2017年02月04日

座談会「只見町の編む伝統を聞く」

只見町では、身近な植物を材料として、日用品を編む伝統文化が残っています。例えば、マタタビやアケビのツルを使ったザル、ヒロロ(ミヤマカンスゲ)を使ったカゴなどです。ただみ・ブナと川のミュージアムでは、現在、この編む伝統文化をテーマにした企画展「伝統を編む人々〜只見町とボルネオ島と」を開催しています。

今回の座談会では、この企画展に関連して、編む伝統文化を受け継ぐ町内の方を話し手としてお招きし、お話をお聞きしました。

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編むことを始めて5年、研究熱心な齋藤文良さん
明和民芸品保存会の会長で多様な民具づくりに取り組む馬場敏郎さん
繊細なヒロロのバックを編む佐藤恒雄さん
アケビヅルの皮をむいて手間をかけた丁寧なザルを編む酒井洋子さん
伝統文化を受け継ぐ試みを始めた若手の三瓶こずえさん

 はじめに、話し手の方が作ったカゴやザルを披露しながら、編み始めたきっかけについて伺いました。敏郎さんと恒雄さんは、子どもの頃から縄よりやワラジづくりなどをよくやったそうです。仕事についていた頃はやっていませんでしたが、退職して作ってみっかなと再び始めたそうです。洋子さんは、お舅さんが作っていて、教えてもらったそうです。文良さんは、定年後に、作られたカゴやザルを見てこれならと編むことをはじめ、明和民芸品保存会で先輩に教わっています。こずえさんは、只見町の伝統文化を受け継ぎたいと様々な試みを始めています。

この会に参加したのは、町内を中心に22名でした。ツル細工などをされる方も多く、質問はありますかと聞くと、次から次へとたくさんの質問が出ました。材料となる植物を採る時期、質の良い材料の見分け方、材の加工や保存方法、ザルやカゴの使い方などなど。実際に作っている方からしか聞けない貴重なコツを教えていただきました。

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最後に、話し手のみなさんにこれからやりたいことなどを伺いました。文良さんは、民芸品保存会の仲間を増やしたい、ゆくゆくは只見町全体がひとつになって民芸品作りを盛り上げ、ユネスコエコパークの一環として町外に発信していきたいという意気込みを話してくださいました。敏郎さんからは、昔は編む技術は「見て習え」で教えてもらえなかったが、民芸品保存会として後継者の育成のために惜しげなく技術を伝えていきたいというお言葉をいただきました。恒雄さんは、覚えたいという人たちをしっかりと育てていきたい。洋子さんからは、教えるのは無理だが、編み続けていきたい、アケビヅルで遊びたいとおっしゃっていました。こずえさんからは、町内で活動するまたたび屋の紹介がありました。町内には現在、明和民芸品保存会、朝日マタタビクラブ、只見民芸品保存会、またたび屋の4つのグループがあり、冬期を中心に活動しています。それぞれのグループで新しい人の加入を積極的に受け入れています。

会場全体がひとつとなって、座談会を盛り上げてくださいました。参加者からは、面白かった、よかったとのお声をいただき、充実した座談会となりました。
posted by ブナ at 11:23| ブナセンター講座

2016年12月11日

ブナセンター講座[ 豊かな熱帯林が支えるボルネオ先住民の暮らしと文化 〜ラタンのカゴ編みを通して〜」

 この日、只見町ではいよいよ雪が積もりはじめました。しんしんと降り続く雪の中、ボルネオ島の熱帯林と伝統文化をテーマとしたブナセンター講座を行いました。

 講師の竹内氏は、生命力あふれる熱帯林に惹かれて、ボルネオ島での調査を始めたそうです。毎年、2か月にわたる現地調査に行くとのこと、とても体力が必要なのだそうです。生態学を専門とし、動植物の共存や木本植物が一斉開花するメカニズムを研究されています。現在では、国立環境研究所に所属し、熱帯林の減少や人々と森との関係性についても研究テーマを広げています。

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 はじめにボルネオ島と先住民の暮らし、続いてラタン、原生林『プラウ』の動植物、熱帯林の開発の順にお話しいただきました。

