2021年10月29日

只見町ブナセンター講座「ブナを利用する昆虫たち」

 2021年10月23日(土)、只見振興センター1階ホールにて、ブナセンター講座「ブナを利用する昆虫たち」を開催しました。本講座では、福島県内の昆虫相に詳しく、蛾類(特にヤママユガ科)の生態や水生昆虫類を専門とされる、三田村敏正氏(福島県農業総合センター浜地域研究所・専門研究員、只見ユネスコエコパーク支援委員会委員)を講師にお招きし、ブナ林に特徴的な昆虫や只見で記録のある冬虫夏草、最近国内で確認された外来昆虫のことまで幅広くお話いただきました。

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▲講座の様子

 はじめに、三田村氏はブナ科植物や針葉樹各種を食べる鱗翅目(チョウ目)の種数を比較し、ブナを利用する昆虫が他の樹種に比べて比較的少ないことを説明しました。そのため、ブナ林における昆虫相はしばしば単純化するとされます。一方で、ブナ林にはブナのみを食べる種やブナ林を主な生息環境とする種も存在し、三田村氏はその中から代表的な種を取り上げ、それらの生態について解説しました。只見町のブナ林において特徴的な種としては、カンスゲ類の葉を食べるヤスマツケシタマムシが挙げられます。奥会津地域では、カンスゲ類(ミヤマカンスゲやオクノカンスゲ)をヒロロと呼び、干した葉を縒って細長い縄にした後、カゴやミノなどの編み組み細工に使用します。ヤスマツケシタマムシは体長3〜4mmと小さいですが、ヒロロの葉を直線状に食べた痕が白い線として残るため、それが本種を探す手がかりになります。

 次に、三田村氏は冬虫夏草という昆虫やクモから生えるキノコについて紹介しました。成熟したブナ林の中は暗く、地表部の湿度も高いため、冬虫夏草が生える環境として好適とされます。ブナ林が豊富にある只見町では冬虫夏草が多く、これまで30種近く記録されています。昆虫に寄生する冬虫夏草では、ハエ、カメムシおよび甲虫の幼虫、ハチ、トンボなどと幅広い分類群を宿主としており、色や形も様々です。中には新種と思われるものもあり、今後も詳しく調査すれば、さらに種数が増えると思われます。こうした冬虫夏草の豊富さは、宿主となる昆虫やクモ類の多様性の高さを反映していると言えます。

 近年国内で確認された外来種の昆虫については、それらの生態や侵入・拡散の事例とあわせて解説していただきました。今年になって、福島県中通りで発見された外来カミキリムシ2種(ツヤハダゴマダラカミキリとサビイロクワカミキリ、以下カミキリ省略)が、メディアに取り上げられたことは記憶に新しいと思います。いずれも街路樹を食害し、ツヤハダゴマダラは主にトチノキ、サビイロクワはエンジュおよびイヌエンジュを食べることが分かりました。ツヤハダゴマダラは、在来のゴマダラカミキリと見た目がよく似ており、普通種であるゴマダラに見間違えられてきた可能性もあることで、発見が遅れたのかもしれません。これら2種の識別点は、ツヤハダゴマダラは、1)胸部の白い斑紋を欠くこと、2)上翅の前縁部がなめらかであることです。

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▲外来種ツヤハダゴマダラカミキリと在来種ゴマダラカミキリの違いを説明する三田村氏

 ツヤハダゴマダラとサビイロクワは、幼虫・成虫ともに樹木を食べるため、海外から輸入された何らかの樹木(木製のもの)に紛れこんでいたと思われますが、侵入ルートは定かではありません。植物防疫が万全に敷かれた状況であっても、外来種は思いもよらない抜け穴から侵入してきます。そのため、専門家の目をかいくぐって、知らぬ間に在来の生態系に定着しているのです。早期に発見・対策を講じるためには、その土地に住む方々の協力が重要であると、三田村氏は指摘します。常日頃から見ている自然の中で、見慣れない生きものを発見した際は、すぐに博物館施設や詳しい専門家に連絡することが、その後の迅速な対応につながります。

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▲昆虫標本を鑑賞する参加者と解説する三田村氏

 質疑応答の後、参加者は三田村氏が作成された標本を鑑賞しながら、昆虫トークに花を咲かせました。
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 本講座の録画動画は、近日、ブナセンターYouTube公式チャンネル(URL:https://www.youtube.com/channel/UCRfrLUp9Vx3CSs7yatZp-lg?view_as=subscriber)にて公開予定です。
 動画を公開しましたら、改めてお知らせいたしますので、今しばらくお待ちください。
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2021年01月28日

