2021年11月03日

自然観察会「恵みの森で紅葉のブナを見よう」開催報告

 2021年10月24日(日)、布沢地区にある恵みの森で秋の自然観察会を開催しました。前日のブナセンター講座「ブナを利用する昆虫たち」で講演していただいた、三田村敏正氏にも同行していただきました。
 観察会前日まで雨が降ったり止んだりの不安定な天気が続いていましたが、当日は一転して晴れ間が見える観察会日和となりました。参加者は17名で、大滝沢沿いのブナ林を歩きながら、生きものを探しました。ブナ林の紅葉の進み具合は昨年よりも少し遅いようで、見頃はあと数日から一週間後といったところでしたが、色づき始めたブナ林を堪能することができました。

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▲色づき始めた恵みの森のブナ林

 大滝沢沿いの散策路の途中には、渡渉地点がいくつかあり、そこでは山地の渓流に生息するシマアメンボが見られました。アメンボの仲間は、池沼や小さな水たまりなど止水域に生息する種がほとんどですが、このシマアメンボは山間部の流水域、中でも比較的緩やかな場所に集まります。体長5mmほどと小型ですが、楕円形の体と独特の縞模様から他種と一見して区別できます。

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▲楕円形の体と縞模様が特徴的なシマアメンボ

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▲シマアメンボの解説をする三田村氏

 散策路沿いに生えているチマキザサには、昆虫が食べることでできた様々な形の穴が見られました。葉を裏返していくと、ササの葉を食べて育つヒメクロバという蛾の幼虫を複数確認することができました。幼虫の近くには白い繭も見られ、それがヒメクロバに寄生したコマユバチ類のものであることを三田村氏が解説しました。

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▲チマキザサの葉裏にいたヒメクロバの幼虫とコマユバチ類の繭について解説する三田村氏

 ブナ林内の湿ったところにはヒロロと呼ばれるカンスゲ類の仲間が生育しています。そのような場所では、前日の講座で三田村氏が紹介した体長4mmほどのヤスマツケシタマムシを探しました。ヒロロの葉につけられた細長い白線が、本種がいる証拠です。成虫は秋口に現れ、ヒロロの葉の表面をかじります。食べた痕は塵状になって残りますが、時間が経つと乾燥して白く変色します。探し始めてすぐに三田村氏がヤスマツケシタマムシの成虫を発見し、参加者も食痕をたよりに見つけることができました。

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▲ヒロロの葉で見られたヤスマツケシタマムシの食痕

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▲ヤスマツケシタマムシが食べた痕は、塵状となって残る

 上記の生きもののほか、オオナミザトウムシという人の手のひらほどもある大きなザトウムシや、ボーベリア菌に感染したシロチャチホコ(鱗翅目)という蛾の幼虫、樹木では沢沿いに生えるムラサキシキブやサワフタギ、ケアブラチャンなど広葉樹の実が観察され、秋の恵みの森のブナ林を楽しむことができました。

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▲オオナミザトウムシの雌雄。体の大きいほうが雌(左)、小さいほうが雄(右)。

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▲沢を渡る参加者

 前日までの雨で増水の心配もありましたが、渡渉が難しい場所もなく無事に観察会を終えることができました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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posted by ブナ at 14:21| Comment(4) | 自然観察会
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