2025年11月13日

講座「どんぐりコロコロどこへ行く〜堅果類の散布様式〜」開催報告

 2025年10月25日(土)、新潟大学名誉教授の箕口秀夫博士を迎え、只見町ブナセンター講座を開催しました。参加者は18人でした。講座の内容は森林と動物の相互関係、特にドングリとネズミの関係を例に動物が森林に与える影響についての話を中心に進みました。

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 冒頭では、ドングリを含む堅果類の特徴を種子の大きさや栄養価の観点から説明いただいたのち、堅果類の防衛戦略(食べられないための戦略)について解説をしていただきました。
 実が大きく、栄養価も高い堅果類はネズミやリス、ツキノワグマなど多くの動物の貴重な食糧になっています。しかし、全ての種子を食べられてしまうと堅果類をつける樹木は世代交代が出来ずに困ってしまいます。そこで、堅果類は動物に食べられないために様々な工夫を身に着けています。例えば、ドングリに含まれるタンニンという物質の存在が挙げられます。ネズミにドングリを餌として与え続けると、普通の飼料を与える場合に比べて死亡率が高くなるという実験結果があるそうです。毒性は低いけれども食べ続けると効いてくる、少しは食べてもらうけど、食べられすぎないようになっているとのことです。
 このように植物側は毒性の獲得により食べられないための戦略を身に着けますが、動物側も毒を無毒化できるよう腸内細菌を獲得するなど適応していきます。箕口博士は今現在も植物と動物の攻防は絶えず続いており、注意深く観察するとその進化・適応の過程を目の当たりにできるかもしれないと仰っていました。

 次に、ドングリの種子散布におけるネズミの役割について、箕口博士の過去に行った研究などをもとに解説をしていただきました。

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 森の中にドングリを用意し、それを自動撮影カメラで観察するとやはりネズミが現れます。しかし、ネズミの多くはドングリをその場で食べることなく、虫食いの有無などを見定めた後、どこかへ運んで行きます。持ち去られたドングリを探すと地面に埋められた状態で発見されます。これはネズミの貯食行動というものです。調査の結果、この貯食行動はネズミの移動性によって特徴が異なることが判明したそうです。
 定住性が強いメスのネズミは、持ち去ったドングリを自分の巣穴など、比較的近く、かつ集中的に、そして比較的深い位置に貯蔵します。一方、移動性の強いオスの場合は、比較的遠くに分散して、比較的浅い位置にドングリを貯蔵します。また、貯蔵された後のドングリを調査すると、定住性が強いメスが持ち去ったものは巣穴の中、もしくは近いところにあるのでたくさん食べられてしまいます。食べ残されたとしても比較的深い位置に埋められているため、発芽できるドングリは少なくなってしまいます。一方、移動性の強いオスが持ち去ったものは分散されているが故に放置される割合が多く、浅い位置に埋められているため発芽率も高くなります。

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 このように、移動性の強いオスのネズミがより効果的にドングリの種子散布の役割を果たしているという結果が明らかになりました。また、植物側の結実の豊凶やタンニンによる毒性などの戦略が、ネズミの一連の行動に少しずつ影響を与えて堅果類とネズミの関係性ができていると箕口博士はご説明されました。
 最後に、箕口博士は森づくりに関してネズミの働きから学ぶことは多い。ドングリとネズミの関係性を通して、今一度ドングリと自分たちとの関係性、そして森づくりについて見つめてもらいたい、と仰っていました。

 箕口先生、貴重なお話をありがとうございました。聴講下さった皆様にも御礼申し上げます。

posted by ブナ at 09:42| ブナセンター講座