午前中は、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」(通称キョロロ)の学芸員・小林誠氏を講師にお招きしての講座「自然を活かした里山の知を地域博物館で『見える化』する」を開催しました。会場の只見振興センターには、渡部勇夫町長をはじめ16名が聴講に来られました。
▲講師:小林誠氏
講演では、十日町市と只見町が共通する「豪雪地ならではの自然と生物多様性、それらがもたらす文化の多様性」について解説して頂き、続いて「里山の知を地域博物館で『見える化』する」ためのキョロロの諸活動の紹介、そして最後は「見える化」の成果として表れてきた地域の変化などが、豊富な具体例とともに話されました。「伝統知」の話題では、用途のわからない民具は「伝統知が失われた可能性が高い」と指摘され、文化が継承されない場合の危機を改めて感じさせられました。ブナセンターと同規模の博物館で活躍されている小林さんの優れた取り組みの数々から、多くを学ばせて頂いた2時間でした。
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午後の「冬のブナ林観察会」では「季の郷湯ら里」近辺の林を観察地としました。講座に出席された方々など12名の参加がありました。12月中旬としては珍しく好天で、積雪深も30 cm程度と少なく、長靴だけでも問題のない条件でした。
湯ら里の入口から、まだ踏み跡のないまっさらな雪上をスノーシューやかんじきで銘々が自由に歩き始めました。
林縁から先は一列で進み、集落裏手の山裾に広がるスギ林に入りました。大きなスギ林では、冠雪害によって先端部が折れた木が目に入ります。小さな水の流れにはミソサザイ、立枯れたコナラには餌を探すコゲラの姿もありました。スギ林を抜けると急斜面の先にお目当てのブナ林が見えてきました。
かつて薪炭林として利用されていたブナ二次林の中に、今回の目玉である5本のブナ巨樹が聳え立っていました。これらのブナは、あまりに太かったため伐採を免れ、今日までその姿を保ち続けたのだと考えられます。ここで小休止して、巨樹を囲んで集合写真を撮るなどして楽しみました。
その後は山裾に下り、スギ林に混交する落葉広葉樹を観察しました。スギとともに大きく育ったオオバボダイジュ、カツラ、ハリギリ、キハダなどについて、ブナセンター職員が解説すると、只見町内の参加者からは「カツラは香ノ木と呼ばれるように香りが良いため仏壇に用いられた」「漢方薬に使われるキハダは虫除けにもなるので着物の染料に用いた」といった地域の伝統知が語られました。
午前の講演から学んだ伝統知を観察会の参加者が披露する実践の場ともなりました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。