ブナセンター講座「大型哺乳類の生態」見逃し配信の動画を公開

本動画は、2020年12月13日(日)にオンライン講座としてライブ配信したものになります。

本講座は、只見町ブナセンター企画展「改訂版 只見の野生動物とその生態」に関連して行い、早稲田大学名誉教授・只見ユネスコエコパーク支援委員会委員の三浦慎悟氏をお招きし、ツキノワグマの生態や保護保全について解説していただきました。



なお、この動画の著作権は只見町ブナセンターに帰属し、動画の改編や掲載資料の無断転載および転用を禁止します。
ご理解・ご協力をお願い申し上げます。
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2020年12月03日

只見町ブナセンター講座「大型哺乳類の生態」開催のご案内

只見町ブナセンターでは、12月13日(日)に早稲田大学名誉教授・只見ユネスコエコパーク支援委員会委員の三浦慎吾氏をお招きし、大型哺乳類の生態について解説いただきます。
本講座は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、インターネットのライブ動画配信にて開催いたします。

視聴方法につきましては、只見町ブナセンターのYouTubeチャンネルに配信時間内にアクセスし、講座タイトルの動画を開いてください。事前申し込みは不要です。
見逃し配信は、ブナセンターのホームページをご確認いただきますようお願いいたします。

只見町ブナセンターYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCRfrLUp9Vx3CSs7yatZp-lg

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posted by ブナ at 14:39| Comment(0) | ブナセンター講座

2020年02月08日

冬の講座・自然観察会のご案内


 只見町ブナセンターでは、2020年2月29日(土)に元只見町ブナセンター長の鈴木 和次郎 博士を講師にお招きし、講座「雪国只見の地形と樹木、植生の分布」を開催します。本講座では、鈴木氏に日本有数の豪雪地である只見の自然環境や地形に成立する樹木ならびに植生の分布について解説していただきます。

 また、2020年3月7日(土)に自然観察会「蒲生岳裾野のブナ林を観察しよう!」を開催します。この自然観察会は、現在開催中の企画展「只見の山を眺めれば……そこにある樹木に気づく企画展」に関連して開催するものです。蒲生岳の裾野にあるブナ林を中心に、周辺の多様な植生を観察することで、只見町に生育する樹木の特徴をご理解いただければ幸いです。蒲生岳では只見を代表する自然景観である雪食地形が顕著に見られ、植生と立地環境の関係性を観察することができます。 固く締まった雪の上を歩くというこの時期ならではの体験をしていただきながら、 蒲生岳の裾野にあるブナ林をぜひ観察してみてください。

【ブナセンター講座】雪国只見の地形と樹木、植生の分布

開催日:2020年2月29日(土)13:30〜15:30

会場:ただみ・ブナと川のミュージアム セミナー室(只見町只見町下2590番地)

講師:鈴木 和次郎 博士(元只見町ブナセンター長)

※講座の聴講には入館料が必要です (高校生以上300円、小・中学生200円)

お問合せは只見町ブナセンターまで
電話1(プッシュホン)0241−72−8355


【自然観察会】蒲生岳裾野のブナ林を観察しよう!

開催日:2020年3月7日(土)9:15〜13:00

集合:ただみ・ブナと川のミュージアム 9:15(只見町只見町下2590番地)

観察地:蒲生岳周辺

持ち物:飲み物、雨具、長靴、防寒防水機能のある服装、かんじきまたはスノーシュー(貸出あり)

参加費:高校生以上500円、小・中学生400円(保険料を含む)

定 員:30名 ※事前申込が必要です

申込締切:2020年3月5日(木)
※悪天時は中止あるいは時間を短縮することがあります

お申込み・お問合せは只見町ブナセンターまで
電話1(プッシュホン)0241−72−8355


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2019年11月23日

ブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」


 2019年11月16日(土)に元福島県立博物館専門学芸員の竹谷陽二郎氏を講師にお招きし、ブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」を開催しました。この講座は現在行われている企画展「只見の地形と地質」に関連したものです。

 はじめに、竹谷氏は只見の地形を特徴ごとにいくつかのカテゴリーに分け、それぞれの地形がいかなる地質によって構成されているのかを説明されました。


 山地地形として起伏が600m以上の大起伏山地は、只見町では伊南川および田子倉ダムより南の奥地に主に分布しており、会津朝日岳(1,624m)や丸山岳(1,820m)などの山が連なっています。これらの地形はジュラ紀に形成された泥岩やチャートなどの古く硬い岩石によって構成されており、山地の尾根の延びの方向が地層の延びとおおむね一致しています。


