セミナーは、渡部勇夫只見町長のMiguel博士夫妻と松田裕之博士(横浜国立大学)の只見訪問を歓迎するあいさつで始まり、ユネスコエコパークは只見町の町づくりの根幹であり、誇りであるというメッセージとともに9月2日に只見ユネスコエコパークの定期報告を日本ユネスコ国内委員会事務局(文部科学省)に提出したことが報告されました。
続いて松田裕之博士の逐次通訳の下、Miguel 博士が『ユネスコエコパークとユネスコMAB計画:持続可能な開発と自然保護との関連性』と題する60分講演を行い、ユネスコが目指すもの、ユネスコエコパークに登録する理由などを世界各国のユネスコエコパークの活動を交えながら紹介いただきました。ユネスコエコパークに登録する理由では、6つの理由が挙げられました。それは、@資源の懸命な利用、A地域経済の活性化、B健全な生態系の保全、C人と自然が共生するためのオープンな実験場としての機能、D多くの関係者との協力の促進、ESDGsなどの国際目標達成のために役立てる、です。
質疑応答では会場から活発な質問が寄せられ、松田裕之博士の通訳のもと、Miguel博士が回答するやり取りが予定時間をオーバーして約1時間続きました。ユネスコエコパークにおける移行地域の名称の意味と役割、地元の市民がエコパークにどのようにかかわるか、世界自然遺産との違い、9月の台風で屋久島(ユネスコエコパーク登録地)で倒れた弥生杉の活用方法など、質問は多岐にわたりました。Miguel博士からは、核心地域は生物多様性を保護するためにあるが移行地域は地域社会の持続可能な開発の場であること、まずは教育現場で子供たちが学び、子供たちからその親たちが学ぶことで、地域の担い手が広がるだろうこと、世界遺産は価値を保存し次世代に遺すためにあるが、エコパークは自然資源を持続可能に利用する工夫をする“価値を創造する場”であること、樹齢数千年の弥生杉といえども生命が有限であり、重要なのはその子孫を守り、命の巡りについて理解することであることなどが議論されました。Miguel博士は住民の皆さんと非常に有意義な議論ができた、と大変喜ばれていました。
Miguel博士らは、7−8日の只見の滞在で、六十里越の山岳景観、ただみ・ブナと川のミュージアム、ふるさと館田子倉、叶津番所、旧五十嵐家住宅、旧朝日公民館民具収蔵庫、ブナ天然林、ブナ二次林、ブナあがりこ林、杉人工林、水田を視察され、只見町長との懇親会にも出席されました。
Miguel博士からは、只見ユネスコエコパークはとても素晴らしく、努力もしている、引き続き頑張ってほしい、というメッセージをいただきました。
posted by ブナ at 10:15| ユネスコエコパーク