2025年10月25日(土)、新潟大学名誉教授の箕口秀夫博士を迎え、只見町ブナセンター講座を開催しました。参加者は18人でした。講座の内容は森林と動物の相互関係、特にドングリとネズミの関係を例に動物が森林に与える影響についての話を中心に進みました。
冒頭では、ドングリを含む堅果類の特徴を種子の大きさや栄養価の観点から説明いただいたのち、堅果類の防衛戦略(食べられないための戦略)について解説をしていただきました。
実が大きく、栄養価も高い堅果類はネズミやリス、ツキノワグマなど多くの動物の貴重な食糧になっています。しかし、全ての種子を食べられてしまうと堅果類をつける樹木は世代交代が出来ずに困ってしまいます。そこで、堅果類は動物に食べられないために様々な工夫を身に着けています。例えば、ドングリに含まれるタンニンという物質の存在が挙げられます。ネズミにドングリを餌として与え続けると、普通の飼料を与える場合に比べて死亡率が高くなるという実験結果があるそうです。毒性は低いけれども食べ続けると効いてくる、少しは食べてもらうけど、食べられすぎないようになっているとのことです。
このように植物側は毒性の獲得により食べられないための戦略を身に着けますが、動物側も毒を無毒化できるよう腸内細菌を獲得するなど適応していきます。箕口博士は今現在も植物と動物の攻防は絶えず続いており、注意深く観察するとその進化・適応の過程を目の当たりにできるかもしれないと仰っていました。
次に、ドングリの種子散布におけるネズミの役割について、箕口博士の過去に行った研究などをもとに解説をしていただきました。
森の中にドングリを用意し、それを自動撮影カメラで観察するとやはりネズミが現れます。しかし、ネズミの多くはドングリをその場で食べることなく、虫食いの有無などを見定めた後、どこかへ運んで行きます。持ち去られたドングリを探すと地面に埋められた状態で発見されます。これはネズミの貯食行動というものです。調査の結果、この貯食行動はネズミの移動性によって特徴が異なることが判明したそうです。
定住性が強いメスのネズミは、持ち去ったドングリを自分の巣穴など、比較的近く、かつ集中的に、そして比較的深い位置に貯蔵します。一方、移動性の強いオスの場合は、比較的遠くに分散して、比較的浅い位置にドングリを貯蔵します。また、貯蔵された後のドングリを調査すると、定住性が強いメスが持ち去ったものは巣穴の中、もしくは近いところにあるのでたくさん食べられてしまいます。食べ残されたとしても比較的深い位置に埋められているため、発芽できるドングリは少なくなってしまいます。一方、移動性の強いオスが持ち去ったものは分散されているが故に放置される割合が多く、浅い位置に埋められているため発芽率も高くなります。
このように、移動性の強いオスのネズミがより効果的にドングリの種子散布の役割を果たしているという結果が明らかになりました。また、植物側の結実の豊凶やタンニンによる毒性などの戦略が、ネズミの一連の行動に少しずつ影響を与えて堅果類とネズミの関係性ができていると箕口博士はご説明されました。
最後に、箕口博士は森づくりに関してネズミの働きから学ぶことは多い。ドングリとネズミの関係性を通して、今一度ドングリと自分たちとの関係性、そして森づくりについて見つめてもらいたい、と仰っていました。
箕口先生、貴重なお話をありがとうございました。聴講下さった皆様にも御礼申し上げます。
2025年11月13日
講座「どんぐりコロコロどこへ行く〜堅果類の散布様式〜」開催報告
posted by ブナ at 09:42| ブナセンター講座
2025年09月19日
只見町ブナセンター講座「イワナを育むブナの森:森と川のつながりを知る」開催報告
2025年9月6日(土)、新潟大学佐渡自然科学共生センター教授の河口洋一博士を迎え、現在開催中の企画展「豪雪に育まれた豊かな川辺の生態系」に関連して只見町ブナセンター講座を開催しました。参加者は26人で満員御礼でした。講座の内容は、河口博士のご専門である「森と川のつながり」に関する研究等を中心に進みました。

冒頭、河口博士の好きな川魚料理や川魚料理に関わる地域の人たち、川魚料理を知らない昨今の学生たちのエピソード紹介があり、川魚料理を食べることや川に入ることなど本物に触れることも「森と川のつながり」を知る延長上にあると説明されていました。
