2022年06月27日

6/18 カエル観察会活動報告

2022年6月18日(土)、両生類を専門とする国立科学博物館動物研究部研究員の吉川夏彦氏を講師としてお招きし、夜の自然観察会「吉川さんと水田のカエルに会いに行く!」を開催しました。観察場所は瀧神社周辺の水田地帯。水辺に生息するカエルはもちろん、付近の森林からも繁殖のためにカエルが訪れます。

参加者の皆様の集合を待つ間、さっそく吉川氏がカエルを捕まえてきてくれました。

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アズマヒキガエル
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さっそくのカエルのお出ましに子供達も大興奮

アズマヒキガエルは比較的乾燥に強く、住宅地や学校内でも出会うことができるカエルです。

観察会開始時点の時刻ではまだ明るく、カエルの活動は活発ではありませんでした。鳴いているのはニホンアマガエルとツチガエル、加えてモリアオガエルの声が微かに聞こえる程度です。

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ツチガエル
ギュウギュウと鳴くツチガエル。捕まえると白い悪臭を放つ粘液を分泌して身を守ります。幼生で越冬するため、年間を通して水が維持された環境が必要です。田ノ口の水田は、中干しや冬季の落水が行われる乾田ですが、周囲の土水路が彼らの避難場所となっていると考えられます。

周囲が暗くなるまで、集水桝で生物の観察を行いました。ここではツチガエル、モリアオガエルの卵塊、アカハライモリ、トウホクサンショウウオの幼生などが見られました。
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アカハライモリ
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トウホクサンショウウオの幼生
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興味津々の参加者
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モリアオガエルの卵塊
メレンゲ状の卵塊を樹木に産み付けることで有名ですが、このように人工物や水田の畦などにも産卵します。水田によっては5月中旬から畦にずらりと白い泡が並ぶことも珍しくはありません。

集水桝でじっくりと生き物を観察しているうちに周囲はすっかり真っ暗に。聞こえてくるカエルの鳴き声の量も種類も増え、トノサマガエルやシュレーゲルアオガエルの鳴き声も聞くことができました。

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トノサマガエル
グルルルルと低い声で鳴くトノサマガエル。主に水田に生息するカエルです。かつては広く一般的に見られたカエルですが、乾田化の影響を受けて日本全国で急速に数を減らしています。
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大きくてかっこいいトノサマガエルは子供たちにも大人気

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鳴嚢を膨らませて鳴くニホンアマガエル

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シロマダラ
カエルではありませんが、最後にはこんな珍種も姿を見せてくれました。シロマダラは、白と黒の縞模様が特徴的な小型のヘビです。夜行性傾向が極めて強く、滅多に出会うことができません。小型の爬虫類しか食べない偏食家としても有名です。

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今回の観察会では、5種のカエル(ニホンアマガエル、トノサマガエル、ツチガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル)の鳴き声を聴くことができました。また、カエル以外にも様々な貴重な生物を観察できたと思います。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。また、次の観察会でお会いしましょう。
posted by ブナ at 14:12| Comment(0) | イベント

2022年06月04日

5月29日 野鳥観察会(恵みの森周辺)開催報告

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 2022年5月29日(日)は布沢地区の「恵みの森」周辺において、「春から初夏の野鳥観察会」全3回のうち2回目を開催しました。前回より3名増の14名の参加者にお越しいただきました。当日は晴天となり、空模様こそ良かったものの、あいにくの強風でバードウォッチングには不向きの条件となり、種数は伸び悩みました。
 集合・解散場所は「恵みの森」駐車場とし、前半は「吉尾峠」への作業道を往復、後半は下流の堰堤への舗装道路を往復するコースをとりました。ホオノキやトチノキが白い花をたわわに咲かせ、エゾハルゼミの合唱が森中に響き渡っていました。
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 前回の黒谷川は広い視野が特徴のコースで、目視での探索や、双眼鏡の使用に慣れることを目指しました。今回は、布沢川の渓谷に沿ったやや視野の狭いコースです。季節も進み、すっかり植物が茂って、視界も十分に効かない中で「耳を頼りに」野鳥を探すというのが今回のコンセプトでした。
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▲ホオジロ

 さっそく、リズミカルで高く澄んださえずりが聞こえてきました。声のする方を探すと、スギの梢に鳴き声の主・ホオジロが見つかりました。今回、吉尾峠への作業道で最もよく観察された種です。林の縁に生息し、雄は「ソングポスト」と呼ばれるお気に入りの止まり場で高らかにさえずります。

 渓流と森林がセットになった環境なのでアカショウビンを狙いましたが、ついに確認できませんでした。強風のため肝心の音も掻き消えてしまいます。まして木の枝葉は風で揺れ動くので、姿の目視はほぼ不可能でした。それでも、川の対岸の落葉樹林から辛うじてシジュウカラや、渡り途中と考えられるオオムシクイのさえずりが聞けたのは幸運でした。川にいたオシドリのつがいが私たちに驚いて、上流方向へ飛んでいきます。

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▲ヒゲナガオトシブミ

 参加者のお子様は道中、フキバッタの幼虫など、昆虫をよく見つけてくれました。写真はヒゲナガオトシブミの雌。雄はひげ(触覚)も首もはるかに長いのが特徴です。

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▲オオルリ

 吉尾峠の終点で、伸びやかな美しいさえずりが聞こえてきました。渓流を代表する夏鳥・オオルリの登場です。オオルリは渓流周辺の森林に生息し、只見町では4月下旬から渡来し繁殖します。ホオジロ同様、雄はソングポストをもちます。ここでは落葉樹の枝先でさえずる雄が見られましたが、込み入った枝先におり、見つけるのは容易ではありませんでした。

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▲トビ

 猛禽類ではトビが多く、比較的低空を飛びながら餌を探している様子でした。その他にサシバとノスリも出現しましたが、折からの強風に煽られて、たちまち姿を消してしまいました。

 下流の堰堤へ向かうと止水環境があり、カルガモやカワセミが確認されました。また、アオバトの「オーアオー」という独特なさえずりが遠くから聞こえてきました。

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▲ノジコ(準絶滅危惧)

 復路、川沿いのヤナギ林からホオジロに似た、しかし若干長いさえずりが聞こえてきました。注意深く探すと、居ました!ヤナギの枝の陰にいたのは鳴き声の主・ノジコです。ノジコは日本でだけ繁殖する夏鳥で、その分布も局地的なことから、環境省レッドリストで準絶滅危惧に選定されています。只見町でも生息地は限られており、布沢地区はそんなノジコが繁殖する貴重なエリアなのです。この場所の近くでは昨年夏にノジコの幼鳥が確認されており、確実な繁殖地であることが分かっています。

▼今回の観察会で確認された鳥類のリスト
(クリックすると別ウィンドウで開きます)

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 今回の野鳥観察会では、合計21種の野鳥が確認されました。強風という悪条件に悩まされたものの、只見町を繁殖分布地とするオシドリやオオルリ、珍しいノジコなどの夏鳥が観察できました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
posted by ブナ at 16:02| Comment(0) | 自然観察会