ボルネオ島には40の民族がいますが、竹内氏が調査を行っているイバンの人々の熱帯林を利用した暮らしが紹介されました。イバンの人々は、わかっている範囲で250種もの植物を区別し、木材、食べ物、燃料、薬、儀礼など様々な用途に用いています。その中でラタンは、日用品を編む材料としても使われます。

 ラタンは、日本では籐(トウ)と呼ばれてイスの材料やカゴなどのクラフトの材料として用いられています。熱帯に生育するツル植物の総称で、ボルネオ島では150種ほどが知られており、ツルにある鋭いトゲをまわりの高木にひっかけて高いところまで上っていくのだそうです。ラタンの種類を使い分けることで、漁労道具、農作業道具、ザル、運搬用具など日常に必要な様々な道具をつくりだします。

 生活に用いる様々な植物は『プラウ』で採取します。プラウは、極力伐採しないよう村で取り決めた森のことで、原生に近い状態で維持されています。そのため、絶滅危惧種に残された貴重な生育地ともなっています。プラウに生息する私たちにとっては珍しい動物たちを、現地で撮影した動画を用いて紹介していただきました。

 熱帯林は、開発による伐採とオイルパーム造成地の建設により、危機に直面しています。いくつかの村を調査したところ、3分の1がプラウを失ったことがわかりました。採集地であるプラウがなくなったことで、ラタンを使う文化も変化し、材料を購入や輸入に頼り、採取する文化はすたれつつあるそうです。編む文化については、ラタンのカゴがお土産品として人気があることから、残っていくのではないかということでした。最後に、ボルネオ島で産出された資源は私たちの身近で使われており、違法に採取されたものが混ざっている可能性が指摘されました。イバンの人々が住むサラワク州で産出された木材の6割が日本に輸入され、合板として用いられているそうです。

 会場からは、原生林に回復するまでの年数や資源の枯渇について、イバンの人たちが住むロングハウスと呼ばれる長屋の歴史、編む技術がどのように継承されたかなど質問が出ました。伝統的には母から子へと編む技術が伝えられていたそうですが、これは義務ではなく、編むことが好きな人や手が器用な人たちが伝え、広めたということです。町内をはじめ35名の方が聴講され、遠く離れた熱帯林で継承された、只見町と同じ自然を利用する伝統文化について知識を深めました。

 セミナー室での講座後、企画展示室に移動し、展示してあるラタンのカゴやパネルなどの前で、竹内氏に展示解説をしていただきました。竹内氏は参加者の質問に丁寧に答えてくださり、和やかな会となりました。

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posted by ブナ at 17:00| ブナセンター講座

2016年12月06日

【ご案内】ブナセンター講座 12月10日(土)

今週末のブナセンター講座をお知らせします。

タイトル:「豊かな熱帯林が支えるボルネオ先住民の暮らしと文化
        ーラタンのカゴ編みを通して」
日時:2016年12月10日(土曜日) 13:30〜15:00
講師:竹内やよい氏(国立環境研究所)
会場:ただみ・ブナと川のミュージアム セミナー室
*講座の聴講にはブナセンター入館料が必要です。大人300円、小中学生200円

雪深い只見町と熱帯のボルネオ島とは、自然環境が大きく異なります。しかし、身近な自然から採取した植物を用いて身の回りの物を手作りするという、共通の伝統文化があります。植物を編む文化を通した、自然とともに暮らす人々の知恵と自然の恵みについて、ボルネオ島の熱帯林と先住民の暮らしを研究する竹内氏にお話いただきます。

詳細はこちらをご覧ください。
http://www.tadami-buna.jp/event.html#boruneosenjuuminnokurasitobunaka

このブナセンター講座は現在開催中の企画展の一環として行います。企画展も併せてご覧ください。
企画展「伝統を編む人々 −只見町とボルネオ島と」
2017年 2月 13日 (月)