森と川のつながりとして、渓流の周辺の森林により日射が遮断され、渓流の水温が低く保たれ、イワナなどの渓流魚が生息しやすい環境が形成されていること、また、森林から渓流に供給された落ち葉は、バクテリアが付着した後に水生昆虫により分解される一方で、その過程で落ち葉から染み出した窒素やリンなどの栄養塩類が藻類を育てる栄養源となり、水生昆虫はこの藻類を餌として成長し、羽化した後に陸上の捕食者に食べられるといったことがあることを説明されました。つまり、こうした水域と陸域のエネルギーの行き来があることが河川生態系の特徴ということでした。

次いで、河口博士が実際に行った森と川のつながりに関する調査研究についての紹介もありました。落葉広葉樹林にある河川のほうが草地にある河川よりも落下してくる昆虫の量は多かったこと、しかし、両方の河川に生息する魚類の一匹あたりの昆虫の捕食量は変りませんでした。それはなぜなのか。そこで、河口博士は驚きの実験を行います。50メートルほどの区間の川をビニールハウスで覆い、ビニールハウスで覆わなかった川とで落下昆虫と生息する魚類の量の違いを比較したのです。その結果、ビニールハウスで覆った川では落下昆虫と魚類の両方の量が減少しました。落下昆虫の多い河川環境ほど、生息する魚類も多いということが言えたのです。森林、河川、昆虫、魚類の関係をきれいに明らかにした研究事例でした。
また、北海道でイワナよりも冷涼な環境に生息しているオショロコマという魚を事例に、地球温暖化とダム構造物が魚類の生育と繫殖にどのような影響を与えているかを調べる20年以上の長期調査研究のお話をしてくださいました。知床半島の河川には低ダム群工法によるダムが数多くあり、これにより河川幅が広くなり、水深が浅くなり、流速も遅くなり、水温が上昇しやすい環境となってします。半島の東西で環境の違いはあるものの、ダム密度が高い河川ほど水温が高い傾向にあり、そうした河川ではオショロコマの数が少ないばかりでなく、稚魚がいなくなり、再生産がうまくいっていない可能性がでてきたとのことでした。こうした長期調査研究を通して、森と川のつながりに対する長期的な影響も明らかになるのではないかと河口博士はおっしゃいました。
質疑応答の後、最後に川口博士は身近な環境へ関心を持ち、生き物の世界を知り、視野を広げることが大切であると伝えられました。

森と川、生き物のつながりは漠然と知っているつもりでしたが、きちんとした科学的データに基づいて説明してくださり、目から鱗が落ちる思いでした。河口先生、貴重なお話をありがとうございました。
聴講下さった皆様にも御礼申し上げます。
冒頭、河口博士の好きな川魚料理や川魚料理に関わる地域の人たち、川魚料理を知らない昨今の学生たちのエピソード紹介があり、川魚料理を食べることや川に入ることなど本物に触れることも「森と川のつながり」を知る延長上にあると説明されていました。
森と川のつながりとして、渓流の周辺の森林により日射が遮断され、渓流の水温が低く保たれ、イワナなどの渓流魚が生息しやすい環境が形成されていること、また、森林から渓流に供給された落ち葉は、バクテリアが付着した後に水生昆虫により分解される一方で、その過程で落ち葉から染み出した窒素やリンなどの栄養塩類が藻類を育てる栄養源となり、水生昆虫はこの藻類を餌として成長し、羽化した後に陸上の捕食者に食べられるといったことがあることを説明されました。つまり、こうした水域と陸域のエネルギーの行き来があることが河川生態系の特徴ということでした。
次いで、河口博士が実際に行った森と川のつながりに関する調査研究についての紹介もありました。落葉広葉樹林にある河川のほうが草地にある河川よりも落下してくる昆虫の量は多かったこと、しかし、両方の河川に生息する魚類の一匹あたりの昆虫の捕食量は変りませんでした。それはなぜなのか。そこで、河口博士は驚きの実験を行います。50メートルほどの区間の川をビニールハウスで覆い、ビニールハウスで覆わなかった川とで落下昆虫と生息する魚類の量の違いを比較したのです。その結果、ビニールハウスで覆った川では落下昆虫と魚類の両方の量が減少しました。落下昆虫の多い河川環境ほど、生息する魚類も多いということが言えたのです。森林、河川、昆虫、魚類の関係をきれいに明らかにした研究事例でした。
