講座では、サンショウウオ類(有尾類)・カエル類(無尾類)の概要と、会津地方に生息するそれぞれの種について詳しくお話しいただきました。
▲説明する吉川氏と受講者の方々
会津地方に棲む両生類は、有尾類がアカハライモリ・クロサンショウウオ・トウホクサンショウウオ・ハコネサンショウウオ・タダミハコネサンショウウオ・バンダイハコネサンショウウオの6種、無尾類がモリアオガエル・シュレーゲルアオガエル・カジカガエル・ニホンアカガエル・ヤマアカガエル・タゴガエル・ツチガエル・トノサマガエル・トウキョウダルマガエル・アズマヒキガエル・ニホンアマガエル・ウシガエル(外来種)の12種が生息しており、町内では有尾類はバンダイハコネサンショウウオを除く5種、無尾類ではニホンアカガエル・トウキョウダルマガエル・ウシガエルを除く9種が確認されています。只見町は自然度が高く、また多様な環境があるため多くの種が生息しています。
各種の説明の際に液浸標本で、それぞれの特徴をじかに確認しました。また、カエルの鳴き声をかくカエルごとに再生しました。カジカガエルの声を聴いて、「鳥の鳴き声かと思った」という参加者の声が聞かれるなど、見たことはあるが鳴き声は聴いたことがないもの、反対に鳴き声は聴いたことはあるが姿は見たことがないものを結びつけることができました。
サンショウウオの仲間は止水域・流水域など、それぞれ好む環境に違いがあり、それぞれに適した場所に住み分けしているそうです。(ハコネサンショウウオは流水域、クロサンショウウオは止水域に住みます。)また、ハコネサンショウウオの仲間は産卵場所が独特で、沢の湧水のわいている場所の奥の外からは見えないところに産卵するそうです。クロサンショウウオなどは山地の止水域などに産み付けられているものを見ることができます。
カエル類についても同様で、それぞれに住み分けをしており、只見町内にはトノサマガエルはいるが、トウキョウダルマガエルは生息しておらず、県内ではトウキョウダルマガエルは太平洋寄りに生息しており、境界線は会津盆地内でくっきりと分かれているそうです。また、ニホンアカガエルも標高などの関係から、町内には生息していないようです。
町内に生息するモリアオガエルとシュレーゲルアオガエルは、よく似ていますが、それぞれに特徴があります。モリアオガエルは水辺に張り出した木の上や田んぼや池の水際に白い泡状の卵を産みます。対してシュレーゲルアオガエルも同じような卵を産みますが、畔や池の横の土に穴を掘り、そこに産卵するため、卵を見かけることは少ないそうです。この2種の見分け方としては、虹彩(瞳孔の周り)の色が赤みがかっているのがモリアオガエルで、黄色いのがシュレーゲルアオガエルだそうです。また、モリアオガエルの方がシュレーゲルアオガエルより大きく育つのも特徴です。
これまで、ハコネサンショウウオは全国に広く分布すると考えられていましたが、吉川氏が詳しく調査するうちに、実は多くの種に分けられることが解ったそうです。そして、只見町ではタダミハコネサンショウウオの発見につながったそうです。また、会津地方北部にはバンダイハコネサンショウウオが生息していますが、これは只見にはいません。また、ハコネサンショウウオとバンダイハコネサンショウウオは競合するため、同じ地域には生息していませんが、タダミハコネサンショウウオはハコネサンショウウオと競合することなく生息しています。とても興味深いですね。
今回の講座には、26名の方が参加くださいました。講座では只見に生息する両生類の多さから、只見の自然の豊かさを再認識することができ、また、それぞれの種がどういった環境を好み、どのような生態を持つのかを知ることができました。これらの小さな生き物たちは、私たちの身近な場所から、簡単には行けないような山奥に行かなければ出会えないものまで様々です。これらの生き物たちがこれからも絶えることなく生きていける事、そういった里の環境、山の環境を守っていけたら素晴らしいと感じました。