2021年07月19日

自然観察会「初夏の只見沢で渓畔林と雪食地形をみる!」開催報告

 6/26、只見沢の浅草岳登山道沿いにて観察会を行いました。只見沢は、雪食地形、只見地域の代表的な森林植生であるブナ林、さらにはトチノキ・サワグルミの渓畔林といった只見地域を象徴する自然環境を観察できるコースとなっています。参加者は14名で、ブナセンター指導員が解説を行いました。

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▲只見沢右岸の雪食地形

 只見沢浅草岳登山口の駐車場からは見事な雪食地形を見ることができます。こうした地形の形成には只見地域の主な地質で比較的脆い緑色凝灰岩(グリーンタフ)と豪雪による雪崩の浸食が大きく関わっています。また、只見地域の森林植生にも大きな影響を及ぼしています。すなわち、急峻で複雑な地形により、尾根部にキタゴヨウなどの針葉樹林、雪崩斜面にミヤマナラなどの低木林、斜面下部などの緩斜面にブナ林、谷部にトチノキ・サワグルミの渓畔林で、立地環境により植生のタイプが異なります。ブナ林についていえば、山地一面に広がっているわけではなく、一部地域を除けば、比較的小さな面積の林が断片的に分布しているのが特徴です。

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▲アズマヒキガエルの幼生

 只見沢に並行する登山道に入り、入り口からしばらくは地面がぬかるんでおり、木道の上を進みます。その途中、水たまりでアズマヒキガエルの幼生が見られました。アズマヒキガエルは平地から山地まで、様々な環境に生息するカエルです。繁殖期には多数のオスが少数のメスを奪い合うカエル合戦をすることで有名です。


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 さらに進むと、冷温帯の渓畔林を代表するトチノキとサワグルミが優占する林を見ることができます。トチノキの葉が天狗の羽団扇のような掌状複葉なのに対して、サワグルミの葉は小葉が羽状に並ぶ奇数羽状複葉です。サワグルミの一斉林も見ることができ、過去に発生した土石流の跡地に更新してきたと考えられました。


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 さらに登山道を進み、只見沢から離れた緩斜面に出ると、比較的成熟したブナ林に出会います。林床はササではなく、ユキツバキが覆っています。只見町のブナ林は比較的低標高であり、林床はユキツバキ型のブナ林を見ることができます。林内には倒木があり、その表面にはコケやキノコが生え、それらを食べるヤスデやヤマナメクジが集まっていました。さらに、キノコ等に集まるハエ等の小昆虫を捕食するサビハネカクシの姿も見られました。成熟した森林で見ることができる倒木は様々な生物の餌資源や隠れ場所になるだけでなく、それらの生物を捕食する生物も集まり、生物多様性に貢献しています。


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 幽の倉沢の渡渉の仮橋の折り返し地点に聳える、見上げるほど高い雪食地形の断崖絶壁。雪崩の影響のため高木は見られず、所々岩が露出しています。谷底にはまだ雪渓が残っていました。残念ながら当日は季節から外れていましたが、6月上旬であればこの絶壁の草地では自生するヒメサユリが花を咲かせる姿を見ることができます。雪崩で山肌が削られ、開放的な草地が維持されるこのような崖は、ヒメサユリにとって極めて好適な環境です。ヒメサユリは積雪深の深い地域に分布する希少植物ですが、このような豪雪によって作られる環境に依存している事がその要因の一つと考えられます。

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▲マガタマハンミョウ
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▲大きな複眼と発達した大顎を持つ、愛くるしい肉食系の顔

 観察会中は様々な生き物に出会うことができましたが、特に数が多かったのはマガタマハンミョウでした。ブナ帯を代表する昆虫の一つで、北海道南部、本州中部以北、佐渡島に分布します。後翅が退化しており、飛翔しないのが、ハンミョウの仲間の中では特異な点です。大きな複眼と発達した大顎をもつ捕食者で、素早く地表を駆け回り、自身より小さい動物を捕食します。


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▲ギンリョウソウ
 他にもヒメフナムシやギンリョウソウ、カマドウマの仲間等を見ることができました。


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 直前の予報では天候が危ぶまれましたが、当日は日差しに恵まれ、林内も暖かく、様々な生き物が顔を見せてくれました。コロナ対策ということで参加者の皆様にはマスクの着用をお願いしていたこともあり、ゆっくりと歩き、解説を多めで案内をさせていただきました。参加者の方々からは「今回は只見の自然が凝縮されたフィールドで、大変興味深く楽しめました。サワグルミ、トチ、ブナ、昆虫もおもしろいです」などの声が寄せられました。

 今後も只見町ブナセンターでは、只見の多様なフィールドを活かした観察会を予定しています。今回天候などで参加を見合わせられた皆様も次の機会に是非ご参加ください。指導員一同、お待ちしております。
posted by ブナ at 19:20| Comment(6) | イベント
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