また、北海道でイワナよりも冷涼な環境に生息しているオショロコマという魚を事例に、地球温暖化とダム構造物が魚類の生育と繫殖にどのような影響を与えているかを調べる20年以上の長期調査研究のお話をしてくださいました。知床半島の河川には低ダム群工法によるダムが数多くあり、これにより河川幅が広くなり、水深が浅くなり、流速も遅くなり、水温が上昇しやすい環境となってします。半島の東西で環境の違いはあるものの、ダム密度が高い河川ほど水温が高い傾向にあり、そうした河川ではオショロコマの数が少ないばかりでなく、稚魚がいなくなり、再生産がうまくいっていない可能性がでてきたとのことでした。こうした長期調査研究を通して、森と川のつながりに対する長期的な影響も明らかになるのではないかと河口博士はおっしゃいました。
質疑応答の後、最後に川口博士は身近な環境へ関心を持ち、生き物の世界を知り、視野を広げることが大切であると伝えられました。
森と川、生き物のつながりは漠然と知っているつもりでしたが、きちんとした科学的データに基づいて説明してくださり、目から鱗が落ちる思いでした。河口先生、貴重なお話をありがとうございました。
聴講下さった皆様にも御礼申し上げます。
posted by ブナ at 10:19| ブナセンター講座
2024年12月06日
11/30 ブナセンター講座「マタギの里でしな布を織る」開催報告
11月30日(土)ただみ・ブナと川のミュージアムにて、現代美術家・しな布(ふ)作家である大滝ジュンコさんを講師に企画展関連講座を開催しました。


大滝ジュンコさんは新潟県村上市の山熊田集落に暮らし、自ら山ではいだシナノキの皮を使って、日本最古の織物であるしな布を作られています。新潟県村上市と山形県鶴岡市の県境付近で作られるしな布は特に「羽越(うえつ)しな布」として有名で、経済産業省の伝統的工芸品に認定されています。現在は帯などの高級嗜好品として流通していますが、昔は道具として使われていたそうです。
講座では、9年前に山熊田に移住し、滅びる寸前のしな布の技術を引き継ぐことになった経緯や、採集や狩猟など山との生活が未だ色濃く残る山熊田集落の伝統的な文化、集落全員で助け合う結の暮らしについて教えていただきました。

また、しな布について、原料となるシナノキの種類や、皮の採集、灰汁と熱を利用した内樹皮の取り出し方や、糸積(う)みと呼ばれるしな糸を製作して織り上げるまでの一連の工程を解説いただき、超絶技巧の連続に聴講された皆さんからは感嘆の声があがりました。
その他、伝統的なものづくり業界においては全国共通の課題ともなっている後継者不足や、採算性の問題、技術継承と移住との兼ね合いなどについて独自の経験から解説されました。
講座の途中には実際にしな布の帯を触れる時間もあり、参加者の皆さんはその繊細な技術に感動したり、20年前に村上市で購入したしな布のバッグを持参される方がいらっしゃったりと終始和気あいあいとした雰囲気で進みました。


大滝さんは最後に、ライフスタイルも変化し時代の過渡期にある現代においても、ネットでは伝わらない生の技術があり、失われたら取り戻せない貴重な技術を未来につなげるためには今が正念場であるというお話をされ、会場からは拍手がわきました。
参加された皆様ありがとうございました。
大滝さんは現在、工芸を21世紀に再生させるための日本伝統工芸再生コンテストのファイナリストにノミネートされていらっしゃいます。大滝さんの受賞をご祈念いたします。
大滝ジュンコさんは新潟県村上市の山熊田集落に暮らし、自ら山ではいだシナノキの皮を使って、日本最古の織物であるしな布を作られています。新潟県村上市と山形県鶴岡市の県境付近で作られるしな布は特に「羽越(うえつ)しな布」として有名で、経済産業省の伝統的工芸品に認定されています。現在は帯などの高級嗜好品として流通していますが、昔は道具として使われていたそうです。
講座では、9年前に山熊田に移住し、滅びる寸前のしな布の技術を引き継ぐことになった経緯や、採集や狩猟など山との生活が未だ色濃く残る山熊田集落の伝統的な文化、集落全員で助け合う結の暮らしについて教えていただきました。
また、しな布について、原料となるシナノキの種類や、皮の採集、灰汁と熱を利用した内樹皮の取り出し方や、糸積(う)みと呼ばれるしな糸を製作して織り上げるまでの一連の工程を解説いただき、超絶技巧の連続に聴講された皆さんからは感嘆の声があがりました。
