2019年07月28日

令和元年度『ただみ観察の森』観察会第1弾・只見の自然を知ろう!楢戸のブナ二次林

 7月20日(土)に『ただみ観察の森』楢戸のブナ二次林で自然観察会を実施しました。『ただみ観察の森』は広大で奥深い只見の自然を身近に体験し、ご理解いただく場として、只見町ブナセンターが地域住民の方々の理解と協力のもとで指定し、整備を行っています。ただみ自然観察の森は、ブナ林など只見地域の代表的で特徴的な植生を対象とし、比較的アクセスのしやすい場所に設定されています。林内は必要最小限の遊歩道が設けられており、それぞれの森林の特徴を観察しながら散策することができます。教育機関の環境教育あるいは視察研修の場として利用されるほか、一般の方でも事前にただみ・ブナと川のミュージアム(只見町ブナセンター)において観察の森の利用についての説明を受けたのち入林することができます。こうした手続きは、観察の森のオーバーユース(過剰利用)を防ぐほか、観察の森が集落近くにあることから森の利用による住民生活を妨げることなく、自然環境の保全と持続可能な利用を両立させるものです。昨年度から定期的にこの観察の森を利用した観察会を開催しています。

 ただみ・ブナと川のミュージアムから車で10分ほどの所に、楢戸のブナ二次林はあります。はじめに注意事項を説明してから森に入りました。ヌルデやヤマウルシ、ツタウルシは肌に触れるとかぶれることもあり注意が必要です。それぞれの特徴を説明し、さらにスタッフ自身の肌がかぶれた実体験も紹介しました。

どれがヤマウルシなのかを確認する参加者
▲どれがヤマウルシなのかを確認する参加者

 林内に入るとさっそく参加者がブナの樹を見つけました。ブナの樹皮には特徴があり、比較的すべすべで、白っぽく、まだら模様があります。しかしよく見ると、その横にも同じような樹皮の樹がありますが頭上の葉の形や大きさが全くちがいます。これはホオノキで樹皮だけ見るとブナによく似ています。

左がブナ、右がホオノキの幹
▲左がブナ、右がホオノキの幹

 ブナの樹皮にはまだら模様の斑がありますが、これは地衣(ちい)類がブナに着生しているためです。地衣類は菌類の中に藻類が共生したもので、藻類は菌類の体を住処とし、菌類は藻類が光合成で生産した栄養分を利用するという関係にあります。これらの地衣類はブナの幹をより高くのぼり、光がよくあたる所に生活場所を求めています。地衣類の中には様々な種類があり、ブナの樹皮にも様々な種類の地衣類が生育しています。

 続いて、「かじご焼き」の痕跡を観察しました。かじご焼きは只見町で行われていた伏せ焼きによる炭焼きの技術です。通常の炭作りのように炭焼き窯を作らず、山中に穴を掘り、灌(かん)木を入れて燃やし、土をかぶせてむし焼きにし、約1週間後に掘り出すと、炭になっています。この炭は着火が早く、火力が弱いことから、主に掘りごたつ用の炭として使われました。化石燃料が手に入る頃には急速にかじご焼きは衰退し、現在は行われることはなく、山中の無数のかじご焼きの穴からかつて盛んに行われてきたことを伺い知ることができます。事実、かじご焼きが行われる晩秋から初冬にかけては山の裾野からかじご焼きの煙が立ち上り、その光景が風物詩となっていました。

 足元には今春芽ばえたブナの実生と昨年の秋に落ちた殻斗がありました。ブナはおおよそ2年に1度の頻度で結実し、さらに結実年であってもおおよそ5−7年の間に一度豊作の年があります。昨年の2018年はブナの豊作年でした。参加者の方から、ブナがそのような頻度で種子を作ることに何か有利な点はあるのか?というご質問をいただき、指導員が、毎年多くの種子を生産すると、それを食べるネズミなどの動物が増えるので、少ない年をつくり、捕食者が減ったところで、多くの種子を作ることで、種子の生き残りを図っているなどの仮説が考えられていると返答しました。

様々な樹種の実生が見られた林床
▲様々な樹種の実生が見られた林床

 ブナの堅果は人間も食べることができると指導員が説明すると、参加者の中にはぜひ食べてみたいとおっしゃる方もおりましたが、落ちているのは虫食いの穴があって中身がからっぽのものや秕(しいな)ばかりで、残念ながら今回は食べることができませんでした。実際、種子は灰汁抜きなどすることなく食することができ、クルミのような風味がして美味しいです。さらに当年生の芽生えたばかりの実生も子葉部分も美味しく食べることができます(ただし、もし食される場合は自己責任でお願いします)。事実、ブナの種子は蛋白質と脂質に富み、野生動物の重要な食料となっています。ツキノワグマもこれが大好きです。

 楢戸の『観察の森』で最も大きいブナの樹皮にはツキノワグマの爪痕があります。4月の下旬頃、ブナの花が咲くとツキノワグマが木に登るようです。このブナの胸高周囲長を参加者の方達に実測していただきました。みなさんは、3mや3.5m、はては5mほどあると予想しましたが、実際の周囲長は2m84cmでした。

楢戸ブナ二次林のブナ(マザーツリー)の胸高周囲長を実測する参加者
▲楢戸ブナ二次林のブナ(マザーツリー)の胸高周囲長を実測する参加者

 観察会の最中たまたま、『観察の森』の地権者の方がお見えになりお話をうかがいました。この森はもともとブナのみならず、クリやミズナラの混交林だったそうです。しかし、30年ほど前にクリやミズナラをシイタケ栽培の榾木(ほだぎ)として利用するために選択的に伐採したため、現在ではブナの純林に近い状態になりました。また、『観察の森』の奥地には『観察の森』の6〜7倍もの広さのスギ林が広がっています。先先代にあたる方がスギを一所懸命に植林した結果であり、当時はスギの植林がブームとなっていたそうです。

 楢戸のブナ二次林は薪炭利用のための天然林の伐採後にミズナラ、ブナ、クリなどが混交した二次林が成立し、その後、ミズナラとクリがキノコの榾木生産のため取り除かれ、ブナの純林が成立し、現在に至っています。このように、楢戸のブナ二次林は集落裏に隣接し、人とブナの歴史的なつながりをあらわしています。

参加者の集合写真
▲参加者の集合写真

楢戸のブナ二次林
▲楢戸のブナ二次林
posted by ブナ at 09:57| Comment(0) | 自然観察会

2019年07月15日

8月4日(日)猪又かじ子写真教室「十島・塩沢集落で夏の只見を撮る!」のご案内


只見町ブナセンターでは、千葉県柏市在住で只見町のアトリエをベースに四季の自然を長年撮り続けている猪又かじ子氏をお招きし、写真撮影のコツや構図の工夫などのアドバイスをいただきながら撮影を行う写真教室を8月4日(日)に十島・塩沢集落で開催いたします。

猪又氏の手ほどきを受けながら、ファインダーを通して只見の美しい自然を観察し、写真に残していただければ幸いです。もちろん初心者も歓迎です。

撮影後は、塩沢集落「そば処 しおさわ庵」で昼食となります。午後には店内をお借りして撮影した写真を猪又氏に講評していただきます。

詳しい内容につきましては、下記のURLより只見町ブナセンターのホームページをご覧ください。
http://www.tadami-buna.jp/event.html#InomataKajiko

カメラの撮影方法を学びながら、只見町の自然に触れてみませんか?
みなさまお誘い合わせの上、ぜひご参加ください。
なお、参加するためには、事前申し込みが必要ですのでブナセンター(0241-72-8355)までご連絡ください。


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posted by ブナ at 15:12| Comment(0) | イベント

7月20日(土)『ただみ観察の森』観察会のご案内


只見町ブナセンターでは、令和元年度『ただみ観察の森』観察会の第1弾として、7月20日(土)に「只見の自然を知ろう!楢戸のブナ二次林」を開催します。『ただみ観察の森』は、只見ユネスコエコパーク地域内の自然環境や野生動植物の現状を理解し、身近に触れてもらうことを目的とした場所です。楢戸を舞台に只見の自然について学ぶ良い機会となりますので、みなさまぜひお誘い合わせの上、ご参加ください。

詳細につきましては、下記のURLより只見町ブナセンターのホームページをご覧ください。
http://www.tadami-buna.jp/event.html#NaradoKansatsu

なお、参加するためには、事前申し込みが必要ですのでブナセンター(0241-72-8355)までご連絡ください。

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posted by ブナ at 13:32| Comment(0) | イベント

2019年07月08日

自然観察会「深沢集落 余名沢のブナ林−ブナ二次林のこれからを考える」

去る6月30日(日)に、季の郷湯ら里から近い余名沢のブナ林で自然観察会を実施しましたのでご報告します。

 当日は朝から大雨でしたが、傘を差しながら目的のブナ林へを目指しました。観察路沿いのミズナラ林、スギ林は、樹高が高く、極めて良好に成長していることがわかります。

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▲散策路の左手にはナラ二次林、右手にはスギ林が見える

 余名沢のブナ林は薪炭利用やスギの植林が混ざるなど、人との関わりで成立した二次林です。地表に残るかじご焼きの跡からもその歴史を伺い知ることができます。かじご焼きは、只見町で行われていた炭焼き方法で、炭焼き窯を作らず、地面に穴を掘り、そこに直接灌木を入れて作る自家製用の炭を焼く方法です。晩秋にあがるかじご焼きの煙は只見の秋の風物詩で、その痕跡は今でも町内のあちこちに見られます。

 ブナ林をよく観察すると、同じ二次林でも、混みあった部分では個々のブナの木の枝葉の広がりが少なく、一方、隣接木との間が広々とした部分では枝葉を大きく広げ、明らかに良く成長している様子が比較できました。

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ブナ林を観察する参加者

 足元には、ブナの実生や若木が見られ、最近のブナの豊作年は、2018年、2015年、2011年であり、複数の樹齢が混在していました。暗い二次林内のブナの若木は、最大80cmほどの高さしかありませんが、林冠の切れ目では私たちの背丈を優に越えおり、その差は明らかでした。

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林冠の閉じたブナ二次林

 ブナ林と隣接するスギの林内にはブナ、トチノキ、ホオノキなどの広葉樹の稚樹が侵入していましたが、トチノキの親木は周囲には見られなかったため、動物が運んできたことが考えられます。

 紙谷館長からは新潟県魚沼市の旧薪炭林で実施しているブナ林業を例に、ブナ材の活用や今後の見通しについても紹介がありました。

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二次林のブナの利活用について話す紙谷館長(太いブナの右に立つ黄色い雨具を着た方が紙谷館長です)

 大雨にもかかわらずキャンセルせずに参加された町内外の13名の皆さんは、雨のブナ林を堪能された様子でした。ご参加くださいましてありがとうございました。

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posted by ブナ at 10:57| Comment(0) | イベント

2019年07月05日

あがりこ型樹形のコナラをナラ枯れから守る!


先日、只見町黒沢などにおいてコナラなどのあがりこ型樹形の巨木を対象に、ナラ枯れ被害の防除作業を行いました。

ナラ枯れとは、カシノナガキクイムシが媒介するナラ菌によってナラ類、シイ・カシ類が集団枯損する被害のことです。

枯死したコナラ
▲枯死したコナラ

只見町では、2011年よりナラ枯れの被害分布と被害量調査を継続して実施しています。新潟県から六十里越、八十里越を通して只見地域に侵入したナラ枯れは、只見川流域を下り、また、伊南川流域を遡り、被害が拡大しました。2015年までに被害は過去最低になり被害が終息するかと思われましたが、2016年には一転して被害が爆発的に増大しました(詳しくは、ブナセンター紀要No.7の石川ら(2019)をご参照ください)。
さらに、只見地域では被害の中心がコナラであることが特徴となっており、ブナセンターでは、特に、全国的にも珍しいあがりこ型樹形のコナラの巨木をナラ枯れから守る活動を定期的に行っています。

「あがりこ」とは、一般には、東北地方の多雪地帯を中心に見られる人為的に作られたブナの独特の樹形を指します。その樹形は、幹の地上2〜3mのところで主幹を欠き、その部分は幹が瘤状に肥大し太くなり、さらにそこから多くの幹が発生しています。こうしたあがりこの成り立ちは、雪上伐採により地上部の幹を利用しつつも、個体(株)を維持し、さらに伐採部分から発生する萌芽幹を繰り返し利用したことによります。生産、伐採された幹(材)は薪として利用されます。つまり、現在、私たちが見ることができるあがりこ型樹形の樹木は、人間による過去の森林利用の歴史をあらわしたものであるといえます(人間が関わらないあがりこ型樹形もあります。その紹介はまたの機会に譲ることとします)。ちなみに、只見地域では「あがりこ」とは呼ばず、「もぎっき」などと呼ばれます。

只見地域には、薪材生産を目的とした雪上伐採の結果形成されたあがりこ型樹形のブナが存在することはもちろんですが、あがりこ型樹形コナラの巨木も存在しています。これが全国的にも珍しいものなのですが、ナラ類ということで例に漏れずナラ枯れの被害を受けています。このコナラを保全する(ナラ枯れから防除する)ために、ブナセンターでは継続的に幹への殺菌剤の注入を行っています。その作業順は、開葉時期である5〜6月に、@樹木の周囲をナタ等で刈り払う、A胸高直径を測定し、ナンバーテープで個体を識別し、B幹部にドリルで穴を開け、Cその穴に高濃度少量注入殺菌剤を注入する、となります。

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ナラにドリルで穴を開け、爪楊枝を挿している様子
▲ナラの樹にドリルで穴を開け、目印になる爪楊枝を挿している様子

今年は、80本ほどのあがりこ型樹形コナラの巨木に処理を行いました。残念ながら殺菌剤注入を行っても、枯れてしまう個体が出てきてしまいますが、引き続き、ブナセンターでは人間の森林利用の歴史や技術を伝えるこのあがりこの保全に取り組んで行きます。

posted by ブナ at 16:19| Comment(0) | 定点観測