2021年05月13日

自然観察会「春の花と新緑のブナ林観察会」開催報告

写真3_P5010171.JPG

この時季の只見の山肌を見たとき、新緑に覆われた部分はブナ林です。
そんな春の只見町において、5月2日(日)・3日(月)に開催した「春の花と新緑のブナ林観察会」の様子をご報告します。

 5月2日(日)「春の花観察会」
 天気予報では雷雨の恐れがあり気を揉んでいましたが、観察会の時間帯は一時小雨程度でした。「季の郷湯ら里」の裏山にある今回の観察地・余名沢では、春植物が林のタイプによって出現が異なることに着目しつつ解説いたしました。

写真1_P5010208.JPG

▲カタクリ

カタクリは余名沢で多く見られる春植物です。かつて片栗粉の原材料として利用されていたこともあるカタクリですが、開花までに8年程度を要するとされています。開花するまでの数年間は葉を1枚だけ地上に出す姿から、只見では「カタバ」という地方名で呼ばれています。葉を生で食べると甘く、只見町の参加者からは、かつて軽く茹でて利用していたとのお話が紹介されました。

写真2_P5020425.JPG

そんなカタクリですが、林縁やコナラ林では普通に生育している一方、ブナ林内では見当たりません。ブナは他の落葉樹に先駆けて開葉し、多くの葉を付けるので、林内には直射光が入りにくいのです。そのため、春先に十分な日照を必要とするカタクリなどの春植物にとって、ブナ林の中は生育に適さないのです。

散策路を外れた林内には、薪炭利用の時代に伐り残されたブナが大木に育っていました。中にはこの冬の豪雪で太枝が落ちた木があり、枝先についた花を観察することができました。

写真4-1_混芽_P5020376.JPG

▲混芽

ブナには、新たに伸びる枝葉の元のみを包んでいる「葉芽(ようが)」と、同時に花も包んでいる「混芽(こんが)」があり、後者のほうが大きく膨らんでいます。

写真4-2_混芽を開いた様子.jpg

▲混芽を開いた様子

芽を包む薄茶色の「芽鱗(がりん)」を剥がすと、その中に雄花と雌花の両方が別々に存在する「雌雄異花同株(しゆういかどうしゅ)」であることが分かります。昨年凶作だった町内のブナですが、今年は並作程度には結実するかもしれません。

写真5_稚樹に見る芽鱗痕.jpg

▲稚樹に見る芽鱗痕

また、一冬開けるごとに芽麟が落ちるため、稚樹でその痕跡「芽麟痕(がりんこん)」を数えると樹齢を判別することができます。ブナ二次林の林床にある無数の稚樹には3つの芽麟痕が認められ、2018年の豊作年の種子から発芽したと推測されます。

写真6_P5010228.JPG

▲キクザキイチゲ

陽当たりの良い水路沿いの歩道には、キクザキイチゲやショウジョウバカマ、また、低木類の地味な花も観察できました。

写真7_P5020361.JPG

集落の裏山・余名沢の森では、人の利用方法の違いによる多様な森林景観がもたらした、林床植物の違いを観察することができました。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 5月3日(月)新緑のブナ林観察会
 この日も天気予報では突風や雨が予想されましたが、観察会の時間帯だけは荒天を免れました。観察地「癒しの森」は国道352号線・松坂峠にある散策路で、金山町と只見町の境に位置しています。この地域の原植生はブナ林でしたが、多様な利用方法によって現在の森の姿が形作られています。

写真1_P5030523.JPG

▲コナラ・ミズナラ林

入り口付近のまだ展葉していない広葉樹林はミズナラを主体とした林です。ミズナラなどのナラ類は比較的成熟が早く(成長が良ければ10年生までに開花結実を開始)、若い木では伐採後の萌芽更新も旺盛です。そのため、若い林を伐採利用する薪炭林のサイクルとよくマッチしており、世代交代が容易でした。そのような利用が継続したことから、現在の二次林が成立しました。そんなナラ類は、光合成のために多くの陽光を必要とするため、多少の日陰でも成長が可能なブナと樹冠が重なりあうと負けてしまいます。癒しの森の奥へ進むにつれブナが混じるようになると、競合に負けたナラ類は数を減らしてゆきます。

写真2_立ち枯れ_P5037732.JPG

▲立ち枯れ木や倒木には昆虫による利用形跡がみられる

昨今、ナラ枯れの被害もあり大きなミズナラは消失してきています。一方で、若い二次林には大木が立ち枯れたり倒れたりする機会は少ないことから、腐朽した木は昆虫などの多様な生物を育む重要な環境を提供してくれています。オオウラジロノキの立ち枯れ木には、クワガタ類の産卵痕を見ることができました。

写真3_P5010023.JPG

この森のブナも、かつて薪炭林として伐採利用されていた二次林ですが、天然林に近い姿は「勢子泣かせの峰」付近の北側斜面に見ることができます。新緑が目にも鮮やかでした。

写真4.jpg

▲ブナの花

ここでは開花したブナの枝先がいくつも落ちており、枝先についた雌花、その下に垂れ下がる雄花のつくりを見ることが出来ました。

写真5.jpg

▲ハウチワカエデの花

ブナは雌雄異花同株ですが、ハウチワカエデは雄性両全性同株、つまり雄花と両性花を同じ株の枝先につけます。

写真6_P5010079.JPG

▲オオイワウチワ

折り返し地点「戸板山眺め」の尾根ではオオイワウチワの花が見られ、満開は過ぎていたものの見応えは十分でした。
そのほか、エゾユズリハやツルシキミなど日本海要素植物の紹介、サンショウクイなど夏鳥の声聞き、スマホ写真撮影講座など、職員による様々な視点からの解説で、春の癒しの森の魅力を堪能いただけたかと思います。

写真7_IMG-3616.jpg


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
観察会の紹介は以上になりますが、今回あいにくコロナ禍で参加を断念された方、ブログをお読みいただき参加してみたいと思われた方々とも、今後の観察会でお会いできる日を楽しみにしています。なお、春植物については現在「ただみ・ブナと川のミュージアム」で開催中の企画展アーカイブ「只見の春植物とその生活史」で詳しく解説しております。ぜひミュージアムにも足をお運びください。
posted by ブナ at 11:18| Comment(0) | イベント
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: