2023年05月28日

5月28日(日) 野鳥観察会(塩ノ岐地区)開催報告

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 2023年5月28日(日)、塩ノ岐地区において全5回の4回目となる「春から初夏の野鳥観察会」を開催しました。県内からは会津地方、県外からは関東圏から計13名の参加がありました。天候は曇りでしたが日の差す時間帯があり、蒸し暑さも感じられました。
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▲塩ノ岐地区の景観

 塩ノ岐地区では伊南川の支流である塩ノ岐川の谷筋に沿って、集落や農耕地(主に水田)が細く連なっています。この谷奥には、以前は峠越えの林道が整備されており、南会津町の小塩まで接続していましたが、2011年の水害以降は不通となっています。
 今回の観察会では、塩ノ岐公民館を出発して辰目沢の周辺を歩き、そこからは停めておいた車で移動して、間丸貝の集落やスギ林を歩くコースを設定しました。

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▲中央のスギの樹頂にサンショウクイがとまっているが、緑の背景に溶け込み、発見が難しくなっている

 5月下旬ともなるとすっかり緑が濃くなり、目視での探鳥が難しくなるため、鳴き声による識別が重要となってきます。耳を澄ませると、さっそく公民館の周辺からアカショウビンの鳴き声が聞こえてきました。「キョロロロロ…」という涼やかなさえずりは、例年5月の中・下旬から町内で聞かれるようになります。

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▲サシバ(撮影は下見時)

 町内の各支流では、谷あいに水田と林が隣接しており、典型的なサシバの生息環境となっています。塩ノ岐地区も同様の環境を備えているため、予想通りサシバが観察できました。まだ胸部に縦斑が残る若い個体で、下見の際にも同一と考えられる個体が確認されています。

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▲モリアオガエル

 サシバが好んで捕食する動物といえばカエルです。道路脇の貯水槽では、繁殖のため集まったモリアオガエルが3個体ほど見られました。色彩は写真のようにきれいな黄緑色から、暗褐色まで変異があるものの、一様に無斑なのがこの地域のモリアオガエルの特徴です。

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▲辰目沢

 途中から辰目沢に入りました。砂防堰堤までの作業道の往復では目当ての鳥は見つかりませんでしたが、オシドリやカルガモの姿が見られ、ウグイスやキビタキのさえずりも聞くことができました。また、辰目沢と塩ノ岐川の出合い近くの橋では恐らくイワツバメが営巣しており、間近を飛び交うイワツバメを観察できました。

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▲タケウチトゲアワフキ(体長5 mmほど)

 作業道沿いのオオバボダイジュの枝先には、背中に長いトゲのある変わった昆虫がいました。アワフキムシの1種で、タケウチトゲアワフキと言います。シナノキやオオバボダイジュの樹液を吸い、成虫は5〜6月に出現します。つい背中のトゲに触りたくなりますが、ジャンプ力に優れ、手を近づけるとピンと跳ねて逃げてしまいます。

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▲ホウチャクソウ

 草本では、ユリの仲間のホウチャクソウが見頃で、林床のそこかしこに花を咲かせていました。また、紫色のラショウモンカズラの花も満開を迎えていました。

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▲ゴジュウカラ

 西芦沢から車で移動した先、間丸貝周辺のスギ林では、ゴジュウカラを見ることができました。垂直な木の幹での活動を得意としています。その生態はさながらキツツキのようですが、スズメ目に属しています。観察された個体は、スギの樹皮の隙間に餌となる昆虫を探している様子でした。そのほか、遠くの山からは筒を打つような「ポポ、ポポ、ポポ」という規則正しいツツドリの鳴き声が聞かれました。

▼今回の野鳥観察会で確認された種のリスト
(クリックすると別ウィンドウで開きます)
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 今回の野鳥観察会では、合計27種が確認されました。夏の只見町を象徴するアカショウビンのさえずりが聞かれたほか、オシドリやサシバ、ゴジュウカラなどを見ることができました。また、モリアオガエルなどの両生類や、タケウチトゲアワフキなどの昆虫、それに草本も楽しめました。
 ご参加下さった皆様、ありがとうございました。
posted by ブナ at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然観察会

只見町ブナセンター初夏のブナ林観察会開催のお知らせ

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内容:初夏のブナ林を歩き、樹木や動植物の観察を行います。只見ブナ林ブレンドの樹木茶の試飲と、材料となる葉の採集も行います。
※ブナ林ブレンドプロジェクト:只見町のブナ林に生育する樹木の機能性に着目しつつ、葉や枝を活用したブナ林ブレンドを開発し、商品開発による地域活性化を目指すプロジェクトです。

■開催日時:6月18日(土)9:30〜12:00
■集合場所:明和公民館(福島県南会津郡只見町小林字上照岡1300)
■持 ち 物:長靴、雨具、飲み物、軽食
■参 加 費:高校生以上400円、小・中学生300円、町内在住の小・中学生、高校生
100円(保険料込み)
■定 員 :20名 事前のお申込みが必要です(6月17日(土)まで)
 ※悪天候時、中止の場合があります。その場合、参加をお申し込みいただいた方に事前にご連絡いたします
▼お問い合わせは只見町ブナセンターまで(電話:0241-72-8355)
午前9時〜午後5時(火曜休館)
只見町ブナセンターホームページ:http://tadami-buna.jp/
posted by ブナ at 15:28| イベント

2023年05月07日

5月6日(土)野鳥観察会(新田沢周辺)開催報告

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 2023年5月6日(土)、ただみ・ブナと川のミュージアム周辺および新田沢において全5回の3回目となる「春から初夏の野鳥観察会」を開催しました。GWの只中で集客効果もあったためか15名の参加があり、うち県外からは関東地方より5名の来訪がありました。天候は曇りで、涼しく動きやすい快適な条件でした。
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▲ただみ・ブナと川のミュージアムの周辺、新田沢の景観

 今回はミュージアム駐車場から出発して、只見川を渡り新田沢の作業道までを往復するコースです。2022年6月26日にも同じコースで野鳥観察会を開催しており、25種の鳥類が確認されています。
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▲カワセミ

 「ただみ・ブナと川のミュージアム」の周辺には、隣接する集落や養魚場、只見川公園があり、視界には山々の支尾根も目に入るため、思いのほか多くの野鳥が観察できます。はじめの声聞きでは、ムクドリやヒヨドリ、キビタキの鳴き声が聞こえてきました。また、只見川公園では「チー」と鳴くカワセミも見られました。
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▲鳴くサシバ

 サシバは、なわばり個体と思しき成鳥の雄と、侵入個体と思しき若鳥の2個体が、約300 m先の山麓部で干渉し合う様子を観察できました。また、アオサギやセキレイの仲間3種(キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ)も姿を見せました。
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新田沢は一部に残雪があり、一列になってこんな小山を乗り越える一幕も。
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▲オオルリ

 新田沢はオオルリの個体数が多く、行く先々でさえずる雄の姿が観察できるものの、大体は逆光で見上げる格好になってしまい、きれいな瑠璃色を見ることは困難です。しかし、写真の個体は道から見下ろせる対岸の枯れ木で長時間さえずっていたため、斜面が背景となって美しい瑠璃色を見ることができ、参加者からは歓声が上がりました。
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▲キバナイカリソウ

 主に日本海側に分布するイカリソウの変種です。船の錨のような花を咲かせます。イカリソウには複数の種が知られていますが、只見町ではキバナイカリソウだけが確認されています。
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▲スミレサイシン

 スミレも見頃で、ナガハシスミレやオオタチツボスミレなど、複数の種が見られました。
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▲トウホクサンショウウオの卵嚢

 斜面からの湧水でできた水溜まりには、トウホクサンショウウオの卵嚢も見られました。まだヤマアカガエルの卵塊もあり、町内でも平地と比べ雪解けの遅い山手では、産卵時期が遅いようです。

▼今回の野鳥観察会で確認された種のリスト
(クリックすると別ウィンドウで開きます)
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 今回の野鳥観察会では、合計34種が確認されました。種数としては前日に開催した石伏地区に並びました。これだけ多くの鳥類が確認できたのは、普段からバードウォッチングを嗜まれていて、自主的に見つけて下さった何人かの参加者の貢献があったからこそです。
 ミュージアム周辺ではアオサギやサシバ、カワセミを容易に見ることができました。新田沢ではクロツグミやキビタキの美しいさえずりを聞くことができ、特にオオルリの観察にはご満足いただけたようです。
 ご参加下さった皆様、ありがとうございました。
posted by ブナ at 10:20| 自然観察会

2023年05月06日

4/30 新緑のブナ林観察会

2023年4月30日、癒しの森にて恒例の新緑のブナ林観察会を実施しました。午前中は雨が降っていたものの、午後にはやみ、歩きやすい天気の中での観察会となりました。今回は通常の歩道が枯死したナラの大木で危険な状態になっていたため、迂回路を進んで目的のブナの森に向かいました。

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▲枯死したナラ類の高木
迂回路と通常の歩道の合流地点付近のナラ類の枯死木です。只見町では数年間前から、カシノナガキクイムシによるナラ枯れが増えており、このルートのナラ類も2〜3年前から被害木が目立ってきていました。

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▲人の手があまり入っていないブナ林
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▲伐採後に自然再生したブナ二次林
癒しの森ではあまり人の手が入っていない原生林に近い自然林と、伐採後に再生した二次林の両方を観察することができます。伐採後に再生した二次林では、太いブナが見当たらず一様に揃った大きさであることが特徴です。

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折り返し地点に到着。雄大な景色を眺めつつ、休憩です。

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▲オオイワウチワ
折り返し地点で見られたオオイワウチワです。ブナ林の林床や岩混じりの尾根で見られます。


道中では様々な動物も見られました。雨天後の観察会であったためか、湿った環境を好むものとよく出会うことができました。

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▲タゴガエル
タゴガエルは、ニホンアマガエルと並び、只見の森林でもっとも普通に見られるカエルで、涼しくて湿った林床では、昼間でもよく見られます。この日は午前中に雨が降っていたため、特に活発になっていたようです。繫殖は5月の上旬から始まり、湧水や伏流水中で行われます。閉鎖空間で繁殖をするため、鳴き声は聞こえども姿は見えないカエルとして時折話題になります。

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▲陸生のホタル類
生涯を通して陸上で生活する陸生ホタルの仲間です。日本には約50種のホタルが生息していますが、このうち幼虫期を水中で過ごす水生ホタルはゲンジボタルとヘイケボタルを含む3種のみです。日本は水生ホタルの種数が多い国で、世界的に見ても陸生ホタルの方が圧倒的多数派なのです。陸貝類の他、小型のミミズなどの土壌動物を捕食すると考えられています。

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▲ヤスデの仲間
キノコなどの菌類や落ち葉を食べる土壌動物です。森林内の倒木や樹木の根元でよく見られます。危険を感じると写真のように丸くなり毒性のある防御物質を分泌、悪臭を放ちます。人にはさほど害はないものの、直接手を触れないほうがいいでしょう。

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ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。本観察会は毎年恒例の観察会ですので、興味を持たれた方は是非ご参加ください。リピーターの方も大歓迎です。
posted by ブナ at 13:01| イベント

4/29 春の花観察会活動報告

2023年4月29日、深沢集落近くの森林で春の花観察会を実施しました。毎年恒例の観察会ですが、今回は初夏を思わせる天気の中での観察会となりました。

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▲サシバ
観察地の森に入る前に田植え前の水田に接した林縁で採餌しているサシバに遭遇しました。里山を好む猛禽類で、主にカエルやヘビを捕食します。この個体も緑色のカエルを食べていました。恐らく付近の水田で鳴いていたシュレーゲルアオガエルだと思われます。

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▲ナラ類の二次林
スギ林に挟まれた林道を進み、しばらくするとナラ類の二次林が見えてきました。まだ樹木の葉が芽吹いておらず、日光が遮られることなく地上に届いています。春植物は、高木が開葉するまで間、融雪後の明るい林床で葉を広げ、開花します。やがて、木々が芽吹き、春植物は光合成が困難になると地上部は枯れ、栄養を蓄えた地下部は来春まで長い休眠に入ります。この森では、カタクリ、キクザキイチゲ、コシノコバイモが花を咲かせていました。

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▲左からカタクリ。キクザキイチゲ、コシノコバイモ

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▲ブナ二次林
さらに奥に進むと開葉が進んだブナの二次林に辿り着きました。新緑が美しい一方、林床に春植物の姿は見当たりません。ブナはナラ類と比べて芽吹きが早いため、林床に直射日光が入る期間も短くなります。そのため、春植物の生育には適さないのです。

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▲ブナの実生
林内ではブナの実生が多数見つかりました。館長の勧めで双葉を食べてみることに。若干の青臭さはあるものの、味はナッツ類に似ています。種子が双葉になったことがわかります。ブナの種子や実生は、糖質、脂質、タンパク質のバランスが良く、森に棲むノネズミやツキノワグマなどの哺乳類にとって貴重な食料となります。

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▲ツキノワグマの糞
近くで冬眠明けのツキノワグマの糞が見つかりました。ブナ種子の殻が未消化のまま排出されており、冬眠前に大量のブナ種子を食べていたのだと思われます。

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春植物以外にも様々な動植物に出会うことができました。ご参加いただいた皆様、お疲れさまでした。
posted by ブナ at 12:45| イベント