 起伏量が400〜600mの中起伏山地は、只見町南部の大起伏山地の周囲を取り巻くように分布している一方で、只見町北部や金山町境界部、さらに北西部の叶津川流域にも分布が見られます。しかし、その地質構成は北部と南部で異なっており、北部は新第三期中新世に噴出した比較的硬質な流紋岩や玄武岩の溶岩で構成され、南部は白亜紀に貫入した花崗岩や、新第三紀前期中新世の滝沢川層の凝灰岩により構成されています。


 小起伏山地(起伏量200〜400m)は、伊南川流域や只見川沿い、蒲生川と真名川流域などの各河川流域のほか、只見町東部の小林・梁取・布沢地域で確認されます。その地質構成は多様であり、中期〜後期中新世前期に堆積した凝灰岩・泥岩・砂岩など比較的軟質な岩石のほか、後期中新世後期の溶結凝灰岩や、布沢堆積盆などによって構成されています。


 こうして地形と地質の関連を捉えると、只見町では起伏量が多い地形は古く硬い地質によって構成されており、逆に起伏量が少ない地形は比較的やわらかい地質によって構成されていることがわかります。只見町の地形と地質はある程度分布ごとに一致する傾向があることが特徴です。しかし竹谷氏によれば、必ずしも地形と地質構造が一致するわけではなく、一致しない事例も確認されているとされます。


 山地に対して、只見町の平地は只見川と伊南川に沿って分布しておりますが、伊南川は只見町に入り流向を北から西北西に変化します。この流向の変化にも地質が影響を及ぼしており、竹谷氏はその地域が西北西―東南東方向の軸をもつ沈降帯であったことと、その方向をもつ伊南川断層による破砕帯に沿って流れたためだという推測を紹介されています。只見川と伊南川流域の低地には、大きく4段の段丘面が確認されており、大地が隆起した結果として段丘が形成されるため、高い段丘面ほど古い地層によって形成されています。

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▲只見町の地形・地質について説明する竹谷氏

 さらに、竹谷氏は地層の岩相や化石の証拠などから推定できる地層の年代と堆積環境、すなわち只見の大地の成り立ち(地史)を解説されました。只見地域の地史は時系列順に6つの時期区分が設けられています。その区分は古い順に次のように分けられます。

@付加体の形成(ジュラ紀):只見の大地の基盤をなす檜枝岐層群が海底で形成された時代

A花崗岩マグマの貫入(白亜紀後期):大規模な火成活動により花崗岩マグマが基盤岩分布地域に貫入した時代

Bグリーンタフ堆積盆の形成と分化(前期中新世〜中期中新世前期):海底火山活動により只見地域の滝沢川層・大塩層・小川沢層が堆積した時代

C布沢堆積盆の形成(中期中新世後期〜後期中新世前期):只見地域の布沢層・松坂峠層が堆積し、海が後退した時代

Dカルデラ火山の誕生(後期中新世後期):只見地域の南会津層(駒止峠層)・八塩田層が堆積し、只見地域が完全に陸化した時代

E第四紀火山と段丘の形成(第四紀):浅草岳などの火山と、只見川・伊南川沿いの河岸段丘が形成された時代


 竹谷氏は、まだ十分な解明が進んでいない只見地域の地質の特徴として、布沢層から産出される樹木の葉っぱなどの化石の存在を挙げています。布沢層上部は水深150〜200mの内湾の海底のような環境で堆積した地層ですが、なぜ深い海で堆積した地層で葉っぱの化石が見つかるのでしょうか?竹谷氏は推測の一つとして、洪水などで葉っぱが水に浮かばずに沈み、そこからゆっくりと海の底へ落ちていったのではないか、という説明を挙げましたが、非常に不思議で興味深い事象だとお話しされました。

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▲聴講する参加者の様子


 上記の説明をふまえ、最後に以下のまとめが行われました。

1.只見地域の地形は、地層の岩相や地質構造が強く反映されている。
2.只見地域の大地は、およそ3億年にわたる時を経て形成された。
3.只見地域の大地の成り立ちは、東北地方日本海側を代表するものである。
4.地層・岩石・化石や地形など大地の貴重な遺産がよく保存されている。
5.地形・地質遺産の中には、他の地域には見られないユニークなものが多々ある。

 その後、参加者から様々な質疑が寄せられ、活発的な議論が行われました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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▲竹谷氏に質問をする参加者

posted by ブナ at 14:35| Comment(0) | ブナセンター講座