブナ at 16:39| Comment(0) | ブナセンター講座