その他、伝統的なものづくり業界においては全国共通の課題ともなっている後継者不足や、採算性の問題、技術継承と移住との兼ね合いなどについて独自の経験から解説されました。
講座の途中には実際にしな布の帯を触れる時間もあり、参加者の皆さんはその繊細な技術に感動したり、20年前に村上市で購入したしな布のバッグを持参される方がいらっしゃったりと終始和気あいあいとした雰囲気で進みました。
大滝さんは最後に、ライフスタイルも変化し時代の過渡期にある現代においても、ネットでは伝わらない生の技術があり、失われたら取り戻せない貴重な技術を未来につなげるためには今が正念場であるというお話をされ、会場からは拍手がわきました。
参加された皆様ありがとうございました。
大滝さんは現在、工芸を21世紀に再生させるための日本伝統工芸再生コンテストのファイナリストにノミネートされていらっしゃいます。大滝さんの受賞をご祈念いたします。
posted by ブナ at 15:48| ブナセンター講座
2023年11月15日
講座「雪国只見のトンボたち」開催報告
2023年11月11日(土)、企画展「只見のトンボ」関連講座「雪国只見のトンボたち」をただみ・ブナと川のミュージアム1階セミナー室にて開催しました。町民17名、県内2名、県外4名、計23名の参加がありました。講師は、企画展を担当した指導員・太田祥作(日本トンボ学会会員)が務めました。
講座では、企画展で伝えきれなかったトピックスの数々―トンボの基本的な生態や、只見町を特徴付ける種、町内でも優れたトンボの生息数を誇る水辺環境、そしてトンボを守る意義―について2時間たっぷりと、計100枚のスライドとともに説明しました。また、企画展会場において前日まで投票を募った、町内のトンボ67種(企画展オープン時点での種数。11月現在は69種)の人気投票企画「推しのトンボ」の開票結果も発表しました。
参加者からは活発な質疑があったほか、「面白かった。もっと多くの人に只見のトンボのことを知って欲しい」といった感想を頂戴しました。ご聴講下さった皆様に御礼申し上げます。
posted by ブナ at 15:59| ブナセンター講座
2022年12月03日
12月の講座・観察会のお知らせ
ただみ・ブナと川のミュージアムで開催中の企画展「自然素材を活かす技 〜木地、編み組、草木染めと伝承産品の魅力〜」に関連する講座が12月17日(土)に「只見振興センター」にて催されます。同日には、深沢地区での自然観察会も予定しております。
▼日時:2022年12月17日(土)10:00〜12:00
▼場所:只見振興センター 1階 集会室(只見町只見宮前1390)
▼講師:小林 誠 氏(十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員)
▼参加費:無料
▼日時:2022年12月17日(土)13:30〜15:30
▼集合場所:「季の郷 湯ら里」駐車場(只見町長浜上平50)
▼持ち物:防寒具、ホットドリンク、マスク、スノーシューまたはかんじき
▼参加費:高校生以上400円、小・中学生300円
町内在住の小・中学生および高校生100円(保険料込み)
▼定員:15名(事前予約制 ※締切は12月16日(金))
▼申込み:只見町ブナセンターまで(電話 0241-72-8355)
ぜひ暖かくしてお越しくださいませ。
講座「自然を活かした里山の知を地域博物館で『見える化』する」
▼日時:2022年12月17日(土)10:00〜12:00
▼場所:只見振興センター 1階 集会室(只見町只見宮前1390)
▼講師:小林 誠 氏(十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員)
▼参加費:無料
観察会「冬のブナ林観察会」
▼日時:2022年12月17日(土)13:30〜15:30
▼集合場所:「季の郷 湯ら里」駐車場(只見町長浜上平50)
▼持ち物:防寒具、ホットドリンク、マスク、スノーシューまたはかんじき
▼参加費:高校生以上400円、小・中学生300円
町内在住の小・中学生および高校生100円(保険料込み)
▼定員:15名(事前予約制 ※締切は12月16日(金))
▼申込み:只見町ブナセンターまで(電話 0241-72-8355)
ぜひ暖かくしてお越しくださいませ。
posted by ブナ at 10:22| Comment(0)
| ブナセンター講座