2023年10月28日(土)、小林地区において「秋から初冬の野鳥観察会」2回目を開催しました。参加者は6名で、県外者3名、県内者3名(うち町民1名)という内訳でした。
今回の観察地・小林地区は、町内3地区の一つ「明和地区」の中心で、明和公民館や明和小学校があります。伊南川右岸の低地に水田地帯が広がり、山裾の国道289号線に沿って集落がまとまっています。
▲紅葉が見頃でした
10月下旬は冬鳥の渡来が本格化する季節です。今回は小春日和の好天にも恵まれ、稲刈り後の田んぼや、河川堤防の草地を中心に、多くの小鳥類を観察することができました。
「ヒッ、ヒッ」という地鳴きが特徴のジョウビタキは代表的な冬鳥ですが、豪雪地の只見町では積雪期に入るとほぼ姿が見られなくなる(より雪の少ない地域へ移動する)ため、晩秋から初冬にかけて観察頻度が高くなります。また、ニュウナイスズメは夏鳥として町内の集落で繁殖していますが、今回確認された個体は渡り途中だったと思われます。
水田ではタヒバリが多く確認されました。和名にヒバリとつきますが、れっきとしたセキレイの一種です。タヒバリは国内では冬鳥として知られていますが、只見町内では春秋にだけ見られる旅鳥です。総数にして20個体近くの群れが、水田から水田へと移動しつつ餌を捕る様子を観察することができました。
水田ではその他にも、タシギ属の一種やハクセキレイ、カワラヒワなどが見られました。このように、収穫後の水田を採食などのため利用する鳥類は多く、観察にはうってつけの環境の一つと言えます。
伊南川の堤防はオギやクズを主体とした高茎草地となっており、ホオジロが多数見られました。と、堤防から聞こえてくる地鳴きの中に「フィ、フィ」というくぐもった鳴き声が。正体は冬鳥のベニマシコです。雄は桃色を帯びる美しい種で、河川堤防のほか休耕田や林縁などの高茎草地において普通に見られます。
今回一番の大物は、水田の畔の草地に潜んでいました。赤い頬が特徴のホオアカです。ホオジロ科の一種で、平地から山地にかけて広く分布しますが、草原や農耕地に生息し、春夏の繁殖分布はやや局地的です。そのため、福島県の最新のレッドリストでは絶滅危惧II類に選定されています。奥会津地域では檜枝岐村や南会津町の高原で確認されており、檜枝岐村では恐らく繁殖しています。只見町ではこれまでに記録のなかった種で、これが初記録となりました。10月下旬は渡り期なので、移動中の個体だったという解釈ができそうですが、近隣町村における分布を考えると、今後もしかしたら町内の草地(河川周辺や耕作放棄地、スキー場)で繁殖個体が見つかるかもしれません。
▼今回の観察会で確認された鳥類のリスト
今回の野鳥観察会では28種が確認されました。
水田ではタシギ属の一種やタヒバリをはじめとしたセキレイ科、カワラヒワなどが見られ、稲刈り後の水田が思いのほか多くの鳥類に利用されていることを実感していただけたかと思います。また、伊南川堤防ではベニマシコやホオジロなど、高茎草地を好む種がいくつか確認されました。町内初記録種・ホオアカも水田畔の低茎草地で見つかり、今回の観察会では草原性の種をメインに様々な鳥類を観察することができました。
ご参加下さった皆様、ありがとうございました。