2019年11月17日

『ただみ観察の森』観察会 蒲生集落あがりこブナの森−ブナを利用してきた人の暮らしを知る−

 2019年11月10日(日)に『ただみ観察の森』観察会「蒲生集落あがりこブナの森 ―ブナを利用してきた人の暮らしを知る―」を実施しました。
 『ただみ観察の森』は、只見ユネスコエコパーク域内の自然環境やそこに生息・生育する野生動植物の現状を理解し、身近に触れてもらうことを目的とした場所で、町内の7ヵ所に設置されています。今回は、蒲生川と真奈川の合流付近にあるブナ二次林にて、参加者13名とともにあがりこ型樹形のブナやかじご焼き(炭焼き)の痕跡を観察しました。

 真奈川と蒲生川出合の平坦な地形にある「蒲生集落あがりこブナの森」は、かつて旧真奈川集落の人々が生活のために利用していた森です。あがりことは、このブログ内でも何度か紹介してきましたが、木の幹の地上2〜3m付近に瘤ができて、その部分から複数の幹が生じている状態の樹木を指します。あがりこは一般にブナに対して用いられる言葉ですが、只見町ではコナラやミズナラのあがりこ型樹形の木も見られ、これらを「もぎっき」などと呼んでいたそうです。
 
 あがりこ型樹形の木が生じる背景には、人による利用があります。化石燃料が広く普及する以前は、集落近くに生育するブナなどを薪材として生活に利用していました。雪が固く締まった初春に雪上で伐採が行われるため、地上から2〜3mという高い位置から萌芽幹が出るのです。

 さて、観察会当日は小雨混じりの天気でしたが、晩秋の紅葉をゆっくり見ることができました。まず、蒲生集落あがりこブナの森の駐車場で、只見の自然環境を特徴づける雪食地形や尾根に立ち並ぶキタゴヨウなどを観察しながら、入り口の木橋を渡って森に入ります。

DSC_2173.JPG
▲木橋の下を流れる沢の落ち口には、ニッコウイワナが生息する。時折、体長40cmほどの大型個体が岩陰から姿を現す。


DSC_2179.JPG
▲ブナ、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、オオバクロモジなどは紅葉の終盤。


DSC_2192.JPG
▲葉が青々としているのは、ユキツバキ、ハイイヌツゲなどの常緑広葉樹の仲間である。


 この森の中では、地際から多数の枝が四方に伸びているブナが見られます。これは晩秋に行われるかじご焼き(炭焼き)のため、幹が地際で繰り返し伐採されたことによって形成されました。細い幹がたくさん生えていますが、よく見ると元株は意外と大きいことに気付きます。

20191105_叢生型ブナ.jpg
▲細い幹が四方に張り出したブナ。叢生型と呼ばれる(2019年11月5日撮影)。

20191105_かじご焼き跡.jpg
▲かじご焼きの跡。堆積した落ち葉で半分埋もれている(2019年11月5日撮影)。


 叢生型のブナとかじご焼きの痕跡を観察した後、さらに森の奥へと進むと、ブナのあがりこを見ることができます。一般的なあがりこ(有名なのは、鳥海山麓で見られるあがりこ大王)は、伐採された位置が固定され、そこから複数の幹が生じるのが特徴です。しかし、この森では下の写真のように、伐採された位置を示す瘤が同じ幹に2〜3ヵ所あることが分かります。これは、旧真奈川集落の人々が伐採位置を幹の上部へと移動させていたことが原因と考えられています。


DSC_2195.JPG
▲立派なブナのあがりこを前にして、歓声が上がる。


 さらに、上で紹介した叢生型とあがりこが組み合わさった「複合型」と呼ばれるブナも見られます。かじご焼きに利用するため、比較的短い周期の伐採により形成された叢生型ブナは、徐々に萌芽力が低下していきます。そこで、株を維持するために立木と呼ばれる幹を一本伐採せずに残します。その幹が適当な大きさに成長すると、今度は薪材利用のため地上から2〜3mの雪上で伐採され、あがりこが形成されます。このような二つの伐採利用を受けたブナは、地際に多数の萌芽幹が張り出した、あがりこ型樹形になります。


DSC_2234.JPG
▲あがりこブナの前で記念撮影


 参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。つい先日、浅草岳の初冠雪が確認され、只見もいよいよ冬季シーズンへ突入します。ブナセンターでは今後も講座や観察会を予定しておりますので、ご家族・お友達をお誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。
posted by ブナ at 10:29| Comment(0) | 自然観察会
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: