2019年11月28日

自然観察会「晩秋の只見で地形と地質、植生を観察しよう!」

 前日のブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」で講師を務めていただいた元福島県立博物館専門学芸員の竹谷陽二郎氏に同行いただき、観察会を実施しました。

 はじめに、集合場所の明和振興センター駐車場で『只見町史資料集 第4集』(2001年)に付録されている只見町の地質図を広げ、只見地域の地質に関する分布的特徴を説明しました。只見町では最も古い地層として位置づけられるジュラ紀の付加体形成に由来する檜枝岐層群や、白亜紀後期に貫入した花崗岩類などの地層が町南部に広がっています。前期〜中期中新世の海底火山活動により形成された滝沢川層、大塩層、小川沢層が町のほぼ全域に分布し、浅草岳山麓にその火山噴出物、町東部を中心に布沢層、松坂峠層などが分布しています。只見町の各地層において見られる岩石を数点確認した後に、本日の観察地に出発しました。
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只見町の地質的特徴を説明する

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布沢層のシルト質泥岩を手に取り観察する参加者

 野々沢にある観察しやすい布沢層の露頭の前で、竹谷氏にその形成と特徴について解説いただきました。
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布沢層の解説をする竹谷氏
 
 布沢層は、この地域にまだ海が広がっていた約1630万年〜1420万年前の中期中新世に起きた地殻活動で沈降した盆地に火山灰や泥が堆積して形成されており、そこから産出した化石によりその当時は150〜200mの海底で堆積したことが分かっています。また、同じ地層から樹木の葉の化石も見つかっていることから、海に流入する河川などにより、沖合まで流された葉が堆積し化石になったと考えられます。実際に岩石の中から葉の化石をいくつか見つけることができたため、参加者も夢中になって化石を探しました。
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葉化石を探す参加者

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見つかった葉化石

 その後、ただみ観察の森「梁取のブナ林」(学びの森)で布沢層の周辺に成立する植生を観察しました。この場所は、薪炭材利用のため伐採された森林が再生した二次林であり、高木層にホオノキやハウチワカエデなどが混じりますがほぼブナの純林となっています。下層植生には、オオバクロモジ、オオカメノキ、エゾユズリハなどを見ることができました。
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ただみ観察の森「梁取のブナ林」

 伊南川にかかる和泉田橋の下には、小川沢層の火山礫凝灰岩の河床が広がります。このような景観となった要因はいくつか考えられますが、1つに河川の浸食作用により、他よりも硬い岩盤が残ったためと考えられます。この岩中には、緑色凝灰岩の破片や白い浮石などが含まれているのが見てとれます。また、周辺には、緑色凝灰岩の河床も見られました。
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伊南川にかかる和泉田橋の下には、凝灰岩の河床が広がる

 成法寺の籠岩もまた小川沢層の緑色凝灰岩でできています。海底火山の噴出により形成された緑色凝灰岩がその後、上下からの冷却を受けて縦方向の節理が生じ、その節理に沿って侵食を受けたため、このような形になったと考えられます。籠岩の下に建立されている成法寺観音堂は国重要文化財に指定され、堂内に安置されている聖観音菩薩坐像は福島県重要文化財に登録されています。
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成法寺の裏にある籠岩

 今回の観察会では、只見町の自然環境の根幹を成す地質と地形の観察からはじまり、その上に生育する植生と生態、さらに、そうした環境の中で成立した文化、歴史等にもふれることができました。
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posted by ブナ at 10:10| Comment(0) | 自然観察会

2019年11月23日

ブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」


 2019年11月16日(土)に元福島県立博物館専門学芸員の竹谷陽二郎氏を講師にお招きし、ブナセンター講座「地層からひもとく只見の自然」を開催しました。この講座は現在行われている企画展「只見の地形と地質」に関連したものです。

 はじめに、竹谷氏は只見の地形を特徴ごとにいくつかのカテゴリーに分け、それぞれの地形がいかなる地質によって構成されているのかを説明されました。


 山地地形として起伏が600m以上の大起伏山地は、只見町では伊南川および田子倉ダムより南の奥地に主に分布しており、会津朝日岳(1,624m)や丸山岳(1,820m)などの山が連なっています。これらの地形はジュラ紀に形成された泥岩やチャートなどの古く硬い岩石によって構成されており、山地の尾根の延びの方向が地層の延びとおおむね一致しています。


 起伏量が400〜600mの中起伏山地は、只見町南部の大起伏山地の周囲を取り巻くように分布している一方で、只見町北部や金山町境界部、さらに北西部の叶津川流域にも分布が見られます。しかし、その地質構成は北部と南部で異なっており、北部は新第三期中新世に噴出した比較的硬質な流紋岩や玄武岩の溶岩で構成され、南部は白亜紀に貫入した花崗岩や、新第三紀前期中新世の滝沢川層の凝灰岩により構成されています。


 小起伏山地(起伏量200〜400m)は、伊南川流域や只見川沿い、蒲生川と真名川流域などの各河川流域のほか、只見町東部の小林・梁取・布沢地域で確認されます。その地質構成は多様であり、中期〜後期中新世前期に堆積した凝灰岩・泥岩・砂岩など比較的軟質な岩石のほか、後期中新世後期の溶結凝灰岩や、布沢堆積盆などによって構成されています。


 こうして地形と地質の関連を捉えると、只見町では起伏量が多い地形は古く硬い地質によって構成されており、逆に起伏量が少ない地形は比較的やわらかい地質によって構成されていることがわかります。只見町の地形と地質はある程度分布ごとに一致する傾向があることが特徴です。しかし竹谷氏によれば、必ずしも地形と地質構造が一致するわけではなく、一致しない事例も確認されているとされます。


 山地に対して、只見町の平地は只見川と伊南川に沿って分布しておりますが、伊南川は只見町に入り流向を北から西北西に変化します。この流向の変化にも地質が影響を及ぼしており、竹谷氏はその地域が西北西―東南東方向の軸をもつ沈降帯であったことと、その方向をもつ伊南川断層による破砕帯に沿って流れたためだという推測を紹介されています。只見川と伊南川流域の低地には、大きく4段の段丘面が確認されており、大地が隆起した結果として段丘が形成されるため、高い段丘面ほど古い地層によって形成されています。

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▲只見町の地形・地質について説明する竹谷氏

 さらに、竹谷氏は地層の岩相や化石の証拠などから推定できる地層の年代と堆積環境、すなわち只見の大地の成り立ち(地史)を解説されました。只見地域の地史は時系列順に6つの時期区分が設けられています。その区分は古い順に次のように分けられます。

@付加体の形成(ジュラ紀):只見の大地の基盤をなす檜枝岐層群が海底で形成された時代

A花崗岩マグマの貫入(白亜紀後期):大規模な火成活動により花崗岩マグマが基盤岩分布地域に貫入した時代

Bグリーンタフ堆積盆の形成と分化(前期中新世〜中期中新世前期):海底火山活動により只見地域の滝沢川層・大塩層・小川沢層が堆積した時代

C布沢堆積盆の形成(中期中新世後期〜後期中新世前期):只見地域の布沢層・松坂峠層が堆積し、海が後退した時代

Dカルデラ火山の誕生(後期中新世後期):只見地域の南会津層(駒止峠層)・八塩田層が堆積し、只見地域が完全に陸化した時代

E第四紀火山と段丘の形成(第四紀):浅草岳などの火山と、只見川・伊南川沿いの河岸段丘が形成された時代


 竹谷氏は、まだ十分な解明が進んでいない只見地域の地質の特徴として、布沢層から産出される樹木の葉っぱなどの化石の存在を挙げています。布沢層上部は水深150〜200mの内湾の海底のような環境で堆積した地層ですが、なぜ深い海で堆積した地層で葉っぱの化石が見つかるのでしょうか?竹谷氏は推測の一つとして、洪水などで葉っぱが水に浮かばずに沈み、そこからゆっくりと海の底へ落ちていったのではないか、という説明を挙げましたが、非常に不思議で興味深い事象だとお話しされました。

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▲聴講する参加者の様子


 上記の説明をふまえ、最後に以下のまとめが行われました。

1.只見地域の地形は、地層の岩相や地質構造が強く反映されている。
2.只見地域の大地は、およそ3億年にわたる時を経て形成された。
3.只見地域の大地の成り立ちは、東北地方日本海側を代表するものである。
4.地層・岩石・化石や地形など大地の貴重な遺産がよく保存されている。
5.地形・地質遺産の中には、他の地域には見られないユニークなものが多々ある。

 その後、参加者から様々な質疑が寄せられ、活発的な議論が行われました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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▲竹谷氏に質問をする参加者

posted by ブナ at 14:35| Comment(0) | ブナセンター講座

母と子のネイチャースクール写真展 湯ら里で開催中!

8月6日〜8日に只見町で実施された日本自然保護協会主催の「母と子のネイチャースクール」の写真展が湯ら里で開催されています。

このイベントは、福島県在住の親子20組を募集し、森林の分校ふざわを拠点とし、恵みの森散策、自然の恵みクッキング、星空観察会、ただみ・ブナと川のミュージアムの館内見学などを行ったものです。
この時の様子を写した写真展を湯ら里で開催しています。みなさま、ぜひ見に行ってください!

「母と子のネイチャースクール写真展」
期間:11月16日(土)〜12月20日(金)
場所:季の郷 湯ら里 ロビー
内容:日本自然保護協会が只見や尾瀬で夏に実施している母と子のネイチャースクール。参加したお母様、お子様のとびきりの笑顔や只見町の美しい自然をご紹介する写真展です。

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posted by ブナ at 12:47| Comment(0) | おしらせ

2019年11月17日

『ただみ観察の森』観察会 蒲生集落あがりこブナの森−ブナを利用してきた人の暮らしを知る−

 2019年11月10日(日)に『ただみ観察の森』観察会「蒲生集落あがりこブナの森 ―ブナを利用してきた人の暮らしを知る―」を実施しました。
 『ただみ観察の森』は、只見ユネスコエコパーク域内の自然環境やそこに生息・生育する野生動植物の現状を理解し、身近に触れてもらうことを目的とした場所で、町内の7ヵ所に設置されています。今回は、蒲生川と真奈川の合流付近にあるブナ二次林にて、参加者13名とともにあがりこ型樹形のブナやかじご焼き(炭焼き)の痕跡を観察しました。

 真奈川と蒲生川出合の平坦な地形にある「蒲生集落あがりこブナの森」は、かつて旧真奈川集落の人々が生活のために利用していた森です。あがりことは、このブログ内でも何度か紹介してきましたが、木の幹の地上2〜3m付近に瘤ができて、その部分から複数の幹が生じている状態の樹木を指します。あがりこは一般にブナに対して用いられる言葉ですが、只見町ではコナラやミズナラのあがりこ型樹形の木も見られ、これらを「もぎっき」などと呼んでいたそうです。
 
 あがりこ型樹形の木が生じる背景には、人による利用があります。化石燃料が広く普及する以前は、集落近くに生育するブナなどを薪材として生活に利用していました。雪が固く締まった初春に雪上で伐採が行われるため、地上から2〜3mという高い位置から萌芽幹が出るのです。

 さて、観察会当日は小雨混じりの天気でしたが、晩秋の紅葉をゆっくり見ることができました。まず、蒲生集落あがりこブナの森の駐車場で、只見の自然環境を特徴づける雪食地形や尾根に立ち並ぶキタゴヨウなどを観察しながら、入り口の木橋を渡って森に入ります。

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▲木橋の下を流れる沢の落ち口には、ニッコウイワナが生息する。時折、体長40cmほどの大型個体が岩陰から姿を現す。


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▲ブナ、ヤマモミジ、ハウチワカエデ、オオバクロモジなどは紅葉の終盤。


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▲葉が青々としているのは、ユキツバキ、ハイイヌツゲなどの常緑広葉樹の仲間である。


 この森の中では、地際から多数の枝が四方に伸びているブナが見られます。これは晩秋に行われるかじご焼き(炭焼き)のため、幹が地際で繰り返し伐採されたことによって形成されました。細い幹がたくさん生えていますが、よく見ると元株は意外と大きいことに気付きます。

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▲細い幹が四方に張り出したブナ。叢生型と呼ばれる(2019年11月5日撮影)。

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▲かじご焼きの跡。堆積した落ち葉で半分埋もれている(2019年11月5日撮影)。


 叢生型のブナとかじご焼きの痕跡を観察した後、さらに森の奥へと進むと、ブナのあがりこを見ることができます。一般的なあがりこ(有名なのは、鳥海山麓で見られるあがりこ大王)は、伐採された位置が固定され、そこから複数の幹が生じるのが特徴です。しかし、この森では下の写真のように、伐採された位置を示す瘤が同じ幹に2〜3ヵ所あることが分かります。これは、旧真奈川集落の人々が伐採位置を幹の上部へと移動させていたことが原因と考えられています。


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▲立派なブナのあがりこを前にして、歓声が上がる。


 さらに、上で紹介した叢生型とあがりこが組み合わさった「複合型」と呼ばれるブナも見られます。かじご焼きに利用するため、比較的短い周期の伐採により形成された叢生型ブナは、徐々に萌芽力が低下していきます。そこで、株を維持するために立木と呼ばれる幹を一本伐採せずに残します。その幹が適当な大きさに成長すると、今度は薪材利用のため地上から2〜3mの雪上で伐採され、あがりこが形成されます。このような二つの伐採利用を受けたブナは、地際に多数の萌芽幹が張り出した、あがりこ型樹形になります。


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▲あがりこブナの前で記念撮影


 参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。つい先日、浅草岳の初冠雪が確認され、只見もいよいよ冬季シーズンへ突入します。ブナセンターでは今後も講座や観察会を予定しておりますので、ご家族・お友達をお誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。
posted by ブナ at 10:29| Comment(0) | 自然観察会

2019年11月15日

福島県立博物館で「ただみ・ブナと川のミュージアム」が紹介されています!


会津若松市にある福島県立博物館において、「ただみ・ブナと川のミュージアム」を紹介する展示をいただいております。

豪雪地帯にある只見町の自然とそれらを拠り所にした暮らしに関する資料が展示されています。

展示は12/22(日)までで、博物館体験学習室前の無料スペースで行われておりますので、福島県立博物館に来館される際はぜひご覧ください!

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posted by ブナ at 15:48| Comment(0) | 展示