 只見町では、様々な自然物を用いた生活用品の自家生産がごく近年まで行われていました。しかし今、生活用品を自分で作ることのできる人はごくわずかです。生活用品を作りだす技術と自然の恵みを活用する知恵は、長い年月をかけて先人が築いてきたもので、一度失われてしまえば、再び手にすることは困難です。この企画展では、只見町の伝統であるカゴやザルを編む文化をとりあげます。その種類や特徴、そしてこの文化がどのように受け継がれてきたのかを見ていきます。また、同様に日用品を編む文化が残るボルネオ島の先住民イバンの人々のくらし、材料となるラタン(籐)、ラタンの民芸品、ラタンを育む生物多様性について紹介します。植物を編む伝統文化の継承について考えます。 

後援:国立研究開発法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター
http://www.nies.go.jp/biology/pr/ev/index.html
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2016年11月23日

【報告】【ブナセンター講座】2016年10月22日「会津地方のサンショウウオ・カエル類とその生態」

 去る10月22日、吉川夏彦氏(国立科学博物館)にブナセンター講座で講演していただきました。吉川氏は、両生類・爬虫類の専門家で、2014年にタダミハコネサンショウウオを新種として記載されました。
講座では、サンショウウオ類(有尾類)・カエル類(無尾類)の概要と、会津地方に生息するそれぞれの種について詳しくお話しいただきました。

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▲説明する吉川氏と受講者の方々

 会津地方に棲む両生類は、有尾類がアカハライモリ・クロサンショウウオ・トウホクサンショウウオ・ハコネサンショウウオ・タダミハコネサンショウウオ・バンダイハコネサンショウウオの6種、無尾類がモリアオガエル・シュレーゲルアオガエル・カジカガエル・ニホンアカガエル・ヤマアカガエル・タゴガエル・ツチガエル・トノサマガエル・トウキョウダルマガエル・アズマヒキガエル・ニホンアマガエル・ウシガエル(外来種)の12種が生息しており、町内では有尾類はバンダイハコネサンショウウオを除く5種、無尾類ではニホンアカガエル・トウキョウダルマガエル・ウシガエルを除く9種が確認されています。只見町は自然度が高く、また多様な環境があるため多くの種が生息しています。

 各種の説明の際に液浸標本で、それぞれの特徴をじかに確認しました。また、カエルの鳴き声をかくカエルごとに再生しました。カジカガエルの声を聴いて、「鳥の鳴き声かと思った」という参加者の声が聞かれるなど、見たことはあるが鳴き声は聴いたことがないもの、反対に鳴き声は聴いたことはあるが姿は見たことがないものを結びつけることができました。

 サンショウウオの仲間は止水域・流水域など、それぞれ好む環境に違いがあり、それぞれに適した場所に住み分けしているそうです。(ハコネサンショウウオは流水域、クロサンショウウオは止水域に住みます。)また、ハコネサンショウウオの仲間は産卵場所が独特で、沢の湧水のわいている場所の奥の外からは見えないところに産卵するそうです。クロサンショウウオなどは山地の止水域などに産み付けられているものを見ることができます。

 カエル類についても同様で、それぞれに住み分けをしており、只見町内にはトノサマガエルはいるが、トウキョウダルマガエルは生息しておらず、県内ではトウキョウダルマガエルは太平洋寄りに生息しており、境界線は会津盆地内でくっきりと分かれているそうです。また、ニホンアカガエルも標高などの関係から、町内には生息していないようです。

 町内に生息するモリアオガエルとシュレーゲルアオガエルは、よく似ていますが、それぞれに特徴があります。モリアオガエルは水辺に張り出した木の上や田んぼや池の水際に白い泡状の卵を産みます。対してシュレーゲルアオガエルも同じような卵を産みますが、畔や池の横の土に穴を掘り、そこに産卵するため、卵を見かけることは少ないそうです。この2種の見分け方としては、虹彩(瞳孔の周り)の色が赤みがかっているのがモリアオガエルで、黄色いのがシュレーゲルアオガエルだそうです。また、モリアオガエルの方がシュレーゲルアオガエルより大きく育つのも特徴です。

 これまで、ハコネサンショウウオは全国に広く分布すると考えられていましたが、吉川氏が詳しく調査するうちに、実は多くの種に分けられることが解ったそうです。そして、只見町ではタダミハコネサンショウウオの発見につながったそうです。また、会津地方北部にはバンダイハコネサンショウウオが生息していますが、これは只見にはいません。また、ハコネサンショウウオとバンダイハコネサンショウウオは競合するため、同じ地域には生息していませんが、タダミハコネサンショウウオはハコネサンショウウオと競合することなく生息しています。とても興味深いですね。

 今回の講座には、26名の方が参加くださいました。講座では只見に生息する両生類の多さから、只見の自然の豊かさを再認識することができ、また、それぞれの種がどういった環境を好み、どのような生態を持つのかを知ることができました。これらの小さな生き物たちは、私たちの身近な場所から、簡単には行けないような山奥に行かなければ出会えないものまで様々です。これらの生き物たちがこれからも絶えることなく生きていける事、そういった里の環境、山の環境を守っていけたら素晴らしいと感じました。


posted by ブナ at 15:01| Comment(0) | ブナセンター講座

2016年08月11日

ブナセンター講座「只見地域で見られるカミキリムシとその生態」

7月30日(土)にブナセンター講座を行いました。遅くなりましたが、ご報告をします。

講師の槇原寛氏は、森林総合研究所の研究員をされていました。昆虫の、特にカミキリムシの分類をご専門とされています。只見町では、ユネスコエコパーク事業のひとつである自然環境基礎調査として、2014年から2015年にわたって槇原氏に只見町の昆虫相の調査をしていただきました。開催中の企画展では、その成果をもとに展示をしています。講座では、調査によって明らかとなった只見町の昆虫相の特徴をカミキリムシなど甲虫を中心にお話いただきました。

槇原氏は、喉のガンで手術をしており、声を出すことができません。調査をサポートしてきた役場総合政策課の中野陽介さんが、槇原氏の作成したスライドを読み上げる形で進めました。

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はじめにカミキリムシの一般的な生態の特徴について、説明がありました。日本にはホソカミキリムシ科とカミキリムシ科がいて、760種が知られています。カミキリムシの特徴は、触角が長いこと。この触角は、におい物質を拾うための器官で、繁殖相手や食物、産卵場所を見つけるのに役立ちます。また、つかむとギーギーという音を出します。これは口で発声しているのではなく、体をこすり合わせて出しているそうです。そして大あごの形態は、食物の違いや、産卵環境(産卵の際に樹皮を加工するかどうか)の違いを表しているとのことでした。豊富な写真を用いて、カミキリムシに様々な食性があること、カミキリムシの擬態(においを出す、ハチに似せる、味のまずい虫に似せるなど)について紹介してくださいました。カミキリムシは大きいか小さいかだけでみな同じにように思っていましたが、見て楽しむポイントがはじめてわかりました!

続いて、只見町の昆虫相の特徴や発見された珍しい昆虫について、ご説明くださいました。
ひとつは、カブトムシです。只見町で採集されたカブトムシは、小型のものが多かったそうです。中にはオスなのにほとんど角がないようなものも。これは積雪期間が長いために、成長に費やせる時間が短いからだということでした。幼虫の期間を伸ばすことできちんと大きくなる種類の昆虫もいますが、カブトムシはそれができないのだそうです。

もうひとつは、クワガタムシの種類が多く、豪雪地帯に生息するユキグニコルリクワガタがいる半面、暖地性のネブトクワガタも見られるといった多様性があることです。

ほかに大曾根湿原で見つかった珍しい甲虫や、良好な森林の指標となる昆虫が多いこと、マイマイガの大量発生時にチョウの幼虫を食べる昆虫が増えたことなどが報告されました。只見町の昆虫相の特徴を端的に解説していただき、只見町の自然を理解するすばらしい機会となりました。

26名の方にご参加いただき、ジョークを交えての槇原氏の人柄が表れる講座を楽しみました。

なお、槇原氏の行った研究成果は、ブナセンター紀要No.5にまとめられています。詳しくは▲こちら▲をご覧ください。
posted by ブナ at 12:30| ブナセンター講座